情報は武器だ
「どうだ、ジェイク見つかったか?いや、見つかってないのだな?」
「いえ、見つかりました。ですが、私の失態です。どうやら私は追い込みすぎたようです。遺体がありました。もうすでに黒焦げになり誰か確認はできませんでしたが、恐らく秘書でしょう。」
「そうか、気にするな。命令は生きていれば連れていく、死んでいれば消し灰にして跡形もなくなれば証拠は火の中に消える、死んでいるのならこのままでいいだろう。跡形もなく消えていくだろうからな」
「はい」
「なら、ここにもう用はない。ジェイク水魔法で火を消し帰るぞ。」
男とジェイクは水魔法を使いこの場を去っていった。
ほう、ジェイクは火の魔法だけじゃなく水の魔法も使えるのか。それがどの位凄いことなのかは分からないが役に立ってくれそうだ。
「さて、俺も早く帰ってやらないとな。ミランダがまた心配してるだろうからな。」
寝ていないであろうミランダに命令の大事さを理解させつつ今回の件を振り返るために俺は宿に向かった。
「お帰りなさいませ、アルト様。ご無事で何よりです。」
「......ああ、ご無事ですとも。それで、言うことはないか?」
思った通り、寝ていなかったミランダに俺はそう言った。
「寝ていろ、と命令されましたので私は寝ました。それで、私は命令を果たしましたのでアルト様の帰りを待つことにしたのです、問題はありませんよね?」
うわー、そう来たか。私は寝ましたよ。でもすぐ起きましたけどか、うまいな。
ってそうことではないんだが、この様子じゃ何を言っても無駄か。
「あ、ああそうだな。もうそれでいい。では、ミランダ。俺はこれから風呂に入る着替えを用意しておいてくれ。」
「はい、かしこまりました。アルト様」
まったく、強情な女だ......これ二回目だな。
さて、風呂に入るとしよう。
俺は今日の疲れを風呂で洗い流し、俺はさっぱりした気分で風呂から上がった。
着替えをして寝室に向かうとミランダが待っていた。
「今日はアーロンさんに会われたのですか?」
さん?…まあいいかそこは気にしなくて。ミランダには詳細は知らせていない、屋敷に向かうとしか言ってないからな。
「いや、違う。ちょっとした偵察だ。安全に俺達が住む為のな、それと、数日は町をうろつくのは控えてくれ、我慢してくれるか?」
「我慢だなんて、命令してくださればいいのに。私はアルト様の命令に従います。」
「そうか、確かにそうだな、今日はもう寝よう。俺は少し疲れた。」
「はい、かしこまりました。」
俺達はベットに入り眠りについた。
そして、俺は三日連続で依頼を受け魔物の討伐をしていった。その時もミランダには宿で過ごしてもらった。数日は何も商人からもジェイクからもアーロンからも情報はなく進展は無いままだった。クレイブの屋敷は跡形もなく灰に変わり更地になって、町の人達は何もなかったの如く普段と変わらぬ生活をしていた。事件が起こった後、国の兵士が町を巡回していたが最近はほとんど見なくなった。そろそろ、ミランダを外に出しても良いだろう。
しかし、少し前まで毎日何かしらの出来事があったが、今はただの冒険者として魔物の討伐をしている。まあ、最近の出来事はすべて俺が引き起こしたことだが、そろそろ、何か起こってくれないだろうか。何かしらの事態が起こればどさくさに紛れて情報を集められる。町に兵士が少なくなれば好都合だ。
そして、俺の望んだとおり事態が一変した、それは、クレイブ屋敷崩壊から1週間たった。
なんと、勇者が帰って来たらしい。
「勇者だと!帰って来たってやっぱり魔王と戦ってきたのか?」
町の人が噂をしている、どうやら昨日の夜に帰って来たらしいとのことだ。情報は正しいのかどうか確かめるべく、配下を集める事にした。
(商人、ジェイク、人目につかない格好で酒場に来い。俺が来るまで待機していろ。)
俺は二人に酒場に来るよう命令し俺はアーロンがいる宿に向かった。
俺は、最近宿に居座っているアーロンを訪ねた。
今はこの宿で部下と情報集めをしているらしい。アーロンと会うのはクレイブを殺して以来だ。昨日伝えたい情報があると言って部下をよこしてきて待ち合わせは今日の昼だったから丁度いい。アーロンにも酒場に来てもらうとしよう。
「アーロン久しぶりだな。」
「アルトさん、お久しぶりです。冒険者での活躍耳にしておりますよ。」
「何を言ってるんだ、雑魚を倒してるだけのへぼ冒険者だよ、他の連中はそう言ってる。」
「ふふ、そうですか。まあいいでしょう。早速本題に入りたいのですがいいでしょうか?」
「いや、待ってくれ、今酒場に俺の協力者を集めている。そこで情報を貰いたい。」
「......そうですね、はい。 ではそれでもいいでしょう。支度をしますので少しお待ちを」
「ああ、すまんな。」
俺は、アーロンの支度を待ちながら勇者の件を考えていた。
勇者か、最初のアンナの情報にもあったが2年前にこのアルトリアス王国に現れた男性らしい。噂によると若い男のようだ、年齢は16~18歳に見えたらしい。
未成年じゃないか。よくまあそんな年齢で魔王と戦おうなんて思ったもんだ。
「用意できました。では酒場に参りましょうか。」
俺達は酒場に向かった。
騒がしい町の中を潜り抜け、酒場に到着した。
俺達は中に入り奥のテーブルへと向かった。
(いいか、二人ともこれから会うやつにはお前たちを協力者と伝えてある、間違っても主様だとかアルト様だとか言うんじゃない、特にジェイクは魔術師というのは隠せ。それと余計なことは聞くな命令だ)
「アルトさん、この人達は誰なんです?」
「ああ、こいつらは俺の新たな協力者だ。お互いの利益の元組んでいる。」
「アーロンさん私はあの時の商人です、今は敵ではないのでご安心ください。」
「私はジェイク、アルトさんと同じ冒険者です。」
「そうですか、私はアーロンです…アルトさん随分と協力者が増えましたね?」
く、アーロンの視線が。やっぱりこいつに嘘を付くのは難しそうだ、ボロが出ないようにしなくては。やはりこいつの〈傍観者〉の力は厄介だ。
「ああ、俺も協力者は多い方が良いと思ってな。その方が色んな情報が手に入るしな。さて、情報を教えてもらいたい。まずは、商人から頼む。」
「はい、奴隷商と国がつながってるのは確かです、上の人間が話しているのを耳にしました。ですが、どういう関係かは判断付きません。できれば私が出世できればいいのですが。」
商人は情報は特に新しい事はなしか。こいつを上の地位に上げるのは後で考えるとしよう。
「なら、次はジェイク頼む。」
「はい、私の知り合いに魔術師が居るのですが、確認してみたところ町の人が噂している勇者が帰ってきたというのは本当の事のようです。数時間後国王が何やら演説かなにか行うそうで、護衛をすることになったと言っておりました。」
おお、勇者帰還は真実か。これは面白くなってきたぞ、勇者は異世界人の疑いありだからな邪魔になれば排除するのも視野に入れとかなくてはな。
「そうか、勇者はほんとに帰って来たのか。俺は一度も勇者を見ていない、一度見てみたいものだ。よし、最後にアーロン頼むぞ。」
「ええ、分かりました。アルトリアス王国から南東の方に集落を発見致しました。そこでエルフを見たとの情報が入っています。どうやら、ミランダ姫以外にも逃れていたエルフが居たようです。それと、クレイブ家と親しかったドーラン家にエルフの奴隷が居るとの情報があります。」
「ほう、エルフの集落らしき所も見つけたのか。なかなかいい情報だ。さて、情報はこれで以上なら解散としよう。ジェイクが言うことが正しいなら今日は勇者がお目にかかれるかもしれないからな」
「そうですね、私も勇者には興味ありますし、あまり宿を離れて部下の管理が疎かになるのも嫌ですし。私はこれで失礼させていただきます。それでは、皆さん、さようなら。」
アーロンは宿屋を出ていった。アーロンが帰ったのを確認しジェイクが口を開いた。
「アルト様だったのですね、協力者というのは。あそこに居る時点で薄々は気づいていましたが、あのアルト様の力は一体?」
「言う必要がなかっただけだ、そうだクレイブの殺害に協力したのは俺だ。それと俺の力は誰にも言うことはしない、例え配下であってもだ。そこは気にするな。」
「はい、私はアルト様の配下、アルト様がそう仰るのであれば気にしないことにします。それでは私達はどうすればいいでしょうか?」
「そうだな、また情報を集めてくれ。情報はいくらあっても良いからな。」
「「了解いたしました」」
二人に引き続き情報を集める事を指示して俺は酒場を出た。
さて、宿に向かうか。ミランダにも勇者を見せておきたいしな。
「ミランダ変わった様子はなかったか?」
俺は宿に着いてミランダに聞いた。特にないならそろそろ、自由にさせようかとは思ってる今日は特に勇者の件があるしな。それとエルフの件もだこれについては言うか迷うが、どうするか。まあエルフの事だミランダに教えておいた方が良いだろう。
「お帰りなさいませ、アルト様。今日は何の用だったのですか?」
「そうだったな、ミランダには言っとかなくちゃいけないな。この国の南東の方にどうやらエルフの集落があるとの情報が入ってきた。」
「っ!!!それは、本当ですか!?アルト様!」
おっと、いきなり近づいて来るとびっくりするんだが、まあ無理もないか。
「ああ、そうだ。正直まだ確証はないが、可能性はあると思ってる。」
「お願いです!私をその集落の所に連れて行ってください!」
「......それは、無理だ。それに落ち着いて考えてみてくれ、今行ったところでミランダに出来ることは何もない。まだ、その時じゃないんだ我慢してくれないか?」
「......それでも、私は......仕方ありません、分かりました。アルト様がそういうなら。」
「すまないな、必ずいずれ集落のことは考えるから。今は我慢してくれ。」
「......はい」
ミランダはだんまりしてしまった。随分あっさり引き下がったないつもはもっと引き下がらず言ってくるんだが。まあいずれにしてもその方が助かる、あれもこれもやっていたらボロがでる。今は勇者の件が大事なのだ。
「なあ、ミランダ。もう、宿に居ろとは言わないから外に出かけないか?今日はどうやら勇者が見られるみたいだぞ?」
「......本当ですか?あの勇者ですか?噂は聞いていましたが本当に帰って来たのですか?」
「ああ、そうみたいだ。俺は勇者を見に行く、ミランダはどうする?」
「......はい、私もアルト様についていきます。今落ち込んでも仕方のないことですし、アルト様はエルフの集落の事を考えると言ってくれたので、それだけでも嬉しいです。」
「......そうか、助かる、やはりミランダは笑っていた方が俺は好きだぞ?」
「っ!? も、もう、変なこと言わないでください!い、行きますよ。」
ミランダはそそくさと宿を出ていった。
ほんとのこと言っただけなんだが、まあいい。これで何とかエルフの件は保留に出来た。エルフについてどうするかは今後の動きを見て決めるとしよう。
さて、ミランダの後を追いますかね。