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四度

「セーラ、御子…ゴホン、この子の名前は決めたのかい?」

「…あう」


相変わらずピヨ、とも鳴かず側に佇むアサシンヒヨコの動きを見極めるべく動体視力訓練をしていたある日の事。

パパさんの問い掛けに固まった。


……名前?、、ない。

あれから既に数カ月経つというのに名前を付けていない。いや、心の中でアサシンヒヨコ、と呼んでいたが正式な名前ではない。

そもそも名前を使うのは、相手が遠くにいる時に呼びかけたり(側を離れない)、お互いのコミュニケーションの為に呼び合ったり(ピヨとも鳴かない)、用がある時(何も無い)などだ。…うん、名前は要らないな。

結論は出たのだが一際強い視線が下からグサグサ刺さる刺さる。ゆっくりと視線を降ろせば笑った子供が泣き出す凶悪な目が何時もより見開いているではないか。

怖い怖い!私でなければ赤ん坊泣いてるぞ、本気で怖いぞ!いいではないかアサシンヒヨコで。

しかしプレゼントをしてくれたパパさんに対してアサシンヒヨコは失礼か?

名前、名前か。

顎に手を当て暫し熟考する。

スナイパー、ケルベロス、アサシン、デーモン、ヒットマン、サタン、エージェント……いかん、殺伐とした単語しか出ない。

名前名前名前。

ゴルゴとかフリーザとかラオウとか?……無理だ。

可愛らしい名前など欠片も思い浮かばない。…ピヨ、マロン、ミルキィ……無いな。

だいたいこの雰囲気と目付きが原因だ。

そうだな、例えばこの前一緒に居た、


「縁日、ヒヨコ」

あれならば幾らでも可愛らしい名前が浮かぶのだがな。


「エンニチ、かい?」


無意識に声が漏れていた様で、ルイス兄が首を傾げる。肩で切り揃えた髪が動きに合わせてサラサラと揺れる。優雅な仕草もピンッと伸びた姿勢も相変わらず麗しい。、、じゃなくて、エンニチ?


「不思議な響きだね。

なかなかいいじゃないか、流石私のお姫様だ」

「異国の名前って感じですね。しゅごいでしゅね〜セラフィーナ様」

「エンニチ、宜しく」


ナデナデするべく寄ってくるダスティさんは左右からパパさんとルイス兄の肘鉄が鳩尾に綺麗にハマり手前で崩れ落ちた。

横で倒れたダスティさんを無視し、ロン兄はヒヨコに挨拶をしている。

カオスだ。


…をう。既に名前がエンニチに決定されいるぞ。

これでいいのだろうかとチラリと下を見れば、心なしか胸を反らしているようだ。……ま、いいか。本人に不満は無さそうだし、殺し屋やら宇宙人の名前よりマシだろう。

そうして正式にこの部屋の住人?兼ペットにエンニチが加わった。



さて、アサシンヒヨコ改めエンニチ。普段は私の足元に張り付いているのだが、最近は1メートル程離れる様になった。

初めは嫌われたかとも思ったのだがそれにしては他所に行く訳でもなく常に側にいる。試しに名前を呼んでみると一瞬で足元に来ていた。

…お前、もしかして名前を呼んでほしいのか?


今日も1メートルの距離を保ちながらじっとガン見するエンニチの名前を呼ぶ。

相変わらずの瞬間移動だが、、



不覚にも少しだけ可愛いと思ってしまう今日この頃だ。





◆◆◆◆◆◆◆





「エンニチ、エンニチ…うん、あのヒヨコにピッタリの名前じゃないですか」

「シュバルツ様にもお褒めの言葉を頂いたよ。ただセーラに興味を持った様でね……何事もなければいいが」

「…嫌な予感」

「あ〜、それより俺の内臓がイカれたみたいなんですけどね〜。聞いてますか〜?」

「僕たちのセーラ、優先事項」

「申し訳ないですけどダスティさんよりセーラ方が大切なので」

「バカだね」





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