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2月3日
北野と野中は、3人がけのソファに一つ間を開けて座っていた。北野は口ひげを蓄えた大柄な男だった。大きく股を開いて、虚ろな目をしながら頬杖をついている。少なくとも野中が会ってからはずっとジャイアンツの帽子をかぶっている。野中は、ファンなのかと一度尋ねた事があるが、そうではないらしかった。
対して野中は小柄な小心者であった。彼は常に何かに怯えていて、身を縮こませながら爪を噛む癖があった。
北野が、行こう、と言い膝に手をつき立ち上がった。
野中はうん、ともううん、ともつかない曖昧な返事をして、玄関に向かい始めている北野の背を追った。家から出て少し歩いたところで北野が口を開いた。
「お前がやるって言ったんだ。今更やめるってのは、無しだからな。」
突き放すような言い方だった。
返答がない。
北野が大きくため息をついた。
野中は爪を噛みながら怯えたように何度もきょろきょろと周りを見た。
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