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魔物資源活用機構  作者: Ichen
力の属性
1086/2955

1086. リーヤンカイの異次元・時の剣初舞台

 

 イーアンもびっくり。そして親方もドルドレンもびっくり。雄叫びは、耳にこびり付くほど散々聞いた『魔物』その声。



「タンクラッド。行って()()()。龍の出番はここまでだ」


 そう言うと、ニヌルタは最後の仕上げとばかり、ぶうんと風を巻き起こして白い光の束を放った。

 向かい合う遠くからも同じ現象が起こり、シムが共鳴したと分かる。


 アオファの頭の上にいるイーアンは、多頭龍の龍気がいきなり上がったので、それを合図と気づいた。


『お前、アオファ。龍気が。もう終わりますか』消えて無くなりかける筒の最後に反応した、アオファの龍気は、左右にいる男龍の白い光に触れ、一帯を包み上げるくらいに広がった。


「でも今の、あの声は」


 終わりかけに聞こえた、魔物にしか思えない声。イーアンは不安を胸に、ごくっと唾を飲み込む。


 その目端に、さっと動いた影を見てもっと驚く。『え!タンクラッド?ドルドレン!』二人を乗せた龍が、削れた山脈の上へ向かう姿。


「何ですか!何で?ダメよ、今何があるのか」


「イーアン」


 叫んで思わず翼を出したイーアンは、飛び立ったすぐに左から来たシムに止められた。『シム!タンクラッドたちが』止めなきゃ!と慌てるイーアンの腕を掴んだシムは首を振る。


「そうじゃないぞ。彼らの力で止める」


「どうしてですか、聞こえましたか。さっき魔物の声が」


「落ち着け。魔物の声だが、出て来ていない。お前は俺といろ」


 落ち着けないでしょう、と騒ぐ女龍を抱え込んだ男龍は、『黙って待つんだ』と片腕に抱えたイーアンに言う。


「時の剣を使うだろう。タンクラッドが自分の力を理解するに、良い機会だ」


「何、暢気なこと言ってるのですか。ドルドレンもいるのに」


「だから。お前はまぁ・・・いつもそうして手を出してきたな?だがお前はこの場合、無理だ。役に立たん」


 えー・・・役に立たないって言われたイーアンは、愕然として、自分を抱える男龍を見上げる。彼は少し黙ってから『龍の力ではない』と言い直す。


「少し待つだけだ。龍族(俺たち)は。『破壊しないで終わらせる』ならな」


 シムはそう言うと、左腕に抱えた女龍を抱き直して、ビルガメスがいつもそうするように自分の腕に座らせ、その顔を見つめて諭した。


「心配だろうが。手出し出来ないことを覚えろ。お前も俺たちも、その力の及ぶ場合においては強い。

 だが、及ばないどころか、壊すしかない場合もある。それを()()()()()()なら、別の力に任せるんだ」


 鳶色の瞳が寂しそうに見えて、シムはちょっと笑う。『大丈夫だ』女龍の頬を撫でると、タンクラッドたちが消えた、山の向こうに視線を動かした。


「待つんだ」




 *****



 男龍に『行け』と言われて飛んだけれど、バーハラーとしても初の試み。不安がある(※龍も不安)。乗り手の男二人の会話を聞くに、理解が追いついていない様子で、バーハラーはどう動くべきか困りつつ、速度を落とさず飛び続ける。


「この下だな。魔物の気配が」


 龍の飛ぶ背中から見下ろし、タンクラッドはドルドレンに言う。ドルドレンも同じように顔を下に向け、真下に見える大きな暗い穴に『この穴が』と、低い声で呟いた。



 上空から見える、その暗い穴。ぽっかり開いた黒い穴は、正にドルドレン騎士たちが、死に物狂いで戦った魔物の群れ(相手)を出し続けた、憎き穴だった。


「こんな形で見ようとは」


「そうだな。そしてまさか。俺たちの手でどうにかするとも、な。思わなかった」


 総長の苦々しい言葉に、タンクラッドはすんなり答えて、感情を籠めないようにした。総長の胸中は計り知れない。下手に同情することも出来ないと分かっている。


 背に回した手で、ゆっくり背負った剣を抜くタンクラッドは『気をつけろ』と、後ろに声をかけた。


()()()()だそうだ・・・何すりゃ、良いんだか」


 時の大剣を右手に持った剣職人は、燻し黄金色の龍の背中から、下の穴を見て『あれに・・・中和』と呟く。『中和』の言葉に、ドルドレンは反応したが、タンクラッドは何か考えているので黙る。



 ――黙る親方の気持ちは、理解出来る。ドルドレンも同じ心境にあるから。


 愛だ何だと、自分の力を誉められたものの。愛ってどう使うの、と(※素朴な疑問)その部分から抜け出ていない。

 龍のイーアンを、ティティダックで救うに至ったのも、偶然のような状態だったので、自覚はナシ。タムズも親方も『ドルドレンの力は()』と、聞こえの良いことは言ってくれたが、実際、使い方なんか分かりゃしないのが本音だった(※無理もない)。



 真下に見える黒い穴から離れないよう、バーハラーに周回させている親方は、ふーっと息を吐いて少し笑って呟く。その顔は、後ろに向けず、黒い穴に向けたままだった。


「イーアンも。こんな気持ちだったかもな。

 いきなり『龍になれ』とか、『龍気を操る』とか。何をどうすると、自分の力が出せるのか知りもせずに」


 ドルドレンは答えなかったが、彼の呟きに、その横顔を見つめて頷いた。そうだな、と思う。誰に聞いても分からないで、一人悩んでどうにか手に入れながら進んできたんだろう、と。


「今。俺たちの下から立ち上って、この足に()()()()()()()魔物の気配。俺の剣が、俺自身も、これを消せるというなら」


 独り言が続くような気がして、ドルドレンは息を呑んで、剣を片手にした男の声を聞き続ける。



「あの時。コルステインに伝えた・・・励ましたかった、あの思い。マースを救う為に(※1034話参照)」


 何かを見つけたような、親方の一言。彼は時の剣をぐっと握り締め、自分の中に力を得た。


「バーハラー!お前の龍気はお前のもの。この中へ飛べ!」


「えっ」


 突然、叫んだ剣職人の言葉に、ドルドレンは仰天する。突っ込むの?!驚いたすぐに、龍気を自分のために引き絞った龍は、翼をすぼめて一気に降下した。


「えええええええっ!」


 ドルドレン、どうにか事情をと思うが、親方もバーハラーも攻撃態勢に入ったのか、いきなり声を上げる。


「ドルドレン!掴まれ、入るぞ!」


 おおおおおっ・・・!! 自分を鼓舞する野太い声を張り上げ、タンクラッドは剣を構えて、真っ逆さまにリーヤンカイの穴へ飛び込んだ。ドルドレンは、加速する龍の体を掴んで、覚悟を決めた。



 魔物の気がもうもうと立ち込めるような、大きな黒い空間に入り、タンクラッドの腕から金色の光がほとばしる。


 剣はタンクラッドと絡むように、腕の一部を変え、後ろで見ているドルドレンには、さながらイーアンの龍の爪のように感じた。


 時の剣は、龍気とも異なる光を放つ。水色に澄んだ光を金色に輝かせて、タンクラッドの振り上げた腕が下ろされる度に、剣を離れて光の鎌が飛び、闇の中を不思議な斬り方で開いてゆく。


「何だ、これは」


 親方の剣が振るわれる時―― いつも光が飛び、対象が切れるのは知っていたが。ここでは、闇が、黒が、斬られていると分かる光景に目を見開く。『()()が切れる?・・・そんな』どうして、と呟く勇者。


 時の剣の光に斬られた側から、空間に煙る粉塵が上がり、それは現実の粉塵とは違って、物体ではないけれど、粉塵に光がまとわりつくようにして、色が変わって消えてしまう。


 タンクラッドは手応えを感じたか、ばっすばっすと腕を振り上げては、そこら中に光の鎌を飛ばす。


「伝わる。俺の体に、()()()()()()()()()()のか」


 斬りながら呟いた声に、タンクラッドの喜びらしい音が入り、ドルドレンはハッとした。『お前の力』自分で実感するのかと驚くと、タンクラッドは彼を振り向かずに答える。


「分かる。俺の剣は、俺自身。俺は剣だ。剣の存在が、俺に流れ込む」


 暗闇に自身の光で照らされたその横顔に、ドルドレンは息を呑む。何て美しいんだろう、と。人なのに、人じゃないような。これが、伝説の剣と一体になった人の見せるものか、と心が震えた。


「俺は()()()()を閉ざせる」



 タンクラッドは無我夢中のように、龍と共に暗闇を切り裂き続ける。

 どこまでも潜って進む、地獄へでも伸びているかのような黒い闇を、龍と二人は延々と飛ぶ。時の剣は、金色の光で空間を斬っては、その色を変え、色の意味が見えてきたことにドルドレンも気が付く。


「まさか。この斬り続けているものは」


 この穴自体が、既に魔物の何かと繋がる次元では、と理解する。

 タンクラッドが入ってきた時点で、闇は生き物のように警戒した。そして彼が斬り始め、光が飛び、何かに当たって色が変わったのだ。変わったその色は、岩肌のそれと知った。


「ここはじゃあ。俺たちは」


「そうだ、ドルドレン。俺たちは『魔物が開けた、魔物の時空』にいるんだ。俺と俺の剣がそれを戻している」


「タンクラッドは、魔物を倒しているのか?」


「違うな。ここに()()()()()がひしめいているが、この穴の外は龍気だらけ。俺は龍気を引き込んで、この魔物の空間を()()()()()()()。龍気も俺の剣にまつわったすぐに、()()()()()()()()


「何だって」


 チンプンカンプンだけど、ドルドレンは言われたそのままを受け取る。タンクラッドの説明では、魔物の気と龍気が混在している状態で、彼が中和剤になって両者を消していると・・・・・ 


「あ。『中和』?お前、さっき『中和』と最初に言っていたのは、このことか!」


 気が付いた勇者の言葉に、タンクラッドは後ろを振り向き、ニコッと笑う。その笑顔は、いつも見てきた剣職人の笑顔とは違って、別の存在のようにドルドレンの目に映った。


 タンクラッドは自分の力を知るに至り、『振り絞れ』とビルガメスに言われた言葉を胸に、無尽蔵のような動きで斬る手を休めることなく、闇を進んだ。



 そうして進みながら、どのくらい経ったのか。ドルドレンは途中から、妙な様子に気がついた。

 振り向く後ろ、入ってきてからここまでの間。タンクラッドと、時の剣の威力で見える様子は変わったが。


「タンクラッド。これ。いつ終わるのだ」


「分からん・・・()()()()なんて来たことないからな」


 ドルドレンは、彼が疲れ始めている気がする。ここまででも、凄い体力だと思うが、この終わらなさには気持ちが萎えてきそうである。

 タンクラッドもそれは気が付いているようだが、しかし、終わりもしないのに引き返せないのか。


「終わりがない、なんてことは」


 ドルドレンの心配に、タンクラッドは答えない。ひたすら剣を振るい、闇を戻し続けるのみ。そんな親方の背中を見つめ、ドルドレンは懸念が生まれる。


 思い出すのは、自分たちがついこの前。一部の空に閉じ込められた時のこと――


 この前とは違う、と分かっている。

 あの時、イーアンがミンティンたちと()()()()()()()くれたから、自分たちは出られたのだ。今も、ニヌルタとシムが取り除いてくれた後・・・な、はずだけど。


 でも、あれ?と、考えるドルドレン。待てよ。


 腰を浮かせて、龍の背で大剣を振るい続ける親方は、さっき『()()()()()は龍気だらけ。龍気を引き込んで』と話していたじゃないか。


 ってことは!ドルドレンは驚く。この時空(ここ)には最初から、龍気はなかったんじゃないのか?それに気が付いて、ザーッと血の気が引いた。


 俺たちがイル・シド集落で解放されたのは―― 筒を含む、あの場所にあった何かを、龍気が全て消してくれたからだ。でもこの奇妙な空間は、龍気が()()()()()()()()()のだ。穴の外の山脈は、龍気が影響していても。


 そうなると、勘が告げる。さっと龍を見れば、龍も疲れている。もう『外にある龍気を、引き込める場所ではない』そういう意味だと理解する。


「龍気、()()のでは」


 今は既に、バーハラーの龍気も使っていると見て、焦るドルドレンはタンクラッドの背中に触れた。


「これ以上は無理だ、龍気はここにないかもしれない!戻らないと」


「戻れるか、この状況で。ここで戻ったら、封じられないだろう」


「でも。タンクラッドは『中和する』ものがないと」


 気が付いていたのか、親方は答えない。ドルドレンは焦る。

 こんな時の知恵はイーアン!・・・なんだけど。近くにいないし、次元が違うと言われたら連絡も取れない。



「ドルドレン」


 後ろで焦る黒髪の騎士に、前を向いたまま、彼の名を呼んだタンクラッド。『何だ』急いで答えるドルドレンは、タンクラッドが何か思いついたかと訊ねる。


()()()()()のために、お前がいる」


「えっ」


 忘れていた、自分の存在。ドルドレンは戸惑う。『俺』と言われたら、そうだろうが。でも。『愛』って言われても~  


「お前の力だ。イーアンを助けた時、お前はどうしていた」


 聞かれて悩む。あの時は、必死だった。イーアンが力尽きたと分かって、自分が彼女の代わりにと。


「俺は。俺が倒れても、勇者の代わりは必ず現われると信じて。イーアンを」


「お前は自分を差し出した。『お前が出来る最善』を尽くすために」


 ドルドレンは、自分を振り向かずに剣を振るう男を見つめる。息が荒くなり、唾を飲み込んでそれを思い出す。



「思い出せ。お前が命懸けで守った、ハイザンジェルのこの前までを。お前は今、魔物の再発を前に、その解決の()()()()にいる」


 言われなければ、思い出せなかったわけではない、焼き付いた痛みの記憶。

 でも、これを伝えられてすぐ。今、自分が何を感じるべきか。タンクラッドの一言で引っ張り出した。


「『俺を支える』のが方法だ。お前の愛を向けるべきは」


()()()()()



 ドルドレンは答えた。自分が出来ること。

 ハイザンジェルに、不意に訪れるかもしれない悪夢を止めること。タンクラッドの力を借りて、この、無限にも見える、魔物の通路を閉じること。


「俺は例え、この場で倒れても。お前に最後まで、力を注ごう」



 ――イーアンは分かってくれる。もしも、俺がこのリーヤンカイの穴のどこかで消えても。俺がタンクラッドと、世界を守ろうとしたことを。旅の最中で倒れたとしても、それはそれだ――



 うん、と頷いたドルドレンが、親方の体に両手を添える。『お前の力になれるように』そう呟いて、微笑んだ。タンクラッドも死ぬかどうか、恐れはしない。


「どうなったって。やるだけやった、と思えれば。お前と一緒だ」


 黒髪の騎士は剣職人に気持ちを伝える。振り向いたタンクラッドも微笑んだ。


「そうだ。いつだって、命懸けだ」


 二人が心の向く先を定めた、その微笑の瞬間に、タンクラッドの剣が真昼のような光を生んだ。



 *****



「光りましたよ!」


 外でハラハラしながら待つ、イーアンが叫ぶ。『今、今そこ光りました』シムに急いで教えると、シムはゆっくり頷く。

 横にいるニヌルタも、予想していたふうな顔で、何度か頷きを繰り返し『まずまず、だ』点数でも付けるように呟く。


 リーヤンカイの穴の上、男龍と女龍は多頭龍の側に浮んで、『勇者』と『時の剣を持つ男』の帰還を待つ。


「ドルドレン。タンクラッド。ああ、どうぞ無事で!」


「こんなことで、勇者が散ってたまるか。ギデオンだって、()()()()行ったのに」


 ニヌルタの暴言にも似た言い方に、イーアンは睨む。『ギデオンはフラフラしていました。こんなに勇敢な挑戦していません(※と思う)』ドルドレンと比べないで!と注意した。


 苦笑いするシムが、友達を見て『心配しているんだから』と女龍の肩を持つ。ニヌルタは腕組みしながら鼻で笑って『この程度で心配なんて、どれだけ面倒見が良いんだ』またイーアンを刺激する発言をした。


「ニヌルタ。ギデオンのことなんて、何も知りませんでしょう。ドルドレンは彼よりもずっと、()()()()()()とします。その分、危険も」


「だから。世界を守る『勇者』にその程度で、ギデオンと差が付くと思っているのが『面倒見良いな』と俺は言っている」


 ムスッとしたイーアンは、もう答えなかった(※ニヌルタの意地悪、と思って黙る)。



 むくれた女龍をちょっと見て、ニヌルタは笑い『怒るな。もう戻ってくるぞ』機嫌を取るように教える。


 イーアン、つーん。シムが笑って、腕に座らせている女龍の角を少し押し、自分を見させて『本当だ。もう戻る』と繰り返した。


「本当ですか。さっきの光は、この場所を閉じたのですか」


「閉じたな。魔物のいる時空と繋がっていた『最後の部分』が途絶えた」


 最後の部分、とは何だろうと、イーアンは一瞬、思ったが、それはさておき。今はとにかく早く、無事にドルドレンとタンクラッドが帰ってきてほしかった。



 まだかまだかと、イーアンが両手を組んで、垂れ目を垂れさせて懸命にお祈りしていると、ニヌルタがぐっと笑顔になって『出てくるぞ』とイーアンを見た。


 イーアン、つーん。

 ニヌルタは仕方なさそうに笑い、顔を背ける女龍を覗き込んで『怒るな』もう一度伝える。

 目が合って、怒っている女龍に『俺が悪かった』と一言、小さく囁き(※でもシムにも聞こえているので、頭上で笑ってる)許してもらった。


「来るぞ、イーアン。分かるか」


 シムも教える。龍気の少ないイーアン。ただでさえ分からないのに、今はもっと分かり難い。


 ふと、シムの顔が曇り『バーハラーは危ない』と呟く。『え?どうして』驚いたイーアンが聞き返すと、答えより早く、横にいる男龍も頷く。


「そうだな。バーハラーは、もう」


 ニヌルタも同じように心配そうな表情で、シムを見た。


 それからすぐにニヌルタは、待っているつもりだったのを変更して暗い穴へ向かって飛び、イーアンとシムが待つ場所へ、その腕にバーハラーの首を抱えて、あっという間に戻ってきた。


 龍の背に乗るタンクラッドとドルドレンは、無事そうで、ニヌルタに連れられ、外で待っていたシムとイーアンを見て『終わった』と大声で叫んだ。


 イーアンは彼らの無事を見て、わっと笑顔になったが、それも続かなかった。ニヌルタの腕に抱えられたバーハラーの首は、既に意識がないように目を閉じていた。



 山脈の黒い穴は、この時、離れた北西からでも確認出来る勢いで、消え始めていた。

お読み頂き有難うございます。

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