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113話

私はカニ○ンを国々の光とし、私の救いを地の果てまでもたらす者とする。

 次の天国へと進んでからは立ち止まることなく進んだ。

「死ね!」

「ちょ、ま、えええええええ!?」

 魔剣を宿したフライパンのパワーは凄まじい。運命を切るだけじゃない、このフライパン!天使を次々と手羽先に変換していく!

 最早俺の勢い、誰にも止められない。カニパ○ですら、俺を止められるかは怪しい。

 天使たちも俺のこの鬼気迫る無駄な疾走感に怖気づいたか、無闇に襲って来る事は無かった。どちらかというと、様子見をしている間に俺が通り過ぎていくから結局手を出せなかった、みたいな天使が多い。

「待て!タスク!待て!……ああ、邪魔だ!退け!」

「この手羽先は格好の足場」

「きゃー!斬らないで!踏まないでええええ!」

 俺の後ろを、カラン兵士長がやってくる。ユーディアさんも軽やかに、ぴょこぴょこと跳ねるように付いてくる。

 その間、カラン兵士長は天使を無造作に見えて繊細な剣技で薙ぎ払い、ユーディアさんは当たり前のように天使を踏んで足場にして、やってきている。

 そして俺は走る。走る。フライパンパワーを存分に発揮しながら、ひたすら天使たちを寄せ付けぬ走りっぷりを見せながら、ひたすらに走っていた。

「道はもう分かってるんだ、止まってられっかこの野郎!」

 この先の道はもうリンガさんから聞いているし、その前にカラン兵士長が天使を拷問にかけて聞き出してくれてもいる。

 よって俺達はもうこの先、立ち止まって考える必要が無いという事だ。後はエピまで一直線。走る走る走る。ただそれだけなのである!


「あああもう駄目だ!めんどくせえ!もういいですよね!?ね!?」

「ああもう好きにしろ!」

 途中から面倒になったので、祠はパンになった。

 そして祠の四方を固めて守っていた天使達を全員パンの中に閉じ込めてから石になった。

 俺達は祠の天井をパンにして入った。

「じゃあ起動するぞ!」

 リンガさんに教わっていた通りに魔法陣を起動して、緑色の光に包まれて俺達は次の天国へ移動。

 茶色っぽい光の魔法陣の上に移動したな、と思った瞬間、矢が降ってきた。

「来たぞ!撃て!」

「この先へ行かせるな!」

 が、とても悲しいことに、矢じりが全て光り輝く美しい石でできていたので、全部パンアローと化した。

 出落ちにも程がある。


 パンアローエンジェルズ共を全員パンに埋めたりパンで拘束したりして片付けたら、再び移動する。

 今度は武器を持った天使が大勢やって来たのだが、もうなりふり構ってはいられないので、惜しみなく天国を地形破壊しながら進むことにした。

「こうやってトンネル作っちまえば安全に移動できますね!」

「外の様子が分からないのが難点」

 つまり、そこら辺の地面からパンを生やして、俺達を囲むようにトンネル状の壁を作って伸ばしていき、俺達の進行に合わせてトンネルを伸ばしていく、という。

 パントンネルがパンであるのはほんの一瞬だ。一瞬後にはもう石になっている。

 一度、天使がパントンネルに突っ込んで突破しようとしてきたのだが、パン壁を通過途中にパン壁が石壁と化し、哀れ、石壁に突き刺さって身動きがとれない手羽先が1匹誕生した。

 その様子を見ていた他の天使達は無闇に突っ込んでくることはせず、その代わり、石壁を攻撃して砕いて、トンネル内に入ろうと頑張っている。

「まあ、外の様子は時々穴を開けて覗けばいいからな。……それより、大丈夫なのか、タスク。壁が破られそうだが」

「あ、大丈夫です。また伸ばしておきました」

 ……そしてこの壁は、無限に増えるのだ。

 石壁が壊れそうになったら、石壁からパンを伸ばして石壁の周りを覆って、新たな石壁とする。その石壁からもまたパンが生えて、石壁になる。

 ……無限に増えていく石壁だ。壊すのはさぞかし大変であろうと思われる。

「ちょっと外を覗いたら、進路がずれている。祠を通り過ぎた。ここから横道を作って伸ばせば丁度」

「あ、どうも。じゃあここから……」


 パントンネルを増設していく内に、なんとか祠に直結するトンネルができたので、そこから祠の中に入って中に居た天使をパンの中に閉じ込める。哀れ天使。手羽先のパン詰めとなって生きるが良い。

「さて。……次、だな。いよいよか」

 魔法陣の上に乗って、起動。

 強く強く輝く魔法陣の上に移動して、俺は、いよいよ……エピが居るという、天国に到達したのであった。




 そこは、美しい場所だった。

 地上のどんな花とも違う花が咲き乱れ、甘やかに薫る風に乗って花弁が舞う。

 青く明るく澄み渡る昼の空には月のような太陽のような天体が輝き、流れる雲が時折虹色に光沢を纏う。

 池を覗き込めば、そこには今までの天国だろうか、廻る星が色とりどりに煌めいていた。

 そして、池や花畑を越えた先。

「……あそこかな」

 青い空に映える白の城が、静かに佇んでいた。




「城には天使が大量に居るのだったな」

「ああ、聞きだした通りならそうですよね」

 というか、普通に考えればまあ、そうですよね。

 城ってぐらいなんだからまあ、城である。要塞である。敵の本丸であるはずである。そうでなくて何が城か。

「で、エピはあの中なんだろうなあ」

「侵入するしかない」

 そして俺達はこの城に今から侵入しなければならない訳だが、問題点が1つ。

「あれは石かな?あっ石じゃない!?嘘だろ!?」

 しかもこの城、石ではないらしい。パンにならない。なんてこった。あの城、白いけど何の素材でできてるんだ?ナタデココとか?


 ナタデココ城(仮)はナタデココ(仮)であるが故に、いつもの如くパンにして穴ぶち開けて突入、ってことができない。

 となれば、正規のルートである扉なり窓なりから入らなければならないのだが。

「時間をかければかける程、増援されるだろうからな、手短に済ませたいが」

「階層を上がるごとに天使が強くなっている。あまり交戦したくはない」

 この城全部ぶっ潰せるなら色々と速いのだが、それができない以上、何か策を講じる必要がある。

「……時に、カラン兵士長、ユーディアさん」

 そこで俺は、考えた。

「侵入するなら突入と潜入、どっちがお好みですか?」

「突入だな。スピード勝負が一番だ。潜入してモタモタしている暇はない。それに天使と戦うのも悪くはないだろう?」

「潜入。敵が集まって来たら却って時間がかかる。なら、ゆっくり探索してエピを探す方が確実」

 ……意見が割れた。

「タスクはどうだ?」

「タスクの意見を聞きたい」

 そして2人は俺を見てきた。

 なので俺は、俺の答えを述べる。

「俺はカニパ○でいきます」




 ということで、俺達は材料を用意した。

 まず、ユーディアさんがそこら辺を1人でフラフラしていた女の天使を仕留めた。そして仕留めたその天使から服を剥ぎ取る。躊躇いも戸惑いも一切無い、鮮やかな手腕であった。

 ズルズル、と天使と手羽先と服を引きずって物陰へ入っていったユーディアさんは、やがて、剥ぎ取った服に着替えて戻って来た。

「これでいいだろうか」

「……!」

 カラン兵士長が絶句しているが、それも致し方あるまい。

 ユーディアさんは、天使から剥ぎ取った白絹の衣を纏い、天国の亡者テイストな恰好になっていたのである。

 元々の色素の薄さと儚げな美貌も手伝って、透明感のある天上の美しさを演出していた。これは地獄の亡者には見えない!

「……本当に、天使、みたいだ……」

 カラン兵士長の様子も致し方無し、である。うん。まあ、この人はこの人で若干事情が違うが。

「これでいいだろうか」

「バッチリですよユーディアさん。じゃあ、血、つけますね」

 裾の長い服が落ち着かないのか、若干そわそわしているユーディアさんに後ろを向いてもらい……その背中に、べったりと。べったりと、血を付けた。

「じゃあ、ユーディアさんの方はよろしくお願いしますね、カラン兵士長」

「あ、ああ」

 やはりこちらもそわそわしているカラン兵士長はユーディアさんに断りを入れてから、軽々とユーディアさんを腕に担ぎ上げた。

「苦しくないか?」

「平気」

 ユーディアさんは担がれて、ぐったり、とする。

「タスク、私は捕虜に見えるだろうか」

「バッチリです。カラン兵士長がいつものキリッと具合になってくれさえすれば」

「……待ってくれ。もう少し待ってくれ。すまない。すぐに平常心に戻る」

 さて、カラン兵士長の平常心待ちの間に、俺はそこら辺の石を拾い上げて準備万端。

「大丈夫だ。もう戻った」

「そりゃよかったです。じゃあ、行きましょうか」

 そしてカラン兵士長がキリッとして、いつもの不敵な笑みを浮かべてくれたところで、俺達は城に向かって歩きはじめた。




「頼もう!」

 カラン兵士長が城の正面扉を蹴り開けるのに合わせて、俺は叫ぶ。

 中に居た天使たちは、俺達を見てざわめく。

 扉を蹴り開ける粗野で野蛮な男の腕の中に、翼が『あったであろう』位置を血に染めてぐったりとしている美しい女の天使が居るのだから。

「き、貴様らは!」

「その子をどうした!」

「ああ、もう用済みだからな。返してやる」

 カラン兵士長は、残忍な笑みを浮かべると、ユーディアさんを床に放った。

 どさり、と床に投げ落とされたユーディアさんは、床を這って、なんとか俺達から距離を取ろうと……つまり、逃げるように、天使たちに向かっていく。

「た、すけ……」

 か細くかすれた声で助けを求められた天使たちは、ユーディアさんを警戒しもしない。ただ、唖然と、茫然として……ユーディアさんよりも、俺を見ていた。

 俺の手にはカ○パン。

 ○ニパンである。

 何故か、天使たちがこぞって嫌う、カニパ○である。

「……俺は、切戸匡」

 カ○パンを次々に増やしながら、俺は天使たちへと一歩踏み出した。

 天使たちが、後ずさる。

 俺がもう一歩進む。

 ……そして。

「この世界に!カニパ○を布教しにやって来た!」

 俺が盛大にカニパ○をまき散らすと同時に、戦闘と逃走が始まった。


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