若い子はすぐ変わるものなんだな
俺は魔術師協会を出て町を見渡しながら宿屋に向かって歩いている。
ハハ、ハハハハ!!
ふぅ、少し計画と違ったがこれで魔術師協会の連中を殺す事に成功したぞ。これでもう勇者召喚などは出来ないだろう、そうなれば早々異世界から人間がやってくることはないだろう。ポンポン異世界からチート級の力を持った連中を召喚されちゃあ、いつになっても計画が進まないからな。
さて、ついつい足が止まってしまったが気を取り直して宿屋に向かうとしよう
......うん?誰からだ?
(すみません、アルト様。少し気になったもので連絡致しましたのですが、奴隷商まで来てもらえないでしょうか?)
(ああ、商人か。何の用だ?急ぎのようなのか?)
(急ぎってほどでもないのですが、今日新しく奴隷が来たのですが、それが魔術師から連れてこられたみたいで。顔を拝見したところジェイクさんに似ていたものですから。アルト様に連絡しようと思った次第で)
(それは本当か?それならすぐにそっちに向かうとしよう、その奴隷と一緒に待っていろ)
(はい、ではお待ちしております)
......ほう、その奴隷とやらはジェイクの娘の可能性があるな、まあまだ確証はないがタイミングが良すぎるのと連れてきたのが魔術師だというのを考えれば可能性はかなり高い。
俺的にはそうであってほしいがなジェイクに対しての切り札になる、もし裏切るようなことがあれば利用できるからな。さて、何はともあれ奴隷商に向かうとしよう。
俺は宿屋に向かわず奴隷商に向かうことにした。
俺は奴隷商にやってきた、奴隷商の入口に二人が立っていた。商人とまだ5,6歳位の少女だ。
て、おいおい、不用心すぎるんじゃないか?完全に誘拐犯みたいな絵面だぞ。
「待たせたな、その子が今日やってきた子か?」
「はい、この子が今日やってきた子です。話しかけてもまったく反応しないんですよ、なので聞こうにも聞けなくて。それに怖がられてしまって」
「それはそうだろ?こんな小さな子が奴隷として連れてこられちゃあ仕方ないだろ。」
「それもそうですね。」
怖がられたのは、お前の顔と聞き方じゃないのか?小さい子と話すんだったらその子に目線を出来るだけ合わせて話すのが良いのだと俺は思ってる。上から見られたら誰だって恐怖を抱くのは当然のことだろうに。
「まあいい、そんなことよりだ ねえ、君 君の名前はなんていうの?」
俺は営業スマイルを発揮し少女の背丈に会わせてしゃがみ話しかけた。
すると少しして少女が口を開いた。
「......ミウ」
「そうか、ミウちゃんか。ミウちゃんはお父さんやお母さんは居るのかい?」
「......ママ、は、しんじゃった。パパはわかんない。」
「そうか、パパの名前はなんていうの?」
「......ジェイク、パパのなまえ。」
やはりそうか、ジェイクの娘か。
「大丈夫だよ、ミウちゃん。パパは無事だよ」
「......ほんと?ママみたいにしんでない? パパにあえる?」
「ああ、もちろんだとも。俺はパパの友達だからね、さっきまで一緒に居たんだよ?」
「......!!」
ジェイクの娘のミウは俺に抱き着いてきた。ふむ、信用された?のかな。まあどっちにしろジェイクの報告が終わって連絡が入ったら言うとしよう、今言ってパニックになってもらってはこっちが困るからな。
「ねえ、パパにはいつになったらあえる?」
「そうだね、パパの仕事が終わったら会えるよ。それまで俺の家に居てもらえるかな?」
「うん!」
「商人、俺はこの子を宿屋に連れていく。後処理は頼んだぞ?」
「はい、死んだことにしておけば上の人間も納得すると思います。特に気にしないものですし。」
「そんなものなのか、ああそれで頼む。なにかあったら連絡してくれ、些細な事でもかまわん」
「はい、かしこまりました。アルト様」
俺はミウを連れて宿屋に向かった、早く帰らないとな。これは完全に誘拐犯に見えてしまう絵面だからな、自分でもそう思う。でも、町の人も気にしてないあたり特に不思議なことではないのかもしれないな。
ミウの足に合わせて歩いていたから普段よりは遅くなってしまった、辺りはもう暗くなり始めていた。
「ミランダ、帰ったぞ。居るか?」
「はい、アルト様。私はここに......あの、アルト様。この子は?も、もしかして隠し子?」
「何を言ってるんだ、隠し子なんかじゃない。この前会っただろ?ジェイクってやつに、そのジェイクの娘だ」
「そうですか......ほ。ま、まあアルト様にでもなると、どっかでいろんな女性と関係をもってそうですからね。そんなこともあるのではないかと思っておりましたので」
「あのなあ、ミランダは俺を何だと思っているんだ?......それに最初にあった時よりも随分変わったな。最初は戸惑ってる様子が見えたのにな」
「それは、そうですよ。これでもアルト様の奴隷をやって結構立ちましたからね、自分を出せるようになってきた、ということです。それか昔のような感じのほうが好みですか?」
「そうだな、どっちでもいい。どっちもミランダには変わりないのだからな」
「......もう、ずるい人ですね。」
いや、変わりすぎだろ! ま、変わったのは別段困ることやないからいいとしよう。それにこの方が助かることもあるだろう。
「ねえ、おにいちゃん。」
「うん?あ、ああ。俺の事か、なんだい?」
「このみみのながい、おねえちゃんは、おにいちゃんのおよめさんなの?」
「え、いいや、違うぞ。この耳の長いお姉さんは俺の、うーん。友達だよ、友達。俺とジェイクパパみたいな感じだよ」
「ふーん、そうなんだ......あれ、おねえさん。かおだいじょうぶ?すっごくあかいよ?」
「ふぇ、あ、う、うん。大丈夫だよ。あ、うーんと名前はなんていうの?」
「ミウだよ!」
「そう、ミウちゃんか。良い名前だね」
「ありがとう!」
はあ、子供に言われて恥ずかしがってるなよな。まあ、でも年頃の女の子はそういうものなのか?
うん、考えても分からん。
俺はミウの世話をミランダに任せてジェイクの連絡を待った