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54話

カニ○ン像を仰いではならない。カニパ○の偶像を鋳造してはならない。カ○パンはあなたたちのパン、食べ物である。

「……ねえ、タスク様ぁ、もしかしてこの邪神像って、タスク様のせいで」

「現実的に考えてそりゃねえだろ……俺が布教したのってプリンティアぐらいだぞ」

まさかオートロンにまで布教した内容が伝わってる?いやあ、まさかな。俺達だってそこそこのペースで移動して来てるんだし、カニパ○教がこっちにまで広まったとは考えにくい。それに、この神殿。とてもじゃないが、1か月や2か月で何とかなってるものとは思いにくいしな。いや、魔法があるからこの世界、そこら辺はイマイチペースが分からんのだが。

だが、つまり。

「この邪神像は○ニパンではなく、元々この地域で信仰されていた土着邪神である」

「土着の邪神ってなんかやだぁ……」

ご尤もだが多分それが正解だぞ。というか、いいじゃねえか土着邪神。俺が広めたカニパ○教が邪神信仰にまで発展して奴隷が働かされつつ神殿が建設されてるとかよりはよっぽどいいじゃねえか……。


「タスク様、これ、どうする?」

「どうする、ったってなあ……」

とりあえず宿を襲う盗人の正体と事情はもう分かってしまった。だが、解決するには結構骨だぞ、これ。

何といっても、この組織、明らかに大きな組織だからな。

『邪神教』である以上、あまり広域において活動してるとは思いにくいし、ここでひっそりと活動してるって考えた方が自然なので、手を入れなきゃいけない範囲が狭くていいのは助かるんだが。

だが、量が。人の量が。すごく多い!

今、俺達が見ている範囲でも、百人レベルで奴隷たちが働かされている。あれは石材運んでるのか?パンにしてやろうか?軽くなるぜ?強度もパンになるけどな。

「うーん、奴隷の人達が自由になれば、宿から食べ物を盗む人も居ないよね?」

「まあ、それが妥当か」

その人達1人1人をどうにかしていくのは、多分、無理だ。この神殿建設地の中ででも、隠れてる奴とか居るんだろうし、さっき捕まえた奴隷の人の言う『逃げられる体じゃない』っつう人達も居るんだろうし、取りこぼしなく、ってのは厳しい。

さて、どうするか。




考えていたら腹減ってきたので、手近な地面にパン穴を作り、その中でコロッケ女神がもたせてくれたお弁当を食べて休憩ということにした。

弁当にコロッケは入っていなかったが、別に構わん。あれは揚げたてが一番うまいに決まってるからな!

そして、若干量が物足りなかったので、近くの石を拾ってカニパ○にして食べることにした。

のだが。

「なっ、何者だ、貴様らっ!」

穴を覗き込んでくる、邪教徒と思しき何者かが現れたのであった。

……あれっ、穴の入り口は草で隠したんだが……あっ、もしかして、あれか!

『大規模な魔法』!『道の真ん中に現れた岩山』!

それらが示すことは、『術師がこの組織に居る』ということ。そして、その術師達は地の魔法に長けているのであろう、ということで……。

「馬鹿め!この程度で穴を隠したつもりになっていたのか!我らの魔法に掛かればこの程度、いくらでも看破できるぞ!」

……相手が悪かったらしい。




そして俺達は穴の外に出された。特に指示されていないのだがなんとなく、両手を挙げて待機しておく。なんとなく。

「さあ、出て来い!」

「あっ、ちょっと待って!カニ○ン持って出るから」

……だが、エピはこんな時にも割とマイペースである。

穴の中の石を使って作ったカ○パンを拾い集めて、持って出てきた。こんな時にも食べ物を粗末にしない精神らしい。

「……え?」

邪教徒は、カニパ○を見て、素っ頓狂な声を漏らした。

……うん。いや、違うだろ。

「あ、あれ……それは、もしや……?」

邪教徒は、中華○ニパン改め邪神像を見た。

「……なんだ」

そして、俺達のカニパ○に目を戻し、微笑んだ。

「同志であったか」

「違うわアホが」

違うわアホが!




「いいか!良く見ろ!どう見てもこれはお前らの邪神像じゃないだろ!」

「え?違うのか?」

カ○パンを邪教徒の目の前に突きだすが、反応は芳しくない。

「お前らは自分が崇める神の像とカ○パンの区別もつかねえのかよ!」

「い、いやてっきり、神が眠る、かの像を象ったものなのだとばかり……」

……そんな調子の邪教徒に、俺は、教えてやることにした。

「見ろ!カニパ○ってのは、こうだ!」


邪神像は巨大カニパ○になった。




邪神像がカ○パンになった。

これはこの場に居たすべての人にとって衝撃だったらしい。

奴隷達は、自分達が今まで縛られていた原因がいきなりカニ○ンになって衝撃を受けた。

邪教徒達は、自分達の信仰の対象がいきなり○ニパンになって衝撃を受けた。

そして。

「ああああああ邪神様ああああああ!」

「なんてことだ、邪神様が、邪神様が、ぱ、パンに!」

「こ、このパンの中でお眠りになっておられるんだよな?封印の媒体がパンになっただけ、だよな?ま、まさか……まさか……」

……喧噪の中から聞こえた情報から、なんとなく、色々と分かってしまった。


多分、一番衝撃を受けたのは、自分自身がパンになった邪神だろうな……。




「なんてことだ、邪神像が、ぱ、パンに……」

奴隷達は作業を止め、茫然とカニ○ンを眺めた。

作業を止めた奴隷達を叱咤する者はいない。奴隷も邪教徒も、皆が突然のカニパ○の出現により、それぞれの立場を足元から崩されたのだ。

今の邪教徒達には、奴隷達を叱り飛ばす余裕はないのだろう。


……だが、それ以外の余裕はあったらしい。

「お、おのれ……!よくも、よくも我らが邪神様を!」

比較的すぐに立ち直ったらしい邪教徒が、咆哮を上げた。

途端、地響きが起きる。

凄まじい揺れに立っていられなくなり、地面に這いつくばるようにして耐える。

「み、見て、タスク様!」

エピが示す先で、凄まじい光景があった。

「邪神様の無念!ここで晴らす!」


神殿が、動いていた。


建設途中とはいえ、大規模な石造りの建物だ。当然、それなりに重く、頑丈であるはずのそれが……動いていた。

地震によって動く、とか、そういう話じゃない。

『それ自身が地震の原因なのだ』。そう。神殿は、『動かされている』のではなく、『動いている』。受動ではなく能動。そんな様子で、神殿が、動いた。

離れの塔へと繋がる通路は腕となり、地中に埋まっていたらしい脚が地上に現れ、神殿の本堂は胴体となり。

「見よ、我らが英知の結晶を!動く神の城の力、思い知るが良い!」

そして、動く神殿、それらの頂、頭部にあたる部分に……カニパ○。

つまり!俺達の前に立ちはだかったのは!

……カニパ○の合体ロボか何かである。


「うるせえ悔い改めろ」

なので俺は、邪教徒達の集団魔法によって動く神殿ないしはカ○パン合体ロボであるそれを、全部カニパ○にした。

すっきり。




「わー、カニパ○だらけー」

そうして俺達は、○ニパンだらけになった神殿跡地に降り立った。

どうやら、神殿を動かしていた邪教徒達は全員気絶してしまっているらしかった。エピ曰く、「当分起きられないと思うの。魔法の跳ね返りって怖いんだから!」とのことである。

どうやらこの邪教徒達はその大きな魔法を破られた代価として、神殿を破壊されると同時に大きなダメージを負ったらしい。ま、ハイリターンにはハイリスクが伴う、ってことなのかもな。


さて。

俺達はカニパ○降り積もる中、奴隷が運んでいた石材の1つに飛び乗り、石から高くパンを育てた。

できあがったのは即席のステージ。邪神像も無くなった今、目立つこと目立つこと。

奴隷達の視線を集め、若干居心地悪くなりながら、でも、言うべきことは言わないといけない。

俺は息を吸い、大きく声を張った。

「皆さんはもう自由の身です!皆さんは救われました!これから故郷に戻るなり、新たな土地へ赴くなりして、自由に楽しく、願わくば幸せに暮らしてください!」

そして、カ○パンを掲げる。

「すべてはカニパ○のお導き!さあ皆、カニパ○を崇めよ!讃えよ!そして美味しく食えーっ!」

奴隷達は、迷っているようだったが……その内、カニパ○を食べ始めた。

自由になった喜びと、状況の謎さ加減と、よく分からないながらもとりあえず大量にあるカニ○ン。

……奴隷たちにとって、この状況は、最終的にカニパ○コールを共にする程度にノリにノってお祭り騒ぎとなるには、十分すぎる程の下地であった。




尚、カ○パンは美味しいぞ教は偶像崇拝禁止である。だってカニパ○を讃えるのに○ニパンの石像作るとか意味わからねえよな……讃えるんだったら普通に美味しく食った方がいいと思う。

ただしイマジナリーカ○パンは禁止の限りではない。


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[良い点] うるせえ悔い改めろ好き
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