ジェイクの選択
(私は......。)
少しの沈黙の後、ジェイクは口を開いた。
(私は、望みません。このままアルト様の配下として生きていきます。)
(それがお前の選択か?)
(はい、私はアルト様には一生をかけてでもお返しできるか分からないほどの恩があります。この先もアルト様に従います。)
(そうか、お前がそう望むなら俺の為に働いてもらう。)
(はい、アルト様。)
(なら、お前には少しだけ俺の事を話しておいておこう。)
(アルト様の事ですか?)
(そうだ、俺はなジェイク。他人を信用しない、もちろん配下であるお前の事も信用しない、俺が信じる者は自分自身だけだ。これははっきり言っておく。俺の不利益になるなら誰だって切り捨てる、例え配下であるお前であってもだ。これを踏まえてお前には俺の配下として動いてもらう。)
(はい、構いません。アルト様が私を信用していないとしても私のアルト様の恩がなくなることは無く、私の忠誠も揺るぎません。アルト様のご期待に沿えるよう頑張ります。)
(ああ、期待している。)
(最後に一ついいですか?)
(なんだ、言ってみろ)
(ありがとうございます。では先ほど商人の服従を解きましたが大丈夫なのですか?あの者がアルト様の事を誰かに喋ったら何が起こるか分かりません。)
(ああ、それについてか。大丈夫だ俺の服従を解かれたものは服従期間の記憶などは失われるからな。俺の事を喋ることはないさ。)
(なら心配いりませんね…では私はこれで失礼します。ミウが待っていますので)
(ああ、また変わったことがあれば報告してくれ)
(はい、分かりました。アルト様)
俺は通信を切った。
さてと、作戦も聞いたことだしこちらも動くとしよう。魔王軍の動きが気になるところだが今はどうしているのだろうか?ジェイクが言っていた魔獣は俺が命令して王国に向かわせた魔獣なのか、それとも...。いや、どっちでも構わないか。勇者を殺したいとは思うがすぐに邪魔になるわけでもない、まずは勇者の働きぶりを観察するとしよう。
「アルト様、聞いていますか?ここを離れないと。」
「ああ、すまんな。少し考え事をしていた。それで何の話だ?」
「ここに、魔獣が近づいてるの。それも凄い数。」
「なのでここを離れましょう、ここで死ぬわけにはいきません。」
「何?魔獣だと!それは本当か?なら俺は魔獣を見ておきたい。お前達は魔獣に出くわさないように行動しておいてほしい。後で合流する、ミランダ。お前なら俺の居場所が感じ取れるはずだ、夕暮れ時になったら俺の所に来い。」
「そんな、危険です!私達も一緒に。」
「それは、駄目だ。万が一にも死ぬことがあっては困る。お前達は連れて行かない、これは命令だ。」
「姫様、お兄ちゃんの言う事が正しい。姫様が死んじゃったら困る。それいお兄ちゃんは死なないの。強いから」
「カナンの言う通りだ、俺は死なないし戦うわけじゃない、様子を見るだけだ。」
「......ですが!......分かりました。夕暮れ時にアルト様の所に向かいます。生きていてください」
俺は、二人と別行動し魔獣の動きを確認するべく魔獣の反応があった場所に向かった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!
音は周りに響き魔獣の姿も確認できた。
俺は魔獣の反応があった場所に来て、魔獣の数に驚いた。軽く500体は居るぞ?魔王が死んでもまだ戦力はあるという事か。これはジェイクが言っていた魔獣は俺が送った魔獣だろうな、この数の魔獣が近づいていたらもっと慌てているはずだ。
「これは、勇者も終わりか?俺のとった行動でこのような事態が起こるなんてな。ふふ、面白い。さて、どうする?王国の魔術師達」
俺は力を使い俺の存在を認識できないようにして、魔獣に近づいた。すると、声が聞こえてきた。
「全く、なんで私が前線に行かなくちゃいけないのよ、もう。それに魔獣しかいないし全然高ぶらないわ。まあ王国でいい男探せばいいだけよね。よし、ちゃっちゃと終わらせて楽しませてもらおっと。」
魔獣の足音でうまく聞こえないが、どうやらこの魔獣部隊の小隊長的なポジションのようだ。まあ他と姿が全く違うことから位が上の者ってのはすぐ分かる。というか、あれってよくゲームで出てくるような?何だっけ?......そうだ!サキュバスだ。それに男を魅了する二つの果実がぶら下がってる。ふむ、全くもって怪しからん果実だ。
「さて、このまま様子を見るとしよう。特にあのサキュバス(?)を見張っておこう。情報が聞こえてくるかもしれないしな。」
その後俺はサキュバスを追って魔獣の群れに付いていった。
俺は車の偉大さを改めてこっちに来て思い知った。魔獣の動きが早くて付いていくのが大変だ。幸いサキュバス(?)は呑気に飛んでいたから何とかなっているが......俺も飛びたいな。




