ポンコツアイデンティティー
スランプだ
そう小さく呟いて、
真っ白な携帯の画面を閉じて電車を降りる、
何も書けなくなったし何も書きたくなくなった、
一体何を書けばいいのか、
歴史とは何だったのか、
ひたすら自問自答を繰り返し重い脚を進める、
首に巻いたマフラーが微かな温もりを提供してくれる、
大学の共用の休憩スペースの椅子で、
私はまた頭をひねる、
書き出しはどうするか、
どうやって読者に読ませるのか、
どうやったら尊敬してる先生方の文章力を超えることが出来るのか、
底なし沼の恐怖から這い出すように、
私は携帯でまた資料などを検索して頭の中に並べる、
ストーリーはこうでキャラクターとキャラクターの会話はこんな感じにして、
ダメだこれではまるで面白くない、
もっと面白い、そして自慢できる様な作品を書かないと、
脳に栄養を回すため私は家から持ってきた朝飯のパンを神頼みのように細細と齧り付いた、
(はたしてこの分野に需要はあるのか)
ふとそんな事を考えてしまった、
自己満足で書いてるくせに需要を考えるとは笑いものである、
考えが纏まらないまま一時間目の授業が始まる、
授業中はとても退屈だ、
先生の話を聞いてノートやプリントに書いていく、
その一方で脳みそは小説の内容を考える、
女の子×戦車はアニメが流行ってるからやりたくないだの、
女の子×戦闘機は漫画が発売されてるからやりたくないだの、
女の子×軍艦もゲームが話題に登ってるからやりたくないだの、
(まるでダメじゃないか)
プリントの横に落書きをしながら考える、
考えることは制限されない、
なら考えるしかない、
思いついては書いて、
思いついては書いて、
思いついては書いて、
そして消していく、
面白そうな部分を掛け合わせて小説を作るのが自分のやり方、
そのせいか内容がどうしてもぐちゃぐちゃになってしまう、
(要するに全部ダメダメ)
自己完結して自分でショックを受ける、
でもそんなショック受けても思考回路は塞がらない、
塞がらない低能な思考回路を最大限に利用して面白い小説を考える、
ある意味自分の画力を把握して妥協して絵を描くのよりも難しいかもしれない、
文章力というのは鍛えれると聞いたことはあっても鍛えたことは無い、
ただただがむしゃらに書いて書いて書き方を覚える事だ、
(次の小説は、こうしよう)
酔っ払いの社長が汚ったない部屋で酒を飲んで出来上がる、
なんだこの社長は、
考えた自分も自分だが社長がこんなのでいいのか、
酔っ払いの車長が汚ったない愛車で酒を飲んで出来上がる、
これはただの酔っ払い軍人だ、
汚ったない戦車を書いてもその戦車に失礼だ、
(やっぱりダメか)
諦めてまた思考回路をオーバーワークさせてまた考える、
たまーに考えすぎて幻覚を見ることがある、
街の中に一瞬だけチハの幻覚を見た時は入院しようか悩んだ、
何より考えすぎて本当に気分が悪くなって脱力感に襲われた時もあった、
そのうち幻聴も襲ってくるんじゃないかと考えると気が気じゃないが、
その時は精神病院に入らず自己治癒力に頼ろうと自分は言い張る、
(今日も、何も出てこなかったか)
スケッチブックに自画像などの落書きをしながら、
頭の中で戦車戦をやって自分で楽しむ、
そんな日常茶飯事を、
今日も私は繰り返す