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魔物資源活用機構  作者: Ichen
交わる世界の片鱗
1002/2955

1002. お使いオーリン後、ショショウィ・タイム

 

「暑いかも知れませんが」


 木陰がないのでと、ドルドレンにバイラは謝る。馬車を止めた総長は『バイラが謝ることではないのだ』木のない地域は仕方ない、と昼食の準備。



「多分。夕方くらいまで進むと、ぼちぼち、岸壁沿いの木々の群れが見えてきます。夕方までは辛抱ですね」


 道の先に腕を伸ばして指差し『今は見え難いですが』とバイラは示す。地平線にさえ見える、その前方。

 僅かに転々と立つ木の形や、遠くに薄っすら段差として見える、小山のような部分が『夕方にはあそこら辺へ』の場所らしい。


 昼食は照りつける太陽の下。


「遠征ではこういうことも、よくあったから」


 笑いながらドルドレンは水を取りに行き、皆に水を飲んでおくように言う。ミレイオも昼食準備。『風は涼しいんだけどね。今日』日差しがきついわ、と気だるそうに焚き火を熾す。


「イーアンが早く戻るって言っていたけど。どうかしら」


 皆の朝食が軽かったので、ミレイオはちょっと早めに、イーアンを待たずに調理を始め、豆と根菜の処理を終えた。まだかな~と思いながら、野菜を鍋に入れようとしたところで、お空きらーん。


「あ、イーアンだ。ミレイオ、イーアン帰って来るよ」


「良かった。いつもより早いね」


 ザッカリアが手を振って迎え、彼の側に白い光が近づいてくる。

 あっという間に、イーアンとオーリンが降りてきて、降りたと同時、イーアンはそそくさ大きい荷物を馬車に運ぶ。

 オーリンは龍を帰して『ただいま』と暢気に笑顔で挨拶。ミレイオは『オーリンもか』と呟いた(※食料少ないのに、って)。


「何だよ。いいだろ?今度、金払うよ」


「そうじゃないのよ。食材が少ないんだってば。朝も話したでしょ」


「龍で買いに行かないの?誰か、龍で行けばいいじゃないか」


 む。皆、オーリンの言葉で止まる。言われてみたら(※忘れてた)。さっき町に出て『ホニャララ』を買ってきたバイラとフォラヴも、今になって『そうだった』と気がつく。


「だが、オーリン。慣れた地域ならとにかく。初めて龍を見る人々ばかりの場所で、そう簡単に買いにいけない」


 ドルドレンがそう言うと、オーリンはじっと彼を見て『そうか』と頷く。それから『じゃ、俺がどこか。これまで行った町で買ってから、こっち来れば良いか』と答えた。


「あんまり無くなったら困るだろ。俺も大荷物は無理だけど、ガルホブラフで運べる分は買ってくるよ。それで食いっぱぐれないだろ?どう」


「お前は。どうしてそう時々、一件落着のような〆を思いつくのだ。それは賛成だ」


 でしょ?オーリンも笑う。『何でこれまで、誰もそうしないのかと思っていた』と言われ、皆は黙っていた(※馬車で買うもんだと思ってたから、思いつかなかった)。



 そしてお昼の準備は進む。イーアンが戻ったので、粉を練り練り。

 少し寝かせる間、肉を切ってちゃかちゃか焼くと、ミレイオの蒸し鍋の中にポイポイ入れて、肉の味を移し、寝かせた粉生地もちょいちょい伸ばすと、焼けた石の上にぺっぺと乗せ、ぷーぷー焼いては皿に置く(※擬音だらけ)。


「肉と粉、使い切った?」


 出来た食事を皿によそいながら、ミレイオが訊く。粉はまだある、と答えるイーアン。『でも。今夜分くらいですよ』明日の朝は足りないかも知れないことを教えて、早速オーリンにお使いを頼んだ。


「私が、あんたとタムズと一緒に、空に上がった日。あの昼に、許可してやった平焼き生地さ。

 こいつら、ホントに全部食べ切っちゃったでしょ?あれが打撃だわよ」


 イーアンと話す、ミレイオの大きな声の嫌味。『食材も、肉ばっか減ってさ』放っておくと食糧消えると、ぼやく。


 タンクラッドとドルドレンは、ミレイオたちから少し、距離を置いた場所に移動して食事(※渡されたら、全部食べて良いと思い込む人たち)。

 シャンガマックも、そっと総長の側に動いて『あれ。全部じゃなかったんですね(※食べた)』と囁く。『イーアンが作るから、食べても良いってミレイオが言っていたんだ』悔しそうに舌打ちする親方(※見えないところで)。


「オーリン。悪いんだけど。夕食までの時間で、どっかで肉と粉を買ってきてくれるかしら。塩漬けの、安いスジ肉で良いわよ。脂身とか」


 聞こえるように、ミレイオがオーリンに頼み、了解したオーリンがお金を受け取りながら『脂身はやめたら?』と苦笑いで意見していた。


 親方たちがひっそり昼食を食べている間。

 オーリンに買い物の内容を細かく伝えるミレイオは、紙に書いて渡すと、何か別のものも買ってきてもらうように、ちょっと声を潜めて話し、オーリンは静かにそれも了解。


「じゃ。早い方が良いな。食い終わったら行って来るよ」


 気の好い龍の民は、お金と買い物の紙を受け取ると、がつがつ料理をたいらげ、あっさり龍を呼んで出て行った。『行動が早い』見送るミレイオが笑っていた。



 そして、食事の後片付けも済んだ時。親方はそわそわして、『ショショウィ。今呼ぶか』と皆に言う。今日、明るいうちに呼ぶ約束をした、と言うと、子供とフォラヴは喜んだ。


「ショショウィが危なくないように、来ても近づくなよ。大丈夫なヤツだけな」


「分かってるわよ」 「分かっています」 「傷つくのだ」 「知っています」


 砂を地面に集める親方は、後ろに佇む寂しそうな、ミレイオ&イーアン、ドルドレン&シャンガマックに、しっかり注意してから、近い場所に来たザッカリアとフォラヴに『お前たちに会いたいそうだ』と微笑む。嬉しい二人は顔を見合わせる。


「よし。呼ぶぞ。ショショウィ」


 親方が指輪を擦って名前を呼ぶと、みるみる間に白い煙が上がり、ふわーっと白い地霊が現れた。


「ショショウィ!本当に来た!」


『ザッカリア。フォラヴ』


 白いネコはちょっと小さめ。でもそんなの気にしない、子供と妖精の騎士は、出てきた地霊を笑顔で迎え、フカフカの毛を撫でる。『よく来ましたね。遠いですか』フォラヴが訊ねると、ショショウィは首を傾げて『すぐ』と答える。


 騎士とザッカリアがナデナデ中。親方は、離れた場所で微笑んで見守るバイラを振り向き、手招きした。


「バイラも大丈夫だ。こっちへ来てくれ」


「私も。そうか、そうでしたね」


 ちらっとイーアンたちを見て、すまなそうに頭を下げると地霊の側へ行く。ショショウィはバイラを見上げ『バイラ。バイラ?』名前の確認。ちゃんと自己紹介したわけではなかったので、バイラは頷く。


『そうだよ。バイラだ。ショショウィ、また会えたね』


 ナデナデ参加するバイラも、笑顔がお子さん向け。幸せそうな笑顔で白いネコに群がる仲間を、後方から見つめる4人。



「(ミ)何か。悔しいわ」


「(イ)そうですね・・・ルガルバンダは、彼とズィーリーが近くにいても、ああして呼び出した場合は、精霊に『影響が無かった』ような話をしていましたが」


「(ミ)それ。ホントなんじゃないの?試そうか」


「(ド)ダメなのだ。タンクラッドが怒る(※怒鳴られる)」


「(シャ)でも、その話を訊くと。もしかして本当かもしれないって、思いますよ」


 ハッとして、褐色の騎士を振り返る3人(※可能性発見)。騎士は少し戸惑いながらも『そういう話はあるんですよ』と知識の上での魔法話をした。


「え。じゃ、イケるのだ。きっと。タンクラッドに交渉するか」


「タンクラッドさんじゃなくて、ショショウィにした方が。ショショウィの判断ですから」


 可能性あり、と知ったドルドレン。首元のビルガメ・ヘアに触れて『ビルガメスと一緒に』愛に忠実に行動することを誓う(※大袈裟)。


 そして、まずはミレイオが話しかけることになり、ショショウィに呼びかけると、白い地霊がさっとこっちを向いた。


「きゃーっ!可愛い~」


「ミレイオ、喜ぶのは後です。早く話して」


 イーアンに急かされ、そうだった、と喜ぶ顔を戻してすぐ『ショショウィにお願いが』と、ミレイオは伝える。同時に親方が振り返り、眉を寄せて睨みつけられた。


「お前たち。ショショウィに無理を」


「無理じゃないわよっ。大丈夫かも知れないじゃないの」


 バカ言うな、と立ち上がった親方(※しゃがんで、よしよししていた)。すぐに止まって振り向く。

 白い地霊は親方を見上げて、うん、と頷く。『そんな。お前。無理しなくても』親方は困ったように首を振って、地霊を止める。


『少し。大丈夫と思う』


 ショショウィ・・・優しい地霊に、親方はひしっと抱き締めて(※横で子供に『独り占めだ』と怒られる)『お前は何て、頑張る仔なんだ』いいのに、あいつらなんか気にしないで(※素)と訴えるが、地霊はミレイオたちを見つめ、ちょっとずつ歩きだす。


「来た!来ましたよ!」


「イーアンは一番最後よっ(※安全のため)私ね、まずは」


 え~。イーアン(←龍だから)の不平が漏れるが、それを無視して、ミレイオは少しずつ近寄ってくる白いネコを伺いながら、そっと自分も歩み寄る。


『大丈夫かな。大丈夫?痛くない?』


『大丈夫』


 ちょっとずつ、距離を縮めながら、ミレイオは残り2mくらいのところで立ち止まる。大きく深呼吸して『無理はダメよ。苦しいって思ったら逃げてね』と伝え、その場に膝を突いて、片手を伸ばした。


 ショショウィはじーっとその手を見てから、一歩だけ近づく。後ろで親方がハラハラしながら(※真後ろ待機)ショショウィに異変を見逃すまいと、目を皿にして見守る。


 白い長い尻尾。地霊は体よりも長いその尾を、ぐるーっと回して、差し伸ばされた指に触れた。

『あ・・・』ミレイオ感動。長い毛が指先と手の平に、はたはた触れて、笑顔が浮ぶミレイオの顔を、大きな緑の目でショショウィはじっと見た。


『大丈夫』


「やったーーーっっ!!!」


 ミレイオ、後ろを向いて満面の笑みで叫ぶ。仏頂面のイーアンたちに『私、平気だった!』と子供のように喜びを伝える(※51か52才)。


 そしてショショウィの尻尾を、ちょっと指でふかっと摘まむと、地霊はミレイオの腕にトコトコ歩いて寄り添った。


『大丈夫』『うきゃ~可愛い~!私、私ミレイオよ。名前、ミレイオ。言ってご覧』ミレイオは白いネコの顔を覗きこんで、自分の名前を教える。


『ミレイオ』


『そうよ、頭良いわ!この状態なら平気なのね!嬉しいわ』


 は~、かわいい、あ~、かわいい! 喜びのミレイオ。それでも気にしながら、地霊を抱き寄せて、無表情(※平気)の地霊を両腕に包むと頬ずり。


「指輪で呼んだら、本体そのものじゃないから?だからかな、私大丈夫よっ」


「いいから離せ」


 笑顔が崩れないミレイオに、親方は腕を掴んで引っ張る(※ネコ保護)。親方に両脇を持たれて、ぷらーんとしたショショウィ。ミレイオはもう嬉しいだけで、お腹の毛も撫でる。


 そんな様子を見つめる・・・ドルドレン。


『俺も行く』真剣な顔で、愛妻(※未婚)をさっと見て『裏切るわけじゃない。分かってくれ』一言そう告げると、待って~と頼むイーアンを振り切ってドルドレンは進んだ(※ネコ触りたい)。


 そして。ドルドレンも、結果から言えば合格。

 ショショウィは、彼の首元だけはちょっと怖がっていたようだったが、ドルドレンの体が大きいので『顔を近づけないなら、大丈夫』との、両者理解により、無事、ドルドレンはショショウィ抱っこ。


「カワイイのだ~」


「可愛いでしょ?フッカフカ」


「離せっ!お前たちのショショウィじゃないんだぞ」


 えへえへ笑いながら、総長はショショウィを抱っこして、頭をナデナデ。

『顔は、近づけられないけど。でも満足だ』イイコイイコしながら、大きな緑の目を見て『綺麗な目だな。こんなに近くで見れるとは』自分を気に入ったらしい地霊に、ニコニコしながら伝える。


『ドルドレン。ショショウィ。一緒が良いと思う』


『そうか?それが良いなら、このおじさんに(←タンクラッド)お願いするのだ』


「何を勝手なこと言ってるんだ、お前は!ショショウィを離せって」


 ショショウィ友が増えるのが気に食わない親方に(※特別感薄れる)再び地霊は引き離されたが、ドルドレンも満足。ミレイオと二人で『可愛い』を連呼していた。



 今や、無表情の石の仮面状態のイーアン。ちらっとシャンガマックを見て『あなたも。精霊の力が強力ですよ』行くな、と釘を刺す。


「試すだけ。やってみようかと思うが。嫌か」


「嫌かって言われたら、そら、嫌ですよ(※私一人になるだろ的な)。でもその前に、精霊の加護が」


「うーむ。だけどイーアン。俺は魔法が使える。もしかすると、ショショウィに触れる工夫は出来るかも」


 なんだとぉ?女龍の顔が怒りに歪む。『魔法ですって~?』歯軋りするイーアンの怖さ。


 その表情に怯えた、シャンガマック。そそくさイーアンを離れて、おいでおいでする、目尻下がるミレイオたちの側へ移動。


 それから、タンクラッドにぷらーんされた地霊を見て、頷くと。


 シャンガマックは、魔法の言葉を唱え始める。少しずつ、シャンガマックの周りに風が吹き始め、いつもは金色の光に包まれるところが、淡い緑の光が彼を取り巻く。


「何?何してんの?ショショウィ、大丈夫?」


『大丈夫』


 ミレイオがビックリして地霊を心配するが、ショショウィは何かを感じたようで、親方の手を抜け出し、褐色の騎士の側へ、トトトト・・・と、小走りに進む。

『あ、ショショウィ!』親方が急いで止めようとすると、魔法を唱え終えた騎士はニコッと笑って、地霊にしゃがみ込み、その頭を撫でた。


「大丈夫そうですよ。この状態だったら」


「何だ、お前。何をしたんだ」


 シャンガマックは精霊の魔法を使い、山野の空気に自分を包んだ。『長くは出来ないです』そうは言うが、嬉しそうに白いネコを撫でる。

 ショショウィも、シャンガマックの淡い緑の光を、嬉しげに見上げ『気持ち。良い』と伝え、頭を擦りつけた。


「俺はシャンガマック。本当は同じ精霊なのだ。いる場所が違うだけで」


 うん、と頷くショショウィは、唖然とするタンクラッドたちに『大丈夫』ちゃんと教えてあげた。



 この後。『自分も』とチャレンジしたイーアンだが、思ったとおり却下され、悔しさにクロークの裾を噛んで悲しむ(※怖い、イヤだ、と言われた)。


 イーアンを除く全員が、指輪で呼び出した地霊と和む時間を過ごし、ふてくされたイーアンは一人、馬車の荷台で、ぶーぶー言いながら伴侶のプレゼントを作り続けた(※出発後も誰とも口利かなかった)。

お読み頂き有難うございます。

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