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王国の有様

俺達は、王国に着いた。そこは如何にも戦いの後の風景が広がっていた。

この光景を見て、ミランダは口に手を当て呆然として見ている。カナンは特に興味なさそうにこの光景を見ていた。


2人の反応の差が、真逆と言っていいほど違うな。まあ仕方ないだろうミランダにとってはここには友達と言える人が居るがカナンにとっては友達が居るわけでもないし、ましてや人間が好きじゃないと言っていたからな。


「どうして、こんな事に......は!!アンナちゃん!!」


そう言って、ミランダは走り出していった。


俺は追いかけず、その背中を見ていた。


「お兄ちゃん、追いかけなくていいの?」


「ああ、行くところは知っているし俺は辺りを見て回りたい」


「分かったの、なら私はお兄ちゃんに付いていくの」


俺とカナンはミランダを追いかけず辺りを見て回ることにした。

少し歩いても、見えるのは壊れた建物や散乱した食べ物、血痕、怪我をして座り込んでいる国民、無事に残った建物が視界に広がっていた。


「これは、酷いね~」


「お兄ちゃん、本当に思ってるの?」


「......勿論だとも。思ってるさ、出来る事なら助けてあげたいとも思ってる」


「私にはそう思わないの、お兄ちゃんのここの人を見る目が助けてあげたいと思ってる目じゃないの」


鋭いなこいつ。まあ助けようなんて一ミリも思ってないから仕方ない。無暗に助けたいなんて言うんじゃなかったな、反省反省。それにこれの原因は俺だからね、そう仕向けたしこの結果は俺にとって嬉しい事なんだよ、嬉しさを我慢している俺を褒めてほしいくらいだ。


「いいか、軽い感じで助けたいなんて言った俺も悪かったが、助けたいと思っても助けられないこともあるんだ、人間はそこまで起用に動くことはできない。何かを達成するには何かを捨てなきゃいけない。今回は捨てる対象がここの現状と国民だっただけさ。まあ難しいだろうが、簡単に結果だけを言ってしまえば俺は助けないという事だ」


「分かったの、それに私も助けようなんて思ってないの。ただお兄ちゃんの事知りたいだけなの」


「そうかい、なら頑張って俺の事知ってみな」


「そうするの」


俺達はその後も辺りを見渡し、ミランダが向かったであろうギルドに足を運んだ。そこには怪我をした人達や見た事のある顔の奴もいた。


「アルト様ではありませんか。お久しぶりです、お元気でしたか?」


「アーロンじゃないか、久しぶりだな。お前は無事だったんだな。さすがだ」


「いえいえ、魔獣たちは襲ってきませんでしたし、動きを見れば食料などを狙っていたようなのでこちらから襲わなければ襲われませんでしたよ、魔獣たちの動きを見るにあれは誰かの命令ですね。悪魔の仕業か......それとも」


アーロンは俺を見てそう言った。


お前その目やめろ、考えが読まれてる気がして不安になる。やはり排除しておいた方がいいか?いやしかし、こいつは使えるからな。従属するのも一つの手だがそれもなんだかな。

くそ、今の所こいつの扱いが一番厄介だ。


「さあどうだろうな、俺は今日王国に久しぶりに戻って来て何があったかは知らない。辺りを見てきたが相当破壊されたようだ。痛い所を付く破壊の仕方だ、相手の悪魔は腕が経つようだな。まあアーロンの言う通り悪魔が命令したのかもしれないし、他の奴かもしれない。はたまた襲ってきた魔獣が優秀な魔獣だったのかもしれない。なんにせよ今は立て直すことが先決だ」


「......そうですね、アルト様の言う通りです。」


「アルト様!こっちです!みんな無事でした!」


「カナン、俺の奴隷として紹介するから合わせてくれ」


「うん、分かったの。お兄ちゃん」


ミランダに呼ばれ、俺はカナンを連れて向かった。


ほっとしたぜ、二人とも生きていたか。こいつらにはしっかり生きて情報を入手してもらわなくちゃいけないからな。まあどっちか生きていれば俺はそれで構わんが、その場合面倒な事になるのは確実。なら二人とも生かしておいた方が今後の為だ。出来れば優秀な駒が欲しい所だ、二人を守らせるためのな。


「久しぶりだな、アンナにエマ。無事で何よりだ」


「お久しぶりです!アルトさん!また会えて、嬉しいです!」


「あら~アルト君じゃない。久しぶりね、元気してたかしら?」


「二人とも、無事で良かったよ~。私心配しちゃったよ」


「心配してくれて、ありがとうミランダちゃん」


「アルト君、その子は?」


「こいつは、俺の新しい奴隷。カナンだ」


「......よろしくなの」


「「新しい、奴隷」」


2人そろって顔を引きつらせてそう言った。


「あわわわ、どうしよう。ミランダちゃん。もしかしてまた増えちゃったの?」


「いや、それはどうかな?まだ分からないよ」


「全く、アルト君は......。」


「......?」


カナンは女たち三人の様子を不思議そうに見つめていた。


「まあ、そう言うことだ。なんにせよ、二人とも無事で良かった。早速で悪いんだがどうしてこの状況になったのか詳しく教えて欲しい」


「それなら、私がお話ししましょう。アルト様」


後ろからアーロンがそう言って近づいてきた。


こえーよ。武器抜くところだったじゃねえか。てか、盗み聞きかこの野郎。


「アーロンか、なら詳しく教えてくれ」


「私も教えられることは教えるわ、アルト君」


「頼む」


そうして、二人がこの状況を説明してくれた。



・・・・・・・・・・・・。


「「と、言うわけです(わけなのよ)」」


「......。」


これは、いいぞ。外の有様を見て中々に破壊されていると感じたが、状況は俺が思ったより酷いらしい。二人が言うには、死者は冒険者や国の兵隊など戦いを挑んだものが多いようだ。

ただの国民が多く生き残ってるのを見るとアーロンの言った通りというわけだ。

うむ、素晴らしい。俺の目的はほぼ果たされたと言っていいだろう。これで王国の力を削げた、まあ出来る事なら王国に残ったエレナとルンの二人には死んでほしかったところだが。さすがは勇者の仲間といったところか。これに関してはまだ打つ手は思いつかないが王国がこの状態ならばそうは動けまい。あとは勇者達、魔獣討伐部隊が帰ってくるのを待って今後の動きを決めよう。ク、ハハハハハハハ!!!!!

......ふう、平常心平常心っと。


「そうか、冒険者達もやられたのか。余り関りがなかったとはいえ同業者がなくなるのは悲しいな」


「そうなのよ、今回の件でCランクの冒険者はもちろんBランクの冒険者まで魔獣たちによって殺されてしまったわ」


「Bランクの冒険者もか?ならその上のAやSランク冒険者は?」


「現在Aランクの冒険者は8人いるのだけれど、今は王国に居なくて生死がつかめているのは5人だけなの残りの3人は恐らくはもう駄目でしょう。Aランク冒険者から上の人はギルドにとって貴重な人材、だから居場所は分からなくても生きていればギルドにはその人の水晶があって光っているの。だけれど、3人の水晶は......」


「光っていないか」


「そうなの、Sランクの冒険者はアルト君も知ってると思うけど。ただ一人勇者様だけよ」


「さすがは、我らが勇者様だな」


「ええ、アルト様の言う通り我らの勇者様です。なぜあのような力を持っているのか私としても気になるところです」


「ああ、俺も同感だ。あれ程の力を持っていれば何でもできるだろうに」


女神に貰った力をこの異世界の為に使ってる。まあ普通の事なんだろうな、だが俺は違うこの世界を救うのではなく......俺は......。


「アルトさん、勇者様達が帰って来たよう......きゃぁ!!」


「だ、大丈夫!?アンナちゃん」


アンナがそう言ってこちらに走ってきたが盛大にこけた、しかも何もない所でだ。隣で心配そうに見つめるミランダとこけて恥ずかしがっているアンナの二人を見て、少しだけ懐かしさを感じた。


(ドジっ子アンナ再誕)


俺達はギルドを出て、勇者が来るであろう広場に向かうのだった


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