心配しすぎじゃないか?
「それで、その話は本当か?本当なら、ヴリトラって悪魔は相当脳筋らしい。」
「脳筋?あなたが何を言ってるのか分からないけど、本当なのよ。全く何を考えてるのかしら?......いえ、何も考えていなさそうね。作戦が作戦だもの」
「そうか?俺は面白いと感じたがな派手でいいじゃないか。魔獣を自爆させるなんて一番手っ取り早く大量の人間を殺す事が出来る」
「......あなた、何か嬉しそうね。姿は見えないけど声を聴く限りでは作戦を成功させたいようにも聞こえるわ。あなたは人間でしょ?負けたら困るのはあなた達なのに。」
「それはどうかな。俺の事はいい、どの道ヴリトラって悪魔を殺す事は決定してる後はこっちが好きなようにやらせてもらう。それでも構わんだろう?」
「ええ、ヴリトラを殺してくれれば何でもいいわ。......ふふ、あなた本当に面白いわね。これが終わったらあなたを探してお礼をしてあげようかしら。もちろんこの体を使ってね」
「来ても構わんが、俺の姿を見てもいないのに探せないだろう?」
「あら?私を舐めないで頂戴。あなたの匂いはもう覚えたわ、これで探し当ててあげるわよ。私はお気に入りの男を逃したりなんかしないのよ?まあ、あなたが初めてだけどね」
匂いを覚えただと?試してなかったが匂いは消せないのか?くそ、まだまだ不完全か。
「舐めてなんかないさ、まあ何でもいい。本当に探し当てたらお礼を貰うとしよう。精々俺を見つけてみろ」
「言ったわね!必ず見つけ出してあげるんだから!」
俺は、サキュバスから情報を入手し、魔獣の群れから離れた所に向かい二人を待った。
夕暮れ時になって暫くたって二人が俺の下にやって来た。
「アルト様!......無事でなによりです。本当に」
「お兄ちゃんは強いから大丈夫なの」
「カナンの言う通りだ、俺は大丈夫だ」
「もちろん信じていました。ですが心配するのも奴隷である私の役目です」
「そうか、なら今後もそうしてくれ…早速だが獣人国に行く前にここから北の方角にある魔獣の指揮官である悪魔を叩く。あまり時間はない、すぐ出発するぞ。詳しい話は後でする」
「ま、待ってください!アルト様!」
「分かったの、お兄ちゃんに従う」
俺は二人の返答を背中で聞きながらヴリトラの居る場所を目指した。
その道中俺は目的地に向かう足を止めずにジェイクに連絡を取った。
(ジェイク、聞こえるか?)
(聞こえておりますアルト様。今は宿屋でミウといっしょに食事をしています)
(そうか、食事中すまんが、作戦について何だが気を付けろ。魔獣は500体は居るからな)
(500ですか!?なら、報告を......)
(報告はするな、これは命令だ)
(しかし、500体はいくら勇者といえど......)
(言わなかったな、俺は勇者がどうなろうと知った事じゃない......いいかジェイク、命令だ。この作戦を生き残って見せろ、どんな事があろうとな。)
(分かり、ました。その命令必ず果たして見せます)
(ああ、期待している)
俺は通信を切って歩く足を速めた。
今はもう辺りが暗くなり、夜の森を進むのは危ないとカナンが忠告したので俺はそれに同意してカナンの力で作った木の家で夜を過ごすことにした。
「カナン、こんなことが出来るならもっと早くいってほしかったな」
「ごめんなの、星が綺麗だったから見るために作らなかったの」
「確かに、夜の森で見る星は綺麗でしたね。感動しました」
「まあ、怒ってるわけではないからな気にしなくていい......では、北の方角に向かう訳を教えよう」
二人は黙って俺を見た。
「魔獣の指揮官である、ヴリトラと言う悪魔を殺すためだ」
「「!?」」
二人は驚いた顔を見せた。なぜ俺がそんなことを知っているのか?とでも言いたげな顔をしている。まあ当然の反応だな
「お兄ちゃんは、なぜそんなこと知っているの?」
案の定、カナンが聞いてきた。
「それはな、カナン。悪魔から聞いたから」
「「!?」」
これまた、二人は驚いた顔をした。
「色々聞きたいこともありますが、悪魔と会って大丈夫だったのですか?」
「大丈夫だからこうしてお前達に話しているのだろう?」
「そうですね、変な事言いました。すみません」
「謝ることでもないだろう、心配するのも奴隷の役目なんだろう?」
「......!はい!その通りですアルト様」
「それでお兄ちゃん、悪魔に会ってどうだったの?」
「情報を与える代わりにヴリトラって悪魔を殺して欲しいって取引を持ち掛けられたから俺は取引応じて情報を手に入れた。だからヴリトラを殺すために北の方角に向かってる」
「取引をしたのですか!?アルト様!?」
「ああ取引をした。情報は力だ、時に圧倒的な力を持った敵でも情報を持っていることで倒すこともできる。そう考えれば情報は多ければ多いほど好ましい」
「そうですね、それには同意しますがアルト様の身に何か起これば私は......」
「姫様、心配しすぎなの一体どうしたの?」
「そうだな、最近のお前は心配しすぎている。何かあるなら話せ」
「......夢を見るのです。アルト様が居なくなる夢を、呼んでも呼んでもアルト様は歩みを止めてくれなくて手を伸ばしても掴めない。そして消えて行ってしまうのです。そんな夢を最近はよく見るのです」
「......俺は何処にも行かない......なんて言ってやれな、いすまないな。これからの事は分からないが今はお前達からは消えわしないさ。少なくともエルフの国が出来るまではな」
「お兄ちゃんもこう言ってるの、私達は信じるの」
「......ええ、そうですね。カナンちゃん」
「さて、この話は終わりだ。最後にヴリトラを殺す時の段取りを話しておこう。俺がヴリトラを殺す、お前達二人には俺の逃げ道を確保しておいてほしい。指揮官が居なくなれば混乱が起こるだろう、その混乱に乗じてさっさと逃げる、だから安全な逃げ道を確保してほしい」
「分かりました、本当は私も一緒にと言いたいところですが足手まといになるのが目に目えてますので、我慢しようと思います」
「私も戦いたいの、でも姫様の言うことも正しいの。ならお兄ちゃんに従う」
「決まりだ、なら話は終わりだ。今日はもう寝ろ明日は早いからな」
「はい(なの)」
俺達は明日に備え就寝した




