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戦いの予兆

俺と男の戦いは、最初は俺が押されていたものの、今は逆転している。


「くそ、なぜだ!?なぜ、俺が押される!たかが冒険者の新人野郎に。俺は数少ないBランク冒険者だぞ!」


「さあ、なぜだろうな?」


確かに剣の腕前ではお前の方が上だ。俺の短剣ではかなり接近しないと傷を付けられないのが難点だ。接近しようとしても男が剣で切り付けてくる、正直不利なのは俺だ。だがなお前の動きは単調すぎだ。大体パターンは分かった、昔から良く人を観察してたお陰で細かいところまで見えるようになった。こいつの癖も分かった、そうなれば俺が形勢逆転するのは時間の問題だ。


「さあ、終わりにしよう。俺はこれから行くところがあるんでね。お前みたいなモブ相手にいつまでも時間をかけるわけにはいかない」


「くそがぁぁぁぁ!!!」


男は俺に突っ込んできた。男が攻撃するときに必ず構えより剣が上がる、致命的な癖だな。腹回りががら空きだぜ。


「グハ!!」


男は血を流し倒れた、さてとどめを刺すとしよう。その前に聞くことがある。


「なあ、なんでこんな騒ぎを起こしたんだ?隠密に行動すれば簡単に手に入れたはずだ。」


「......そ、れは......」


「!!!そうか、もうお前に用はない。じゃあな」


俺は、背中から心臓の所を奴の剣で刺し息の根を止めた。



「「「......。」」」


「よし、エマ。処理は頼んでいいか?」


「......え、ええ。分かったわ。それと、ありがとう。助けてくれて」


「構わないさ、アンナも無事か?」


「は、はい。大丈夫ですアルトさん。助かりました」


「そうか......ミランダ。二人に挨拶してこい。先に門の方に行っている、エマにアンナ。俺達は王国を出る世話になったな。」


俺は、二人の返事を聞かずギルドを出て、門の方に向かった。




「あ、行っちゃったわね。話かけられなかったわね」


「はい、雰囲気が少し怖かったです。あんな優しい方があんな怖い顔するなんて」


「それは、私も思った、アルト様は、時々凄く怖い顔をするのよね。でも、私はそれでも構わない。あの人が何を考えていても、私を信用していないとしても。」


「そうね、アルト君は他人を信用してないように見えるわ。優しい事には変わりないのだけれどね。」


「はい、私もたとえどんな人でも、私の気持ちに変わりありません。ミランダちゃん、負けないよ!いずれこの気持ちをアルトさんに伝えるから。」


「うん、私も負けないよ!必ず振り向かせて見せるから!」


「ふふ、二人とも勝つとか負けるとか考えなくてもいい方法があるじゃない。みんなでアルト君の彼女になればいいのよ」


「あ、そうですね!エマさん!......え、皆でってもしかしてエマさんも!?」


「ええ、そうよ。私も好きよ、あんないい男、なかなかいないもの。戦ってる姿私にはすごくカッコよく見えたしね。」


「そうですね、エマ先輩、私も思いました。アルトさんカッコよかったです......ちょっと怖かったけですけど」


「......この様子だと、王国を出た後もまだまだ増えそうですね。余り女性をたぶらかさないように注意しておきます、それじゃあ、エマさん、アンナちゃん。また会いましょう!」


「「またね、ミランダ(ちゃん)」


ミランダもアルトの後を追いギルドを後にした。





俺は今門の所でミランダを待っている。もう少しアンナ達と話しても良かったが、それよりも大事なことを聞いたからにはそうもいかなくなった。にしても、このタイミングでこの国を出ることにしたのは正解だった。あの男が言ったことが本当なら、この国は戦場になる。


「魔族が大群で押し寄せてくる。」


男がそういった時、嘘だと思った。ただのいいわけだと、だが決してないわけではない。魔王が勇者に敗れ、勇者を倒そうとする魔族が居るのは不思議な事じゃない。しかし、問題はそこじゃない、何処からこの情報が出たのかが問題だ、なぜそのような情報が出たのかが分からない。魔族が情報をリークするのは考えにくい、というか何処までの知能があるのか分からない段階で、それを考えるのは無意味だ。


まあなんだ、この国がダメージを食らうのは俺としては願ったりかなったりだ。そのまま勇者を殺してくれれば殺す手間が省ける。


「ふ、まあエルフの集落での計画の材料が増えたのは嬉しい誤算だ。ゆするネタになる。」


「アルト様――!!!」


ミランダの声がする、どうやら挨拶を済ませてきたらしい。さて、じゃあ行くとするか。


「来たか、さあエルフの集落に行くとしよう。」


「はい、アルト様。」


俺達は門を抜け王国を出た、ここから数日をかけてエルフの集落を目指す


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