勇者と対面
俺は今ジェイクを呼び出している所だ、ギルドを出た時ミランダと共に酒場に向かった。
呼び出して数分でジェイクはやってきた。
「アルト様、今度はどのような要件ですか?......この方は?」
「紹介はまだだったな、ミランダだ。最近俺の奴隷になったんだ。」
「初めましてジェイクさん、私はミランダと言います。」
「さて、紹介も済んだことだ、要件を話そう。俺はさっきギルドで勇者の護衛の依頼を受けたんだが2人以上の人数が必要でな。ジェイクには俺と一緒に依頼を受けてもらいたい」
「そうなのですか、分かりました。喜んで受けさせて貰います、それで何時からなのですか?」
「急なんだが、明日だ。お前は強くなりたいと言っていたからないい機会だと思うぞ。」
「ですね、分かりました。なら早速準備のために戻ろうと思います。アルト様、ミランダさんではお先に失礼します。」
正直呼び出さずでも命令すれば良かったんだがな、ここの酒はうまい、それが悪い。
それと、ミランダに会わせて反応を見たかったんだがどうやらミランダが姫だとは思ってない様子だった。なら、魔術師達はミランダの事を知らない可能性がある、まだ確証はないがな。
「アルト様、あのジェイクって人は誰なんですか?」
「ああ、俺の協力者だ。同じ冒険者だ。」
最初の計画ならミランダはジェイクに殺されるはずだったなんて言えないな、言う必要性もない。もう終わったことだ、現実はそうはならなかったのだからな。まあいい、俺以外は最低限の情報だけを知っていればそれでいい。その方が何かあった時すぐ切り捨てられるからな。
「そうですか、では、私は勇者の護衛は出来ませんので宿で帰りを待ってることにします」
ほう、分かってるじゃないか。それでいい、宿で待っててくれよ。余計なことはするな頼んだぞ。
「じゃあ、この酒を飲んだら宿に帰るとしよう。ミランダは飲んじゃだめだぞ」
俺はうまい酒を飲み干しミランダを連れ宿に帰った。俺は明日に備えミランダより先に風呂に入りベットに入った。
待ちに待った朝がやってきた、俺は身支度を済ませ宿を出た。
支度途中にミランダにどんな武器を使うんですか?って聞かれたので俺は短剣を見せた。ミランダが言うには短剣はあまり使ってる人は居ないそうだ。だが、俺に合ってると感じたんだ、しっかり短剣での実践も経験済みだ。最近は能力を出来るだけ使わないで短剣を使って魔物を狩っていたからな。
俺は勇者の家に向かった、依頼を受けた時にエマから直接家の場所を聞いた。口頭なら誰かが聞き耳を立てない限り他人に知られることはない、あの時は周りに誰も居ないことを確認してから聞いたから他人が知ってることはないはずだ。
勇者の家が特定なんてされた時にはどんなことが起きるか分からないからな、しっかり配慮されてるようだ。
しばらくして、勇者の家に着いた。ふむ、普通だ。
勇者の家だからもっと豪勢なのかと思ったが特に他と変わりがない。まあその方が目立たないからいいのか。
俺がそんな感想を抱いているとジェイクがやってきた。
「アルト様、早いですね」
「ああ、ジェイクか。ってジェイクここでは様はやめろ。冒険者仲間という設定で俺達は居るんだからな」
「そうですね、すみませんアルトさん、では行きましょうか」
俺達は家のドアを叩いた。
ドンドンドン
「今回依頼でやってきましたものですが勇者様はいらっしゃいますでしょうか」
少ししてから、ドアが開いた。その中からメイド服を着た女性が出てきた。
「冒険者の方ですね。お待ちしておりました、レン様達は部屋にいらっしゃいますので、ご案内します。」
俺達はメイドの後に続き屋敷に入っていった、少しして俺達は勇者の部屋の前に来た。
メイドが部屋のドアを開けるとそこには勇者とその仲間が居た。勇者はベットに座っておりそれを囲むように3人の女性が居た。
「どうも、初めまして。僕はレンです。今回は護衛よろしくお願いします。さ、みんなも挨拶してくれ。」
「私の名前はニーナと言います。魔術師をやっています、この度は護衛よろしくお願いします。」
「あたしはエレナだ、ほんとは護衛なんか必要ないがレンの為だ仕方がない。しっかり護衛してくれよ」
「もう、エレナ。そんな態度じゃ駄目だよ?すみません。エレナはレンの事が心配なだけで悪い人ではないですから。ルンの名前はルンって言います。今回は護衛お願いします。」
「な、ば、バカなこと言うなよルン、べ、べべつにレンの事なんか心配じゃないんだから」
「ほら、エレナも。せっかく護衛の方が来てくれたんですから。少しはしっかりしてくださいね?」
「分かったよ、ニーナ。すまない......今回は護衛よろしく頼む」
「はは、すみません。いつもこんな感じなもんで、大変かと思いますが僕達の護衛よろしくお願いします」
「はい、こちらこそ勇者様の護衛が出来るのは嬉しい事ですので、しっかり護衛させていただきます。それに、仲が良いのは良いことです、信頼しあえる仲間が居るのはとても良いことだと思いますよ?あ、自己紹介がまだでしたね、私の名前はアルトです。こっちは俺の冒険者仲間のジェイクです。」
「ジェイクです、よろしくお願いします」
「アルトさん、ジェイクさんですね、これから3日間お願いします。アルトさんの言う通り僕もみんなと居るのは楽しいですし家族のように思っています。いや~護衛の人が良い人で良かったです、改めてよろしくお願いします!」
挨拶を済ませ、俺達はまずメイドに屋敷を案内してもらうことになった。
いや、しかし。我ながら思ってもいないことをベラベラと喋ったものだ。信頼できる仲間だと?そんなもん居るわけないだろ、結局信じられるのは自分だけだ。まあ、ここでは良い人間を演じるとしよう。
俺達は一通り屋敷を案内されてまた勇者の部屋に戻ってきた。
「戻られましたね、では早速説明します。なぜ護衛を雇ったのかを。僕達は魔王を倒すことに成功したんですが、倒される直前に僕に魔法をかけてきまして今は力が出ないんです。
座ってるのがやっとで、ろくに食事も出来なくて、3人に魔法を解いてもらう必要がありまして、魔法が解くまでの身辺警護を依頼したというわけです」
「そうなのですか?あの時の演説を見ていたのですが、普通に見えましたが」
「あの時はニーナの魔術で一時的に筋力を上げて何とかって感じです。国王にも言っていないですし。知っているのはここに居る人だけです、あまり噂が広まるのは避けたいものですから」
「そうだったんですね、そのことなら私達に任せてください、しっかり護衛をさせていただきます」
「ありがとうございます、アルトさん、ジェイクさん」
早速、魔王の魔法を解くと、いうことなので俺達は部屋を出て家の周りを巡回することにした。
「ジェイク、勇者はお前にどう映った、その他の奴についてもだ、簡単に話せ。」
「はい、勇者についてはまだ底は知れませんが、あのニーナって魔術師は凄いですね、魔力量が私の数十倍はあるでしょう。他の方々はまだ分かりません。」
「ほう、なるほど。さすがに魔王と戦った魔術師だけのことはあるってことか、他の奴らも相当な使い手だろうな」
「ええ、私もそう思います。これから、どうするのですか?アルトさん」
「どうもしないさ、このまま護衛を続け聞きたいことを聞く、俺はそれだけだ。お前はニーナにでも魔術を教わってみればいい、あなたの魔法に興味があるとかなんとか言ってな」
「分かりました、そうしたいと思います。ニーナの魔術を知れば少なからず自分にとって良いものになるでしょうから。」
俺達はその後も護衛を続けていった。1日、2日と何か特別なことが起きるわけでもなく過ぎあれから2日、勇者達が部屋から出てくることはなかった。