下準備
「さて、二人とも最初の命令を与えよう......とその前にお前の名前を聞いていなかったな」
「まだ名乗っていなかったな俺はバロンだ。それで命令はなんだアルト様」
「私に出来る事なのかしら?アルト様?」
「エイミー出来るかじゃない、やるんだ。これは必要な事だ......さて命令の内容だがエイミーにはこの国の兵を殺しに行ってもらう、どんな形でも構わない最悪死なずとも戦うことができないようにして欲しい。そしてバロンは獣人国に行ってもらう、ばれずに侵入し現状を報告しろ俺は近いうちに獣人国に向かう」
「アルト様!私を傍に置いてくれないの!?」
「エイミー俺が何時そんなこと言った、まあずっと傍に置くことはできないがな。これは命令だ」
「ぶー!もう分かったわよ。ま、アルト様の配下になったのだから何でもやるわ。抗おうなんて思わないし、それでやり方は自由でいいのよね?」
「やり方は任せる、騒ぎになることは避けられんだろうが死なず情報を漏らさず行え。それと朝までには戻ってこい」
「分かったわ、なら今から行ってくるわ。夜の方がいいもの♥」
エイミーはそう言って窓から飛んで町に消えていった。
「それで俺は獣人国でどんな情報を集めてくればいい?情報を聞き出すのは得意だからな色々聞きだせるぞ」
「ほう、それは良いこと聞いたな。そうだな獣人国の戦力と情勢、町の状況エルフの有無を調べてほしい。後は自分で考えろ、情報は力だ些細な事でも構わん。報告するときは心の中で俺を呼べ配下となったものはそれで俺と話すことが出来る」
「分かった、なら俺も直ぐに向かうとしよう。良い報告を期待していてくれアルト様」
バロンも窓から去っていった。
さて、命令は与えた。エイミー達が命令を終えるまでには、ミランダたちにどう説明するか考えておかなくてはな。まあ手っ取り早いのはあいつらに襲わせて打ち負かし奴隷にするという手段だ。あいつらに口裏を合わせさせればこれが一番自然な方法だとは思う。
まあさておき、これで配下が4人となったわけだが配下に出来る人数は決まっているのだろうか、特に変わった様子はない。という事は上限はないのか?上限がもしあるとしたら慎重に配下を選んでいかなくてはな、なるべく優秀な駒が必要だ。目的を達成するためにも何より俺が生きるために。
俺は予定を確認しながらエイミーの帰りを待った。そして暫くしてエイミーが帰って来た。
「あら残念。寝ていたら襲っちゃおうと思っていたのに......ま、それは後のお楽しみに取っておくわ♥アルト様、命令通り何人か殺してきたわよ」
「ほう、さすがサキュバスだな。それで具体的な人数は?お前の姿を見た者は居ないんだよな?」
「ええ、私を見た者は殺した人間だけよ。人数で言えば7人くらいかしら」
7人もか!こいつは使えるな思った以上の成果だ、この様子なら今後もやってもらうとしよう。
「大したものだ、褒めてやろう良くやったエイミー。それでお前の力は一体なんだ?どうやって7人を殺した」
「あら嬉しいアルト様に褒められるなんてね。方法だけど簡単よ、私に魅了されているときにサクッと殺るだけ。私達サキュバスは異性を魅了させることが出来るのよ。その力を使ってサキュバスは良い男を見つけたら人間の姿で近寄って魅了してから搾りつくすのよ♥」
ほう、人間の姿で近寄って魅了するか......うん?人間の姿?......人間の姿だと!?おいちょっと待てサキュバスは人間の姿になれるのか!?
「お前、人間の姿になれるのか。ならこれからは人間の姿で俺に付いてこい、その方が面倒ごとを避けられる」
「分かったわ、それでなんだけど。ご褒美は無いのかしら?出来ればアルト様に色々されたいわ♥」
何を言ってんだこいつは?命令一つこなした位で褒美なんてやれるかっての。それにそんな風に俺を見るな、魅了されてはいないだろうが変な気分になってくる。
「......褒美は考えておこう。お前が俺にとって使える配下となればお前の望み通りにしてやらなくもない」
「それは本当!?なら私ももっと頑張るわ♥......それにアルト様にはどうやら魅了が効かないようだから私からは襲えそうにないのよね。うっかり殺されちゃったら嫌だし」
こいつ!やっぱり力使っていやがったな!時々思うが服従の能力はしっかり発動してるんだろうか?最初の方は人形のように俺に従っていたが使い始めてからは、自我もあり普通の状態で支配下に置けている。それはそれで自然な形で支配できるのだからいいが、少し自由にさせすぎか?......まあしっかり俺の命令に従うかは後であいつを使って実験してみるか、あいつが生きていればだけど。
「お前の魅了は十分使える能力だが、俺が命令した時だけにしろ。お前の正体がばれる可能性だってある、バロンにも後で言っておくが俺は配下であろうが何であろうと使えないと判断したらすぐさま切り捨てるからな。今後の行動には気を付けろ」
「わ、分かったわ気を付ける。逆らったりなんかしないわ、私は貴方の配下貴方の役に立って見せるわ」
俺はエイミーを人間の姿にさせ仮眠をとらせた。サキュバスもどうやら睡眠は必要なようだ。俺も少しだけ仮眠をとりミランダ達が起きる前に準備をしてミランダ達が起きるのを待った。
朝になりミランダ達が俺の部屋に来る前に俺はエイミーを起こし、バロンに言った俺との会話の件を説明し部屋を出るように命令した。エイミーを自然な形で同行させる件については、こいつは人間の姿になることができるから新しい奴隷として同行させることが一番手っ取り早いのでは?と俺の中で結論がでた。エイミーも問題ないようだから、しっかりと奴隷としてふるまってもらうとしよう。
少しして、部屋の扉が開かれた。
「......失礼します......あ、起きていたのですねアルト様」
「おはようなの、お兄ちゃん」
「ああ、二人ともおはよう。それと2人に紹介する人が居てな、準備が出来ているなら下に来てもらえるか?」
「「はい(なの)」」
ミランダは少し困惑した顔でカナンは余り興味なさそうな顔をして答えた。
俺達は宿屋の一回に向かい、俺は予め待機させておいたエイミーの隣に行き紹介した。
「こいつが新しい奴隷のエイミーだ」
「初めまして、エイミーよ。アルト様ったらこんな可愛らしい子たちも奴隷にしていたなんていけない人ね♥」
「......新しい奴隷。私が居るのに......アルト様のバカ。」
「よろしくなの!」
ミランダは声が小さくてよく聞こえないがまあ様子を見るに反対ではなさそうだから良しとするか。カナンは相変わらず元気だな、興味なさそうな顔をしていたが案外気になっていたのかもな。
「さて、紹介も済んだことだ。今日は問題を起こさなければ自由に過ごしていいぞ。近いうちにこの国を出て獣人国に向かう。俺は少し気になることがあるからな俺に気にせず過ごせ」
「ですが、アルト様。私はアルト様の奴隷です、自由に過ごすと言うのであればアルト様の傍に居たいです」
「ミランダ、それは駄目だ。俺は少し一人でやることがある、これは命令だ。エイミーもカナンもいいな?」
「私は問題ないわ、少し見ていきたい場所もあるから」
「私は行くところない、宿屋に居る」
「ですが、私は!......分かりました。私はアンナちゃんの手伝いに行きたいと思います」
3人はそれぞれの目的の場所に向かった。
さてと、あいつらは行ったか。これでここでの下準備ができる。獣人国に行くまでにやることを終わらせておかなくちゃな。最初ははレンの所に行くとするか、俺の目的の為に利用させてもらうとしよう。




