戦記
ある山の神について知っているだろうか。
その神は小さな村にある、一番高い山に住んでいるという言い伝えが存在する。
その神は昔、村の厄災と言われる大嵐の日に目を覚まし、この小さな村ハーミットを救ったと言われている。
この出来事から、この村では年に一度の神に祈りを捧げるためのお祭りが伝統行事として行われているのだ。
7月を巡った真夏日、とある一台の赤い車が森の中を駆け巡っていた。
その車が走っている道路は、1つの車が通るのがやっとな細い道路であり、あたりは森という森が目の前に広がっていて視界に緑しか入ってこない。いつの間にか迷子になっていたとしても誰も気づかないだろう。それほどまでに森という緑が周りを隠している。
赤い車は、その誰も通りそうにない道を勢いよく進んでおり、60キロのスピードで一直線に走っていた。
その車の後ろ座席に座っている、14歳の少年が窓の外を眠そうに目を細めながら何もない森を眺めていた。
「ねみーーー」
森という森が永遠に続いており、窓から見える視界に飽きた男の子はそうぼやいた。少年の名前の名前は、美濃憲司。
「母さん、まだ着かねーの?」
「もうすぐ着くから大人しときなさい」
憲司の質問に答えた人は、息子がいると思えないほど若々しい女の人であり憲司の母親である。美濃京子だ 。
京子は夏らしく涼しそうな白色のワンピースを着ている。久しぶりの里帰りにテンションが上がっているみたいだった。
憲司たちは、いまハーミットに向かっている。
なぜハーミットに向かっているのかというと、ハーミットは憲司の親である母さんの生まれ育った村であり、故郷だからだ。
そして年に一度ある神をたたえる祭り竜人祭が行われるため憲司は嫌々しく母さんに連れてこられ、ハーミットに向かっていた。
そう、その歴史ある出来事は、いずれ竜人祭と呼ばれるようになっていた。竜によって助けられた村、そして、人が竜を讃え祈りを捧げる祭り。その2つ竜と人が交わりつながりを持っていることからこの名に呼ばれるようになったとあるがその真相は誰も知らない。
車を走り続けてから数時間が経った……。
「起きて、憲司!着いたわよ……起きなさい!」
耳の奥底から微かに声が聞こえ、ゆっくりと瞼を開けた。
そこには、車のドアを開けた母親がこちらを見ている姿があった。
「あれ、俺…いつの間に寝てたんだろ……」
いつ寝てしまったか記憶がない憲司は眠たそうな目をしながら京子を見つめている。
「早く行くわよ。ほら、荷物を持っておばあちゃんに挨拶して!」
京子はぐっすり眠っていた憲司の馬鹿そうな顔を見て呆れていた。
母さんの言葉から目的地に着いたことを知った憲司は車の後ろ座席で寝ていた体を頑張って起こした。
「あぁ、着いたんだ。結構早かったな」
「何をいってるの、あなたが寝てから三時間ぐらい経ってるのよ。先行くからね。あと、車の鍵閉めといて。」
そういって京子は憲司に車の鍵を投げ渡し先に歩き始めた。
「三時間!?俺そんなに眠っていたの!?…だから、こんなに頭が動いてないわけね」
憲司は苦笑いし、眠たいのを我慢しながら車から降りた。
車から降りた瞬間、強い風が吹き荒れる。
髪がブワァーッと跳ね上がり憲司は腕を組みながら一度目をつぶった。風がおさまり、目を開けると視界に特に変わった様子はない。
何故か憲司は毎回この村に来ると強い風が襲いかかってきていた。
それがなぜなのかは、わからない。昔は気にしていたものの今は慣れてしまい特に気にしていない。
しかもこの強い風は母さん達には気付かなかった。小さい頃に一度、母さん達に聞いて見たところ何を言ってるの?と馬鹿にされ笑われてしまった。
そこで俺はもう親に風のことを言わなくなった。
だがその時、ばあちゃんだけは俺の質問に答えてくれた。その答えは「もしかしたらこの村の神様の仕業かもねぇ〜」とつぶやいていた。
神様と言われても、俺は神様を信じていない。ばあちゃんの答えもあてにならなく、考えても答えが出てこなく、馬鹿らしくなり気にすることをやめたのだ。
そして、俺は車の荷物を取り出し鍵を閉めた後、おばあちゃんの家と周りの景色を見た。
「やっぱりこの村ってすごいよなぁー」
なんと言えばいいだろうか。どこの景色も圧巻するものばかりなのである。
まず、おばあちゃんの家よくある古い家だがとてもでかい。小さい時に見たときはお城ぐらいのでかさと思ったぐらいだ。それほどまでにでかく和風の家だった。東京という都会に住んでいる俺の家はマンションを借りているためそのでかさが何度来ても慣れることはないのだ。
そして、あたりの景色は山に囲まれており、おばあちゃんの家と同じぐらいの家が何軒か存在しており、コンビニなどやスーパーなどがない村だった。本当に、草と田んぼと山と家としかないと言えないぐらいの田舎であった。
憲司はハーミットの景色を眺めた後、荷物を持っておばあちゃんの玄関まで歩いた。
玄関に着くと、玄関の横にスイカが冷やしておいてあった。
「冷やして食うのかな?」
憲司は舌舐めずりしてにやけていた
「スイカは後できってやるかさい。とりあえず荷物置いてゆっくりしとき」
いつの間にか、おばあちゃんが憲司の後ろに立っていた。
「うわっ!…おばあちゃん脅かさないでくれよ」
「心臓飛び出るところだったし」
シワをしわくちゃにしながらにやにやとおばあちゃんは笑っていた。
憲司は家の中に入ってリビングのところに荷物を置いた。
久々におばあちゃんの部屋に来たので、憲司は少し部屋を回ることにした。おばあちゃんの部屋は二階建だ。とりあえず、一階の部屋を歩きながら見ていると少し古い扉を見つけた。
「あれっ?こんな部屋あったっけ?」
違和感しかない扉に気になり扉を開けようとした。だが、その扉は何年も前に開けていないのか、硬く開こうとしない。
「ガタッガタッ」
憲司は強く扉を戸をひねりいくら力を入れても開かなかった。
「いい加減に開きやがれっ!」
憲司はなかなか開かない扉に少し苛立ち、扉を壊すように思いっきり力を入れ開けようとした。
「ガチャ」
そうすると突然扉は開き、開いた反動で憲司は部屋に突っ込んでいく形でこけてしまった。
「いてて…なんで急に開いたんだ?」
倒れたまま憲司は呟き、周りを見渡した。
そこは6畳ぐらいの畳の部屋だった。周りには古い本棚があり、ぎっしりと本が詰め込まれている。電気はついてなく、カーテンもかかっており光が遮断されていた。
見るからに使ってない部屋であり、昼間だったから良かったものの夜は真っ暗で何も見えないような部屋だった。
憲司は起き上がった。やはり何年も昔から入られていない部屋は埃がひどか、汚い空気が充満していた。
すぐ部屋を出ようとした憲司は目の前の一冊の本に目を奪われた。
『ハーミットの伝説』
「なんだ・・・これ・・・?」
憲司は目を奪われた本をずっと見つめていた・・。