表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物資源活用機構  作者: Ichen
交わる世界の片鱗
1000/2954

1000. 旅の四十二日目 ~過去も今もこれからも

Congratulations on the 1000th episode!!!(※自分で言っちゃうけどお許し下さい)

 

 ミンティンに乗って出かけた夜明け。戻ってくる頃には、太陽の光が朝の世界を作る時間。



 龍の背から、ドルドレンと親方が馬車を見つけて近づくと、何だか様子がおかしかった。


「あれ。変だ。何だろう」


「馬車の間が黒い。何であそこだけ」


 ドルドレンが親方に訊ねると、親方も眉を寄せて『奇妙』と呟く。何かあったのかと急いで、龍を降ろす。お礼を言ってミンティンを戻し、ドルドレンとタンクラッドは馬車へ駆け寄って、びっくり。


「な。何?どうした、これは」


「あ!タンクラッド。どこ行ってたのよ!もうっ」


「間に合った~。良かったですよ~」


「イーアン、これは?」


 2台の馬車の合間。いつも親方がベッドを置いている場所だけが、異様に真っ暗。

 荷台の後ろ側に、イーアンとミレイオが待っていて、騎士たちとバイラは馬の繋いである方でドルドレンたちを待っていた。

 慌てる親方とドルドレンを見つけた、イーアンとミレイオは、彼らにすぐに事情を伝え、急いでくれと親方の背中を押す。


「え?中にコルステイン?」


「だけじゃないけど。ホーミットもいるから・・・とりあえず、入ってよ」


 ドルドレンはイーアンに止められて外で待機。ミレイオとタンクラッドが一緒に黒い空間に入る。


 外から見ても、黒い壁でもあるかのように真っ黒け。上も暗い。馬車と馬車の間に、黒い箱でも突っ込んだような不思議な状態に、ドルドレンは愛妻(※未婚)を見て『これ。何?』ちょっと指差す。


「私もちゃんと知らないですけれど。ホーミットが何かやっていましたね(※テキトー)。あっという間に、こんな感じです。『コルステインが中にいる』とか言って」


「コルステイン、どこから来たの」


 明るいのだ、と言う伴侶に、イーアンも首を傾げて、起こった出来事を伝える。

 ホーミットが夜明け前ギリギリで来て『タンクラッドに用がある』と最初に言ってきたらしい。それは、朝食準備で早く来たミレイオが対応した。『私、その時、起きました』とイーアン。


 ミレイオにタンクラッドがいないことを聞かされて、イーアンも伴侶がいないので『うへっ』と思ったけれど、側に置かれた紙を見つけてミレイオに渡し、二人が少し出かけていると知る。


「それを伝えたら。舌打ちしやがって、あいつ」


 話しながら、ちっ、とイーアンも舌打ち。それで、ホーミットは馬車の間を使わせろと言い始め、理由を聞いたら『コルステインが居られる場所を作る』とか。

 それであっさり。こんな具合に暗くなり、この暗さを辿って、コルステインは直に来た様子。


「じゃ。イーアンも別に、ここにコルステインが居るのかどうか、知らないのか」


「はい。ミレイオは見ていますから、居るには居るようですが」


 ふーん・・・『コルステイン、何だろうね』とドルドレン。『とりあえず。これ以上、明るくなる前に戻ってくれて良かった』とイーアン。


「だけど、あなた。どこ行っていらしたのですか」


 それよりこっちですよと、奥さんに見上げられて『ああそうだった』と、ドルドレンも掻い摘んで、出かけた経緯を伝えた。



 馬車の合間の黒空間(?)に入った親方。なーんも見えない。『コルステインは?』見えないなりに、頭の中で名前を呼ぶと、腕を掴まれた。いつもの、コルステインの鳥の爪が触れて、親方はハッとする。


『コルステインか』


『タンクラッド。コルステイン。もっと。強い。する。男龍。違う』


『うん?』


 コルステインの言葉に、タンクラッドはゆっくり引き寄せられて抱えられるまま、コルステインに『何を話しているんだ』と聞き返す。すると、横で笑う声が聞こえた。


『コルステインもな。女みたいだな』


『やめなさいよ。茶化して。関係ないでしょ』


 ホーミットとミレイオの声もして、親方は何のことか分からないまま『説明してくれ。もう朝なのに大丈夫なのか』早くしないと、と焦る。ミレイオは良いにしても、コルステインには朝の光が気になって仕方ない。


『(ホ)簡単に俺から教えてやる。コルステインは()()()()()いたんだ』


『(タ)何だって?!消えかけた?』


『(ホ)コルステインの気力が薄れてな。サブパメントゥと中間の地の間くらいで、フラフラしてるから。俺もどうしたかと近寄ったら、お前に捨てられかけたみたいじゃないか』


『(タ)捨ててない!何でそんな』


『(ミ)ちょっと、あんた言葉を選んでよ!タンクラッドが慌てるでしょ』


 ミレイオに注意されたホーミット。少し黙ってから『だからな。要は、仲を取り持ちに来てやっただけだ』用事完結。


 ミレイオがぶつぶつ言っている中、タンクラッドは慣れてきた目で、ぼんやりとコルステインの姿を目に映す。自分を抱えている両腕の力は、遠慮がちで躊躇っているよう。


『コルステイン。俺がお前を捨てるわけないだろう。何で』


『タンクラッド。男龍。守る。違う。コルステイン。強い。お前。守る。する』


 なんてこった!と呟いて、タンクラッドは涙ぐみながら、コルステインの体を抱き締めた。『そんなに気にしたのか』そうじゃないんだぞ、と教える。

 その表情まではっきり分からないものの、コルステインがじっと見ているのは分かる。


『お前は強い。本当に強い。男龍の強さと、また違うんだ。お前が弱いなんて、言っていない。そんなことじゃないんだ。あ~・・・上手く言えない、どうすりゃ良いんだ』


『ね。私、言おうか』


『俺が言っても良いけどな』


 あんたは黙ってらっしゃいよ!口を挟んだホーミット(※ややこしい親父)を叱って、ミレイオは二人の会話に入る。


『ホーミットじゃ、余計なこと言うから。時間もないし、私がコルステインに伝えるわよ。タンクラッドの気持ちは?』


 話の内容はざっくりしか知らないのよ、とミレイオに言われて、タンクラッドは急いで昨日の話をした。


 ミレイオはすぐに察してくれて、それをコルステインに伝える。タンクラッドの気持ちは、そっくりそのまま伝えると、やっぱりコルステインには分かり難いと思った。


 能力の種類、その違いでしかないこと。

 男龍の持続する祝福のことを教えてやり、コルステインが守れない時間帯や、状況の心配をされていたと言うと、コルステインは考えていた。


『だから。あんたも何かそういうの、あれば良いのよ。じゃなきゃ、違う方法とか』


『分かった。コルステイン。見る。する』


 方法を見つけると、コルステインは言う。それから、タンクラッドの顔を両手でそっと挟むと、『コルステイン。お前。好き。守る』そう言って、その額に口を付けた。タンクラッドが、自分にそうしてくれるように。


『ホントに。まぁ。めでたいくらい』


『だからっ!黙ってろって言ってんでしょ!』


 冷やかすホーミットの声が聞こえ、すぐに遮るミレイオの声。タンクラッドは笑えないけど、コルステインのことを支えてくれる彼らにも感謝して、コルステインに『明るいのに。来てくれて有難う』と、お礼を先ず伝え、『夜。また話そう』夜、必ず会おうと約束した。


『来る。する。お前。コルステイン。好き?』


『当たり前だ。何度も言うぞ。大好きだ』


 ハハハと笑うホーミットの声に、ミレイオがわぁわぁ言うのを聞こえない振りして。タンクラッドは、コルステインの頬を撫でた。『もう。朝だ。戻れ、光が危ない』頼んでようやく、コルステインは頷いて、彼を包んでいた体は空気にほどけて消えた。


『よし。用は終わったか。じゃ、俺も帰る。この礼をしてくれよ』


『勝手にやったんでしょ!あつかましいっ』


 『恩に着ろよ』そう言うと、けたたましい息子の声を無視して、ボウッ・・・と、煙の如く黒い空間を消し去り、ミレイオとタンクラッドが差し込んだ眩しさに目を閉じると同時、ホーミットもその姿を消した。



「帰ったのか?」


 目を押さえるタンクラッドと、薄目を開けたミレイオに、ドルドレンの声が聞こえる。『一気に黒いの、消えてしまったのだ』不思議~と感想を言うドルドレン。


『ええ、戻ったわね』答えながら、ミレイオはゆっくり瞼を開け『あー。私、サブパメントゥ向きじゃないわよ、やっぱり』馬車を包む朝の明るさに笑った。


「タンクラッド。コルステインと話せましたか」


「イーアン・・・すまん。まだ目が。そこにいるか」


 はい、と答えてイーアンは側に寄る。親方の横に立って『コルステインは』と心配を言い掛けると、親方は手をふらっと上げて、片手で両目を押さえたまま、イーアンの肩にもう片手を乗せた。


「うん。ちょっと、いろいろあってな。でも大丈夫だ。また、話せる時に話すよ」


 イーアンは、コルステインが心配(※親方よりも)。純朴なコルステインだから、何か、とっても傷ついたり、悲しかったら可哀相で。自分は龍だから、何とかしたくても手が出せないことの方が多い。

 親方が大丈夫、と言ったので、イーアンは了解して、ミレイオと一緒に朝食の準備に入った。



「料理の時間、使っちゃったから。今日は焚き火を熾さないで、簡易朝食ね」


 ミレイオはそう言うと、瓶詰めの燻し肉と多めに作って保管しておいた、前日の焼き生地の残りを持ってきて、皆に配る。


「昼はちゃんと作るから。とりあえず、朝はこれで。食べたら出ましょ」


 次の町に行ったら、また買い足さないとね・・・皆に均等に分けて、余った分を大食らいの二人(※ドル&親方)にあげると、ミレイオはバイラに次の町がどの辺りかを訊ねる。


 バイラも不思議続きで、ぼーっとしているものの(←前日・ルガルバンダ、本日朝・馬車真っ暗)。ハッとして、ミレイオの問いに、地面に地図を描いて教える。

『ふむふむ。そうか、もうちょっと行くと、町あるのね』パヴェルにもらった食料が、足りてる間に買わなきゃ、とバイラに言うミレイオ。


「街道沿いから外れますけれど。そこまで遠くない場所にあります。次の町へ寄っても、行って戻って、街道の分かれ道まで半日程度ですから」


「バイラ。荷物出すところ、近くにあるかな」


 ミレイオと話しているバイラに、ザッカリアが声をかける。

 ん?振り返るバイラの近くに来たザッカリアは『俺。ギアッチに・・・お父さんだよ、北西支部にいるの。荷物出したい』だから、と言う。


「そうか。大丈夫だよ、町に発送する所がある。そこに預ければ良いよ」


 お父さんに旅先から荷物を。いい子だな、と微笑むバイラは、ザッカリアの頭を撫でて『贈り物?』と聞いてみる。ザッカリアは、自分を見て微笑んでいるミレイオとバイラに、笑顔で頷いた。


「この前。首都で出したでしょ?ロゼールのお菓子のお礼でさ。皆で、手紙も書いて送ったやつ」


「ああ~・・・あれ。ええ、そうね。どうしたって?着いた連絡でも来たの?」


「うん、昨日の夜。ギアッチが『すごい贈り物だよ』って驚いていたの。だから、また送ってあげようと思って」


 宝石とか金の塊(※魔物の)とか入っていたからなぁと、ミレイオも箱の中身を思い出す。そりゃ、開けて宝が入っていたら、私でも喜ぶわねと笑った。

 黙って聞いている横のバイラが分からなさそうなので、ミレイオは簡単に、送った内容を説明。


「そうだったんですか。私が業務から戻る時間前ですね。

 母国で待っている人は、何を送ってもらっても嬉しいものでしょうが、子供から来れば尚更」


「そうね。ギアッチって人。ザッカリアのこと、ホントの子みたいに可愛がってるから」


 その言い方に、ザッカリアは嬉しそうだが、バイラは少し笑顔のまま止まる。ミレイオは『あ』と小さく声をあげて『育ての親なの』と囁いて教えた。バイラは大きく頷いて、そうだったのかと。


「ザッカリア。お父さんに、何を送ったの?」


「ええっとね。拾った宝石と、タンクラッドおじさんがくれた、金の石と試作のナイフでしょ。あと、イーアンの鱗と、資料館でパヴェルが買ってくれたお土産と・・・それで、手紙だっけ?」


「そうね。ロゼールとか職人宛に書いたわね。すごい贈り物よね」


 アハハと笑いながら軽食を食べるミレイオに、ザッカリアも笑って『今度の荷物は、中身少ないんだよ』と困ってる。バイラは『お父さんは、君から送ってもらえたら何でも嬉しいよ』と教えた。



「バイラ。ギアッチと喋る?俺、バイラの目を見てると、いつもギアッチみたいって思うんだ」


「え。私が喋る?目の・・・色が同じなのかな」


 そうだよ、とザッカリアは答えながら、良い思いつきに早速、腰袋から珠を出し『はい』と手渡す。受け取ったバイラは、どうして良いのか。そんな戸惑うバイラに、ああそうか、と珠を引き取ったザッカリア。


「俺がまず、呼び出すよ。朝だから、きっとすぐに出ると思う。そうしたらね。代わるから、頭の中で話して」


「いや、え?だって、私は」


 バイラが止めようとするのも気にせず、ザッカリアは連絡珠を握って目を閉じる。ミレイオがバイラの腕に手を置き『この子、嬉しいのよ』と微笑んで、ちょっと会話してあげるように促す。


「何を言えば良いのか」


「ザッカリアの楽器の話とか。そんなで良いのよ。『一緒に同行して、彼を見守る一人』って」


 そうかもしれないですが~ 困って笑うバイラに、ザッカリアが『バイラ!ギアッチだよ』と珠を押し付けた。


『おはようございます。あなたがバイラ?』


『おはようございます。本当に頭の中に声が(※総長相手に珠使ったの忘れている)』


 ハハハと笑う声が聞こえるような感じで、相手の男性の優しい言い方が再び響く。


『私はね。ヴェリミル・ギアッチ。馬、いるでしょ?馬車を引いている馬に、私の名前を付けたみたいだけど。皆はギアッチと呼びます。あなたはバイラで良いのかな』


『はい。ジェディ・バイラです。テイワグナの警護団で、それまでは護衛業でした。ザッカリアがあなたのことをよく教えてくれます』


『嬉しいなぁ。イイコでしょう?顔も良いしね、頭も良いし。優しくて、気が好くて。誰にでも素直でしょ?勇敢だしねぇ(※止まらない)』


 何となく固まっているバイラを見て、ザッカリアは手を重ねて『もう良いよ(※タイミング知ってる)』と横から入る。


『あ。止められちゃった。いつも止められるんですよ』


『ハハハ。あなたは本当に素晴らしいお父さんです。彼はあなたの言ったとおりの少年です。見た目はすっかり若者ですが、純粋で、物分りが良くて。いつも素晴らしい音楽を聴かせてもらっています』


 バイラは、嬉しそうに相槌を打つギアッチに、自分が出来ることは何でもして、彼らの旅の手助けをしたいと伝え、自分はテイワグナだけの同行であることも話した。

 ギアッチは静かに聴いて、彼がテイワグナのみ同行と聞いた後、『どうぞこれからも皆を宜しくお願いします』と頼む。


『あ、そうだ。えーっと。どうしようかな。すみません、総長に代わってもらえますか』


『はい。総長ですね。今、代わります。それではギアッチ、また』


 バイラはギアッチに挨拶すると、笑顔をザッカリアに向けて『総長に代わってほしいと』そう言って、連絡珠を子供に返す。


「総長?分かった。有難う、バイラ」


 ニコッと笑ったザッカリアは、連絡珠を総長へ持って行き、向こうで総長に手渡した。



「どうだった?」


 訊ねるミレイオ。バイラは微笑み『すごい愛情深い人でした』と答える。ニッコリ笑うミレイオも『そうなのよ』彼、先生でさ・・・と、自分が知っている、僅かなギアッチの話を教えた。



 そんな愛情深いギアッチ先生。総長にも愛情を注ぐ。


『どうしたのだ。久しぶりだが。俺に代わったと言うのは、まさかサグマン(※恐怖の執務の騎士)』


『何言ってるんですか。そうじゃないですよ。あなた、総長に就任して、一年ですよ』


『何を突然。うむ、そうだな。忘れていた』


『でしょ?今ね、日付見て思い出しました。あなたが総長になってから、一年。早いですねぇって、側にいませんけれど』


『まさか一周年を、国外で教えられるとは思わなかった』


『総長。頑張りましたね!おめでとうございます。側じゃないけど、お祝いを言わなきゃね。総長のお宅の玄関に、花でも飾りましょうか』


『ぬ。それ、死んじゃったみたいなのだ。やめてくれ。生きて戻るんだから、そういうの嫌である』


 ああ、そう。とギアッチ。何なの、それ。とドルドレン。でも二人は頭の中の会話で、笑う。


『有難う。忘れていたからな。思い出させてくれて』


『いいえ。思い出す余裕なんてないでしょうからね。でも・・・そうだな。ちょっと、今夜。また連絡取って下さい。戦闘でもなかったら』


『うむ。そうしよう。ギアッチ、皆は元気か。サグマンはどうでもいい』


『元気ですよ。積もる話だらけだ。昨日、ダビも来ました。じゃ、また今夜にね』


 ギアッチは、何かを言い掛けて切り替え、『今夜連絡を』と念を押すと、挨拶を交わして連絡を終えた。

 微笑むドルドレンは、前に立って見ていたザッカリアに珠を返すと、お礼を言う。


「また。今夜、ギアッチと話す。連絡珠を貸してくれ」


「いいよ。おめでとう、総長。これからも宜しくね」


 大きなレモン色の瞳を、朝陽にきらっと輝かせたザッカリアはニコリと笑う。え?と思ったドルドレンは、座ったまま彼を見上げ、うん、と頷いた。


 バイラとミレイオの元へ戻る、ザッカリアの背中を見送ったドルドレン。


 横に座っていたイーアンが自分を見つめているので、ギアッチと会話した内容を伝えたら。


「んまー。ザッカリアはきっと、何かを見たのでしょうね!それはお祝いしなければ。あなたが総長じゃなかったら、私拾われていませんでした(※深刻な別未来)」


「何を言っているのだ。総長じゃなくても、運命は引き合わせた」


 そうじゃないのよ、とイーアンは笑って、ドルドレンの腕に寄りかかる。『お祝いですよ、お祝い!』イーアンは伴侶の笑顔を見上げて、何度もそう言い『何しようかしら~』と今から浮かれている。


 奥さんに微笑んだドルドレンは、ふと、朝陽の眩しさに顔を上げた。


 向かいに座って話している、シャンガマックとフォラヴと目が合い、二人の笑顔をもらう。

 あ・・・と思って、笑みを深めると、側に来た親方が『どうした。嬉しそうだ』と顔を覗きこんで微笑む(※こっちも幸せモード)。



「ああ。そうだな・・・嬉しい」


 ドルドレンは、この朝。まだ、始まったばかりの一日の朝だけど。ぎゅっと、何かを詰め込んだ時間を受け取っている気がする。


 朝一番で、親方と一緒に迎えた、海岸の朝。朝なのに(※理由はあれだけど)来てくれていた、サブパメントゥの二人。そして思いもしなかった、母国の部下からのお祝い。


 片脇に、今や龍に変化する奥さん(※異例)。元気で頼もしい部下。いつも頼り甲斐がある、親方とミレイオ。自分を信じて付いて来てくれたバイラ。



「おお、朝食。まだ?」


 上から響いた声が、朝食の様子を懸念した一言で、挨拶。見上げると、気楽そうな龍の民が、龍の背に乗って降りて来た。

『何食べてんの?食事は?』俺も良いかと思って来たのに!と笑いながら、イーアンの側に来る。


「朝から忙しかったのですよ」


 今来たって、もうねぇ・・・面倒臭そうにイーアンが苦笑いしながら、オーリンを連れて、馬車の中の食料を漁りに行く。


 それを笑って見ているドルドレンは、『オーリンも。お手伝いさんなのに、いつもこうして』一緒にいてくれる仲間に、包まれている喜びを感じる。いつも、支えてくれる皆に嬉しく思う。



 朝陽は青空を輝かせ、2台の馬車を光で縁取る。親父から買い取った、ハイザンジェルの馬車に乗って。不思議な謎を解きながら、天と地の力も支えてくれる、魔物退治の旅をする。


 ドルドレンの胸に、この朝の一場面はじんわりと沁みこむ。ここに、皆で一緒にいること。いつもと変わらない朝なんだけれど。


 食べ物が少ないのにとか、何とか。馬車で喚いているミレイオと、ねだるオーリンの声を聞きながら、笑う総長ドルドレンは、これからも彼らと一緒に動けることを、改めて、太陽に感謝した。

お読み頂き有難うございます。


これから、活動報告に1000話の記念(大袈裟)で思うところを書きます。もし宜しければ活動報告へいらして下さい。


気が付けば、の1000話。5,475,531文字が、昨晩999話で上がって、この回はプラス文字幾らか。


千夜一夜物語なんて、子供の頃に読みましたが『1000話って思いつくのかな』と子供心に抜粋本を読み読み、思ったものでした。実際は1000話の収録ではないようなのですが、そんなの、ネットもない時代の私の幼少時。知ることなどなく本当に千話あるんだと思っていました。


一つ一つが単話であれば「1000」の数の物語は、相当なイマジネーション。

でも私のような具合で進めていますと「あら。気が付いたらもう999?」みたいな具合でした。この差の激しさ・・・でも良いのです。どんな形であれ、1000話ですもの。


ここで長く語ってはご迷惑。続きは活動報告に載せます。

皆様に良い一日でありますように。ここまで読んで下さっています皆様に、心からの感謝を籠めて。


更に追記:


『 Avicii - Trouble 和訳 』

・・・以前も、この曲をご紹介したことがありますが、ここへ来て1000話の朝を迎えた時、この曲が浮びました。URLを貼れませんが、宜しかったら素敵な曲なので検索してみて下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ