新しい配下
俺は、俺の認識を消し存在感をゼロにしてクレイブ家のクレイブの部屋まで行った。
どうやら、まだ来ていないようだ。それにしても、アーロンが居なければ自分の力に溺れ痛い目にあっていただろう。この〈支配者〉の力は最強の類のものだと思っていたからな。これからは、どんな能力を持った奴が現れるか分からない。慎重にやっていかないとな。
さあ、魔術師どもどうでる、来ることは分かっている。ミランダが行方を眩ませている以上奴隷契約の相手のクレイブ家に何らかの接触を図るはずだ。
なかなか、現れないな。......ふんふん、この匂い、まさか!俺はクレイブの部屋から出て屋敷を見渡した。するといたる所から火の手が上がっていた。
なんだと、人が居るかもしれない屋敷に火をつけるだと!
「くそ!これは予想外だ!もっと穏便にすると思ったんだが、ちきしょうめ!」
俺は、どこから火を付けているか確かめるべく外に出た。魔術師なら魔術を使っているはずだ、それなら屋敷に入らずともできるはず外に居る可能性高いからな。
すると、そこには数人の魔術師が居た。
「......これで屋敷に人が居れば嫌でも出てくるでしょう。魔術を使えるものはいないでしょうから。」
「ご苦労、全く。上の後始末をさせられるのも大変だ。それもこれも、内の馬鹿な奴がクレイブを殺したから。困ったものだ。」
「そうですね、でもなぜ奴はこんなことをしたのでしょうか?上の判断に背けば例え生きていたとしても牢獄送りにされ死ぬまで監獄されるというのに。」
「さあな、私には馬鹿の考えることは分からん。それに、奴は死んだ。報告によればどうやら、クレイブの秘書が報復として殺したそうじゃないか。よく、殺せたものだ、馬鹿は馬鹿でも魔術師。秘書なんぞに殺されるとは思わないが。」
「そうですね、私もそう思いました。最初は報告を疑いましたよ、その場に居た商人が報告したようですが商人が殺したとは思えない。となると、秘書となるの思いますが。殺す理由なら分かりますが殺す手段があるとは思えない、それになぜ商人を見逃したのかも謎です。ですので私はもしかしたら秘書に協力した者が居たのかもしれないと思っています。それなら殺す事も可能かもしれないと思うのですが。商人についてはそれでも、分かりませんね。」
「まあ、今は何を考えても仕方ない捕らえればそれも分かるだろう。ここには人が入った情報がある。この事態にたまらず出てくるだろうよ。」
「ですね、しかし。出てくる気配がしませんね......私見てきます。ここでお待ちを」
「ああ、頼む。もし居たら生け捕りにして連れてこい。ジェイク」
「はい」
おいおい、あのジェイクって男、感が働くな。いや、普通思うか
どう考えても秘書が魔術師を殺せるなんて思わないか。ミスッたな。
当初の目的は魔術師にアーロンを殺してもらう算段だった、ミランダを引き取ってもらおうと思ったのも魔術師を支配してミランダを殺させ事態を悪化させようとしたんだが。俺がミランダを奴隷にしたことでアーロンにもクレイブ家から離れてもらうことにした。
ミランダのやりたいこと聞いて利用できると考え予定を変更して生かす方向にして良かった。
あのまま変更せず実行してたら殺さず生け捕りにされ尋問されていただろう。そうなれば俺の事も知るはず。ほんとに助かった。それと、商人が生きてるのは俺も同じこと思ったが。国と奴隷商の間でやはり何かあるな、それならまだ生きてる説明が付く。
「今日の町の様子を見るに情報を統制したのだろう、町の人に知らせなかったのだから関係者全員殺して隠蔽すると考えて、最初の計画で行けばよかったとその時は後悔していたが、判断は間違ってなかった。まったく心臓に悪い。殺さず生け捕りか、もっと作戦を良くしていかないといつか死ぬ羽目になるな。」
さて、俺もジェイクとやらの後を付けていくとしよう。その後は......そん時考えよう。
俺はジェイクの後を付け再び火に包まれつつある屋敷に入った。
「なかなか、見つからない。ほんとにいるのだろうか。これだけ火が上がっていれば耐えられず出てくるはず。まさか、死んでしまったのか?」
「…ここにはいないよ。ジェイクとやら。無駄足だったな。」
「誰だ!なぜ、知っている!?隠れていないで出てこい!」
「それはできない相談だ。まあ君が俺の質問に答えたら姿を見せてやってもいい。俺は怪しいものではない。信用しろ。」
「......良いでしょう。その様子だと答えない限り出てくることはないのでしょう。質問とはなんですか。」
「君達は誰の命令でここに来た。」
「私は上の後始末をしにここに来た。生きていれば秘書と行方不明の姫を連れていく、死んでいれば屋敷ごと灰になってもらうためだ。命令はそれだけだ。」
生死は問わないか、生きていれば連れていき死んでいれば跡形もなく消し灰にするってわけか。どっちにしろこの件をもみ消すことには変わりないか。
「解除」
「......は!私はなぜ命令を言ってしまったんだ。お前は一体私に何をしたんだ。」
「それは、君が知る必要はない。それよりもだ、ジェイク。俺の配下になる気はないかな?」
「何を馬鹿なことを言っているのです!それより約束通り姿を現してください。」
「いいや、それは無理だ。だが俺の配下になるなら別だ。早く決めないと屋敷が崩れて下敷きになるぞ?君が配下になれば君の望むことを手伝ってやろうじゃないか。」
「私に望むことなんてありません。出てこないならあぶりだすまで。」
ジェイクは魔術を使おうとしたが俺はそれを許さない。俺はジェイクの動きを止めた。
「拘束っと、さて君はどうする?このままだと死ぬぞ?」
俺はジェイクの動きを止めたので約束通り姿を現した。刻々と屋敷の崩れ去る時間が迫ってくる、ボロボロ上から燃えた木などが降ってきたのだ。
「く、動かない......これも魔術なのか。お前が声の主か…本当に私を手伝ってくれるのですか?」
「おや?さっきまで何を馬鹿なとか言っていたのにもう折れたのか?まあいい、そうだな俺の配下になるなら手伝ってやろう。」
「......分かりました。私はこんな所で死ぬわけにはいかない、私はもっと強くなって位を上げ妻と子で裕福な家庭を築き上げたいのです。強くなる手伝いしてくれますか?」
......はい?なんだその小さい望みは、それは誰でも思うことだろ。いや、こんな世界だ。思っても現実にできるのはごくわずかなのだろう。
問答無用で無理やり支配することはできたが、こいつは魔術師だ。この先どうなるか分からない、無理やり支配して配下にするよりも本人の同意の下に配下にした方が良いだろうと思い、ダメもとで勧誘したが思ったより簡単でびっくりだ。
「強くなりたいか、良いだろう。なら俺に従え。 服従しろ」
「......これでいいのでしょうか?何か変わった様子はないのですが?」
「ああ、君は俺には逆らえない。これで、君は俺の配下だ。さて、最初の命令だ。秘書らしき人が燃えて死んでるのを確認したと外で待つ男に説明し撤収しろ。」
「はい、分かりました。主様......本当に逆らえない、普段と変わりないのに逆らおうと思えない。これは凄い。」
「感心していないで、早く命令を果たせ。命令に従ってさえいればいずれ君は強くなっていくだろうよ。」
「分かりました。それでは、また後程。もう、この屋敷は持ちそうにありませんので。」
ジェイクは屋敷を出ていき俺もまた姿を消しジェイクの後を付いていった。