新たな動き
俺達は勇者の家を出て酒場に向かった、最近は酒場ばっかりだ。しょうがない、酒がうまいのが悪い俺は悪くない。正直酒飲んでなきゃやってられん。それだけ勇者から聞き出した事が厄介だと感じさせられた。
「ジェイク、ニーナはどうだった?魔術教えてもらったのか?」
「教えてもらったというより見せてもらったに近いですね、正直、力の差がありすぎで私には出来ないことばかりでした、制度も早さも桁違いですね。今まで見てきた魔術師の中でも最高ランクでしょう。」
「へえ、そんなにか。まあ、お前はいづれ強くなるさ。俺が居るんだからな、お前が俺の邪魔にならない限り俺はお前との約束を守るとしよう。」
「はい、ありがとうございます。アルト様の邪魔になることはしませんよ、そんなことしたらすぐ殺されてしまいますからね。やはりニーナは凄いと思いますが、あの中でもやはりアルト様が一番強いと思います。」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、それはないだろうな。…今のところは」
「今のところは、ですか。 楽しみですね。」
「ふ、ああ楽しみさ。 さ、今日はとりあえず飲むか。酒でも飲んでいい気分になりたいからな」
「私もお供いたします、嫁にも今日までは帰らないと最初に伝えてありますので」
俺とジェイクは朝まで飲んで飲みまくった。
ああ、頭いてえ。調子に乗って飲みすぎた。俺は宿のベットで横になっていた。
昨日宿に着いてベットにぶっ倒れてから、どうやらミランダが看病してくれたようだ。
別にただの二日酔いなのに大げさすぎだこの奴隷は。
「起きたのですね......良かったぁ。心配しましたよぉ、うう、、、急に倒れるから何かあったのかと」
「ああ、悪い。ただ酒を飲みすぎて頭が痛いだけだ。ミランダは大げさすぎなんだよ」
「それでも、心配しますよぉ。アルト様が死んでしまったら私は生きていけません」
「それこそ、心配しすぎだ。俺はそう簡単に死なん。どんな手を使っても生きるからな」
「......はい、信じています。アルト様は死なないと。私はずっとアルト様の奴隷です。」
おいおい、いづれエルフの国の女王になるだろう人が奴隷でどうすんだよ。まあ国の再建出来るかまだ分からないがな。だが出来れば建国させたい。その方が面白いことになると思うからな。
「そうか......はあ、ミランダ俺はまた寝る昼になったら起こしてくれ。」
「はい、分かりましたアルト様」
少し飲むのは控えよう、いざとなった時に対処できないからな。
俺は再び眠りについた。
「アルト様、昼になりましたよ。起きてください」
「......ああ、今起きる。」
俺は重たい体を起こし目覚めた。
「......ミランダ、何か変わったことはあったか?」
「いえ、特には......あの聞きたいことが、その、みか......とは誰なんですか?アルト様が寝てる間に呟いていたのですが」
「......いや、ミランダには関係ない。ただの昔の知り合いだ。」
「そう、ですか。アルト様がそう言うならもう聞かないようにします」
「ああ」
......はあ、美香か。未だに出てくるとわな、それだけ未練があるってことか?ふふ、もう会うことはないのだから気にしてもしょうがないのにな。うじうじしてるのはカッコ悪い、さっさと忘れよう。
「俺は支度したらギルドに向かう、ミランダも来るか?それとも宿で待ってるか?」
「一緒に行っても良いなら、私も行きたいです。アンナちゃんにも会いたいですし」
「アンナちゃん?お前達いつの間にか仲良くなったのか?あの時は喧嘩っぽい事してたのにな。」
「いえ、あの時はただ条件反射と言いますか、もとよりエルフと獣人は仲良くなかったのですが、獣人国が王国に協力するようになった時はかなり関係が悪化しましたからね。でも、アンナちゃんは良い人ですから、人種なんて関係ありません。あの時助けてくれた村の人達と同じです。」
「そうか、ならギルドに行くとしよう。」
「はい、アルト様」
これは良い事聞いたぞ、獣人とエルフは敵対してるのか。あと、ミランダは獣人国が王国に協力したといったが、それは多分協力じゃなく獣人国が王国の属国になったんだと思うぞ?
まあまだ確証はないがな。
俺達は支度を整えギルドに向かった。
俺達はギルドにやって来てミランダを待たせ早速俺は受付の方に向かった。そこにはエマが居た。
「あ、アルト君!依頼完了したようね!国王から通達があったわ、それじゃあ早速、カードを水晶にかざしてくれる?」
俺は自分のカードを水晶にかざした、するといつもとは違う感じがした。カードが光りカードにDランクと記載されていたが、Cランクと変わった。
「エマさん、ランクが上がったんですがこれで私はCランク冒険者となったのですか?」
「そうよ、これでアルト君ははれてCランクよ。Dランクでは受けられなかった依頼も受けられるようになったわ。それと、エマでいいわよ。敬語もやめてね、一つしか違わないんだし。それに堅苦しいの嫌いなのよね私。」
「......分かった、エマ。俺もいつも道理いくとしよう。次のランクに上がるのも今までと一緒でいいのか?」
「ううん、残念だけどそれは違うわ。次からはこちらが用意した人材を倒してもらう事になるわ。」
「それは、殺すってことか?」
「......ええ、正直私はこれには反対なのだけれど、決まり事だからどうすることもできない。ここだけの話、次のランクからは標的を殺す依頼もあるからね。人を殺す事に慣れてもらうためってのが目的なのよね。それに相手もこちらを殺すつもりでやってくるからこの試験で死んでしまう冒険者も少なくないのよ、だから試験を受ける前に受けるか確認を取ってるの。それもあってBランクから上の人はそう多くはないのよね。」
エマはあまり気分が良くないようだ、まあそうだろうなそれが普通の反応だ。でも、俺はそれを聞いても気分が悪くなることはなかった。もう何人もこの手で殺してきたからだろう。
本格的に俺も、この世界に染まってきたということか。殺さなければ殺されるなんてことはこの世界では日常茶飯事だ。
「そうか、分かった。その時までに心しておくとしよう。」
そこで、待たせていたミランダが話しかけてきた。
「エマさん、アンナちゃんは居ますか?」
「あ、ごめんね。今日はあの子休みなのよ。明日は来るから明日また来てくれる?」
「あ、そうですか。分かりました、それなら明日来ようと思います。」
俺達はギルドでの用を済ませ宿に帰るべくギルドを出ようとしたら、頭に声が聞こえてきた。その声の正体はジェイクだった。
(助けてください!アルト様!......妻と娘が......)