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Dearest  作者: 水上翡翠
20/49

19、花盛りの庭園に

遅くなりまして、たいへん申し訳ありません!!

スランプです……内容薄いかも。

さくさく進みます。

 デリーナや侍女たちとのお茶会を終え、リディエとミレーニアはお茶会の片付けに、エシュティはその手伝いに行ったので、いまリシュエールに付き従っているのはカルラとアンナだ。


「らしくありませんでしたね。どういった心境の変化です?」


 私室へ戻る途中、カルラがそう聞いてきた。


「変化というか……」


 正直なところ、リシュエールにもよく分からない気持ちなのだ。分からないから聞いたのに、余計にこんがらがってしまっている。


(好きよ……?みんなのこともだけど。陛下は特別、なのかしら?)


「もしかしてリシュエールさま、フェルディアド陛下に恋をしてしまったのですか!?」


「ち、違うわ!」


 アンナがとんでもないことを言ったので、全力で否定した。…そうだ、とんでもないことだ。


(恋はしていないわ。しているはずがないもの。陛下には、リリシアナさまが……)


「違うもの……わたし、恋なんて……」


 心がざわついた。嘘をついているだろう?とリシュエールの良心が咎める。でもそんなこと、知らない。

 すべてを隠して、リシュエールはふんわりと笑ってみせた。


「ふふふ、わたくしに恋を教えてくれる人はいないのかしらね?」


 あら、わたくしったら浮気したいのかしら~とうそぶく。


「それにしてもいいお天気ね、カルラ、アンナ?」


「そうでございますね、王妃さま。」


「えぇ、お花がきらきらしていますわ!」


 二人はリシュエールの誤魔化しのってくれるらしい。本当に、主のことをよく分かっている、良い侍女たちだ。


「まぁ、アンナ。お花がきらきらだなんて素敵ね。」


 アンナのつたないが、率直な感想はまさにそのままだった。太陽の光をいっぱいに浴びた花たちは、まるで花自身が光を放っているかのように輝いている。少し落ち込んだ気分の今のリシュエールには、眩しく感じて目を細める。


「こんな好い日にお部屋に籠もりきりでお仕事だなんて、なんだか陛下が気の毒だわ~!」


 なんて可哀想…と言うと、カルラとアンナはくすくす笑った。


「摘んでいったらよろしいのではないですか?お二人のお部屋にでも飾れば、陛下のお心も休まれるのではないかと思います。」


「それはいいわ!せっかくだから、奥宮のいろんなところに飾るのはどうかしら?ああでも、お手入れのお仕事が増えてしまうかしら?」


 リシュエールのわがままで女官たちを忙しくしてしまっては申し訳ない。しかしリシュエールがそう言うと、カルラとアンナはとんでもない!と首を横に振った。


「むしろリシュエールさまのお役に立てることが増えて嬉しいくらいですわ!リシュエールさま、ご自分でいろんなことをなされるし、あんまりわがままも言わないしでわたしたちの仕事なんてたいして忙しくなかったのですから!」


「そ、そうなの?」


「そうですわ、王妃さま。お花を飾るなんて、素敵ではありませんの。」


 カルラにも同意されて、リシュエールは目を輝かせる。


「じゃあ、これから一緒に摘んでくださる?」


「もちろんですわ!」


 では、籠が要りますわね!とアンナが走り出した。


「あ、こら!アンナ!走ってはいけませんっ、………ってもういないわ。」


 カルラが大きくため息をつく。しかし、その様子は怒っているというよりは呆れているような、仕方ないなぁというに微笑ましそうだ。


「ふふふっ。カルラったら、アンナのお姉さんみたいよ?」


「まっ、あんなお転婆な妹がいたらたいへんですね!」


 くすくすと笑いながら、リシュエールとカルラは花を摘み始めた。 


「マリーゴールドは欲しいわ。太陽みたいなオレンジの。あ、ダリアはチェリーピンクの……」


「ブルーサルビアやクレマチスもいいと思います。」


「まぁ、大人な色合い。さすが、カルラね。」


 不格好な組み合わせにならないよう気をつけながら、色とりどりの花を腕に抱えていく。


「リシュエールさまー!籠とって参りましたぁーー!」


 ぱたぱたと走って、アンナはリシュエールに籠を差し出した。


「ありがとう、アンナ。」


「いいえ!それよりもリシュエールさま!わたし、良い話を聞いてきたのですわ!」


 頬を紅潮させながら、アンナはリシュエールに内緒話をするように口もとに手を当てる。


「女官たちが、陛下がお庭へ出ていらしたと話していましたわ!」


「まぁ!」


 フェルディアドが休憩に外に出るのは珍しいらしかった。王であるフェルディアドが外へ出ると、それだけで護衛を増やしたり配置を替えたりとしなければいけないのだ。余計に仕事をさせてしまうからなと、以前フェルディアドが言っていた。


「それでは正宮のほうへ行けばお会いになれるのではないでしょうか?」


 どうしますか?とカルラが視線を向けてきた。

リシュエールは唇に人差し指を当てて、しーっと言う。


「こっそり行くわよ。びっくりさせて差し上げましょう?」


 いたずらっ子のように笑って、リシュエールは正宮に向かった。 


────これが失敗なのだと知らずに。








「ええっと正宮はこっち?」


「いいえ、こちらですわ。王妃さま。」


 政務が行われる省庁がある正宮と王族の生活区域である奥宮は、建物内は立ち入りの確認をされるが、庭は幾分か緩い。リシュエールたちは見つかる護衛だのなんだのと面倒なので、こっそりと進んだ。


「あ、声が聞こえます!」


アンナがはっと、足を止めて言った。


───今日は………だから……に


「なんて言っているのかしら?」


 聞こえたのは、フェルディアドの声である。誰かと話しているようだった。


「この先は……東屋がありますね。」


───………ェルディアド、わたし…嬉し…き……


 もう一人はおそらく………女性。しかも、しかもこの声は。

 薔薇の垣根が、東屋の近くまで続いている。


「あ、リシュエールさま!」


 その垣根にそって、リシュエールは東屋に近づいた。すると、今度ははっきりと声が聞こえた。そしてすぐに、聞かなければよかったと後悔した。


「毎年あげていたからね。君の誕生日は忘れないよ。」


「本当に嬉しいわ、フェルディアド!パリュールだなんて……しかも、ピンクダイヤモンド!」


「君に似合うと思ってね。」


「まぁ!大好きよ、フェルディアド!」


「リシー、──」


 フェルディアドがなんと返すのかを聞く前に、リシュエールは耳を塞いで急いで東屋を離れた。

これ以上フェルディアドの優しくて幸せそうな声を聞いていられなかった。大好きよと言われてなんと返すのかを聞きたくなかった。……答えなんて、わかりきっているのに。


「リシュエールさま……ごめんなさい」


 アンナが泣きそうになりながら、リシュエールに謝った。自分のせいで、見たくないものを見せてしまったと思っているのだろう。リシュエールを傷つけてしまったと。


「……アンナは悪くないわ、大丈夫。」


────ほんとうよ、ほんとうに大丈夫。


「わたくしの誕生日、いつだか知っている?」


 突然の問いかけに、カルラとアンナは目を丸くする。けれど、すぐにはっと顔を見合わせた。


「……4月23日だと、記憶しております。」


「えぇ、正解よ。」


 リシュエールがこちらへ来てからすぐにあった誕生日。まだ結婚する前だったのと、結婚の準備で忙しくて、今年は誕生日会などは見送ろうということになった。

 リシュエールが忙しかったように、フェルディアドはもっと忙しかった。知っている。

 でも、


「おめでとう……だって、言われていないわ。」


 ふふっといつものように笑い飛ばそうとした、その微笑みは、とても弱々しいものだと……


「……ぅう……」


 泣くな。泣くな、リシュエール。

 こんなことで泣いて、無様に恋に破れた女になるな。


(恋……)


 そうだ。やはりリシュエールは恋をしていたのだ。……フェルディアドに。


「どうして……っく、どうしてなのよ」


 どうしていま気付くのだろうか。どうせいつまでも報われない想いなのに、自分の馬鹿さ加減に呆れてしまう。


「好きなの……」


「王妃さま。」


「好きなの、愛してるの……」



 誤魔化しきれなくなった想いが、激流のようにあふれ始めたのを、リシュエールは自覚した。








「……好き。好きよ、陛下。」


 窓辺に飾られた赤いカーネーションのの花弁を優しい撫でながら、リシュエールはそっと微笑んだ。


───貴方に会いたくて堪らない。


参考

パリュールというなのは、一揃いのアクセサリーですね。ピアス、ネックレス、指輪……とか。


髪飾りはあげませんよ~だ。笑

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