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三十五度

皆さま、お待たせしました。

また、設定ミスで書いている途中のものを投稿してしまい、混乱させてしまい重ね重ね申し訳ございませんでした。m(_ _)m





良かったーーっ。

パパさん、ブラザーズ、マイファミリー!!愛してるよー!

そして一緒に心労を分かち合おうではないか。



お爺ちゃんから離れブラザーズのもとに駆け寄ると、二割増しの笑顔で二人の手をギュッと握った。

我ながらロクデナシだと思うが今現在、非常に困ったことが起きているのだ。

一人より二人、二人より三人だ。道連れは多いに越したことはない。もう離さないっ。



因みに最後までエスコートは自分の役目だと渋っていたお爺ちゃんだったが、孫二人のお願いにあえなく撃沈した。


どこの世界でも孫には甘いらしい。







出席したからには流石に公爵家の娘が主催者、つまり国王をガン無視する訳にもいかず、パパさんに見送られつつ嫌々ながら右手はルイス兄、左手はロン兄のエスコートで茶飲み友達、もとい国王様に挨拶をするべくシャラシャラ音を立ててゆっくりと進む。



えっと、ベルは…っと、……壁近くで女性たちに囲まれハーレムを形成していた。



……ほーふーへー。


ベル様はすっご〜くオモテになられてるんですねぇ。色男はちが、、あれ?若干涙目?……なんかウハウハなハーレムライオンと言うよりは、まるで肉食獣に壁際まで追いつめられた子犬のようだった。


…うん、なんかゴメン。


こちらに気付いたベルが助けてと視線で訴えていたので頑張れ、と周囲に見えないように小さく握りこぶしを見せエールを送る。

すまない、修羅場はゴメンだ。


ベルを爽やかに置き去りにし、歩く先には国王様とシュバルツ様が。反対側にはキツめの美人が座っている。彼女が王妃様らしい。

流石は母親、縦ロールの大人バージョンみたいだ。

あれ?そういえば縦ロール何処行った?

…ふむふむ、会場にいたけど私が入場したと同時に気分が悪くなったと退出したのか。その際に『黒いのが、、黒いのが…悪夢がぁ…』と呟いていたとか。


…うちの子がすまない。

完全にトラウマになったな。







うーむ、歩きやすい。我が兄ながら完璧なエスコートだ。ちゃんと歩幅が違う私の動きに合わせてくれているし、周りからの視線をさり気なくガードしている。


ふははは、どうだ。うちのブラザーズはカッコイイだろう。将来嫉妬で刺されないか不安なくらい中身も文句なしにステキなんだぞ!

ブラコン?ふっ、ブラコン上等!

しかしブラザーズのシスコンの方が突き抜けすぎて霞んでいるがな(苦笑)


しかし我ながら図太くなったものだ。

一般的に考えても普通のご令嬢は、『守護鳥様と国王様にお会いするなんてどうしよう。セラフィーナ、上手にご挨拶できるなかぁ。ドキドキ☆』などとヒロイン的思考になるのだろうが、何故か私の好みを熟知しているストー…コホンッ、守護鳥シュバルツ様のおもてなしに加え、パパさんと守護鳥様に日々圧迫面接されている国王様の愚痴を定期的に聞かされる身としては、初めの頃はともかくとして、今更ドキドキワクワク感など残念ながらカケラもない。



この気持ちを例えるならば、せいぜいご近所さんに挨拶に向かう程度だろうか。








煌びやかな空間を縫うように進んでいく。

私もようやく会場内の様子を見るぐらいの余裕が出来た。

一言で言うとゴージャス。

質も量も半端ないなー。テーブルや壁に飾られた色鮮やかな花々も曇り一つない食器も見た目にも美しい料理も可愛らしいデザートだって……うわー、あのぽっちゃり目のご婦人、プチシュータワーを一人で制覇してるぞ。見ているこっちが胸焼けしそうだな。お?慌てて駆け寄る痩せ過ぎな紳士は旦那さんか?

これから旦那さんとご婦人がどうなるのかガン見していると、ルイス兄とロン兄が少し疲れた表情でこちらを覗き込んだ為、後ろ髪を引かれる思いで視線を戻した。誰か結末を教えてほいし。


「こーら、セーラはどこ見ているのかな」

「夜会に来るなんて知らない。驚いた」

「…えへっ、ごめんなさい☆」

「今回はお祖父様がいてくれたからいいようなものの、セーラが思うより危険なんだよ。今度からは私たちに相談してくれるね?」

「分かりました。ごめんなさいルイス兄様、ロン兄様。

二人ともだーい好きです」


許してくれないかなぁ、と上目遣いで見ると二人の雰囲気がパアッと華やかになっていた。

相好が崩れとるがな。

チョロいな、おい。


「全く、私たちの可愛い妹はどこでそんな仕草を覚えてきたのかな? まぁ害虫駆除は得意だからいいけど。

ほら、見てごらん。もう父上のところに虫が集まっているだろう」

「父上、笑いながら目星付けている」

「わー、いい笑顔で楽しそうですねー」

「そうだね。実際笑いが止まらないと思うよ。まずあの銀の腕輪をつけた方は脱税疑惑があるし、横のダイヤのカフスをつけられている方は海に面した領地をお持ちだけど、噂では塩の量を誤魔化しているとか幼女趣味だとかいろいろな噂がある方だから、セーラは半径500メートル以内に入ってはダメだよ」

「希望は二キロくらい?」

「残念ながら、既に入っていますから無理です」


無茶言うな。




そうこうしているうちにも、パパさんの周りには鴨が自らネギを背負いヒョコヒョコと集まって来ている。


パパさん、鴨鍋ちょうりは任せました。



私は公爵家の一人娘で珍しい事にこの歳で婚約者もいない。

死亡説が払拭した事によりいろいろと大変な事も多くなるだろうが逆に利用できるものもあるはずだ。

是非ともこのネームを有効活用してほしい。


なんなら婚約者でも決めてくれても構わないし。

結婚に夢も希望も持ってないので婚約者は誰でもいいし、自分で言うのもなんだが私はお買い得物件でハードルもそこそこ低いぞ。

2、30歳上はウェルカム。年下は要相談。

あ、出来ればパパさんやセバスの様に穏やかで素敵なオジ様を希望したい。ダスティさん?素敵だけど将来心労で早死にフラグだ立ってそうだ。あとは熱い地方に移住希望。

パパさん、是非ともなんとしてもハノアのお方様でお願い致します。

忘れちゃいけないのは、家族全員の合格サインを貰えて、エンニチの眼力に怯まず打たれ強い人で、、


おや?…ハードルが上がっている?




そんなはずはないと内心焦っていると、ルイス兄が声を潜めて話しかけてきた。


「ところでセーラ。その、連れてきているのかい?」

「腰に若干の膨らみ」


私は重々しく頷く。

もはや家族間でのアイコンタクトも慣れたものである。

そしてロン兄の言う通りに、二人の視線は私の腰の辺りにあるわずかな膨らみに向かっている。

素晴らしい観察眼と直感力だ。



もう皆様もお分かりだろうか?

私が会場に入ってから今まで、ブラザーズの手を離さなかった理由が。


そう、みんなの魔王アイドルエンニチだ。




初めは連れて行く気はなかった。

なかにはご自慢の守護鳥を連れ歩く女性もいるにはいるらしいのだが…うーむ。

おっと。勘違いしないでほしいのだが、私はエンニチが大好きだし大切な家族だ。エンニチは顔……コホンッ、仕草が可愛い(欲目)し、素直な良い子(多分)なのだが…ほら、うちの子って、覇王?いや魔王?雰囲気が尋常じゃないというのか一般受けしないというか…ねぇ?

雪像を見に行った時のようにモコモコ服に隠れる訳にはいかないので、今回はお爺ちゃんにエスコートをしてもらい、エンニチはお留守番の予定だったのだがーー



ーー嫌がった。



盛大に嫌がり、イヤイヤと(本人的に可愛らしいと思っている、実際はアサシン的な)上目遣い攻撃でもダメだと悟ると、駄々っ子のようにドレス用の余った雪花を破壊し始めた。




悲鳴を上げる大人達。




駄々をこねて物に当たる。


字面だけならば苦笑するくらいのものなのだが、黄金よりもはるかに価値がある希少な雪花を破壊するとは、なかなかやる事がエゲツない。


リアンオネエさん曰く。

必死に止める面々を見渡し、『じゃあ一緒に行ってもいーい?』と、先ほどまでの己の所業を忘れ、可愛らしく首を傾げる仕草にドン引きしたわー、と。



結局スカートの幾重にも重ねたレース部分に隠すようになんとかポケットを作り、そこの中に入るという妥協案に落ち着いた。

リアンオネエさんの負担が増える一方である。今度パパさんにボーナス支給をお願いすれから許しておくれ。

因みにエンニチには、命の危険性がある場合以外は一人で出てはいけないと約束させてあったのだが…。



入場した当初、私はパパさんたちのレア顔を見て大変に満足していた。

ふはははは、ドッキリ成功!驚いてる驚いてる♫ーーなんて愉快になっていたのは僅かな間だけだった。

すぐに別の問題に直面したからだ。




言わずと知れた、うちの子である。




入場の際に大勢の視線に私が怯んだのを感じ取ったのか、はたまたロリコンの視線でも感じ取ったのか、エンニチの警戒心がそろそろレッドゾーンを超え今にも外に飛び出しそうな感じだ。

そんなエンニチが外に出たらどうなるか。


会場内にいる人々が外国のパニック映画のように我先にと逃げ惑う姿が目に浮かぶようだ。

しかも他国の王族とやらも来ている国主催の夜会でやらかそうものなら、、想像しただけで胃が痛くなりそうだ。

一人では困難なことも家族と一緒なら心強い。全員で止めればなんとか…なるはず?

万が一不慮の事故で会場内がパニックになろうとも、きっとパパさんの権力で何とかしてくれるだろう。

うん、もう気にしない。









「久しいなセラフィーナ嬢、元気にしてたか?」

『うむ、相変わらず愛らしいの。そのドレスもよう似合あっておる』


をう。眩しい。


美鳥?とチョイ悪イケメンの三割増しな煌びやかな空間に怯んでしまう。

シュバルツ様と国王様に挨拶した後、初めてお会いする王妃様に目を向けた。

赤と金色をふんだんに使ったド派手なドレスに性格がキツそうな面差し。まつ毛バッサバッサな上がり気味の目。まさしく縦ロールの母親だ。

初めての夜会に緊張しながらも初々しく挨拶をするか弱い子供(ん?誰ってわたしわたし)を上から下まで眺めたあと、鼻で笑いやがった。


はい、敵認定。

まぁ二度と会わないからいいのだがな。

ベルよ。母親に似ないで良かったね。



その後、私たち兄妹のドス黒いオーラを感知したわけではなかろうが、子供相手にと国王様が軽く窘めただけで、気分を害したとサッサと退出してしまった。

仕事しろ王妃。

…アレが王妃でいる限り、うちの将来は暗いな。



額を手で覆う苦労性の国王様は、癒しを求めて膝の上に私を乗せようとするのをサラリとかわし、『城下町に行ったのでお土産を買ってきたのです。雪花祭限定のワインで、白はシュバルツ様に、赤は国王様に買ったのですが、受け取って頂けますか?』と、言ったところたい大変驚かれた。


「なんだとーーっ!?おい!侍従を呼べ」

『何をグズグズしておる!早う走っていかぬか!』



慌てる二人を尻目にゆっくりとフェードアウトする。


意外なところで役に立ったな。

しかし安酒なので過剰な期待はやめてください。





騒ぐ国王様を尻目に後退し挨拶を終えた私の手を引きブラザーズが向かう先にはご馳走が所狭しと並んでるテーブルだ。

目を輝かせた私に二人が微笑む。

流石はマイブラザーズ、よく分かってらっしゃる。やはりモテる男は違うな。

食欲をそそる料理たちがおいでおいでと私を手招きしている。


ふむ、先ずは目を付けていたにするか、中央に置かれている大きな鳥の丸焼きにするかが問題である。

マナーとして上位の者からの声掛けがない限り、下位の者からの挨拶は厳禁だ。

つまり年齢は関係なく、同じ公爵か王族でもない限り私の食事を止められないのだ。



ふはははは、貴族サイコーだ。



私も図太くなったものだと煩わしい視線はマルッと無視して、テーブルに向かった。





各テーブルにはコックと使用人が配置しており、料理の説明や注文を受けて希望の部位を切り分けてくれるらしい。

一番美味しい部位を貰うべく、「わールイス兄様ロン兄様、見て見て。すごく美味しそうですよ。セラフィーナ食べてみたいなぁ」と、当社比五割増しの愛想笑いのおかげなのか、カールした髭が印象的なコックさんが笑顔で素敵に焦げ目の付いているパリパリな皮と、お腹の中にナッツやとろ〜り溶けたチーズが入っている一番美味しいらしい鳥肉の切り身を切ってくれた。


愛想笑いは社会人としてのマナーである。


うーん、辺りに漂うチーズとお肉とスパイシーな香りが堪らない。

満面の笑みでそれを受け取ろうとーー。



「セーラ!」




肉食獣包囲網を無事脱出した子犬ベルが小走りに駆け寄って来る。

お尻に尻尾がパタパタしている幻影が見え、一瞬ホッコリしてしまったが、それはそれこれはこれだ。


空気を読め!

何故あと五分待てないんだっ!!(泣)



お皿を受け取ろうとした手を涙を飲み下げた。

ブラザーズとコックさんの哀れんだ眼差しがなんとも言えない。


同情するならご飯をくれ。



ベルは兄たちの呆れと私の怨念を込めた視線をスルーだ。

ち。ここが夜会で命拾いしたな。

我が家ならエンニチの華麗な回し蹴りでノックアウトである。



「セ、セーラ、その、そのドレス似合ってるぞっ」

「アリガトウゴザイマス、デンカ。セーラハトッテモウレシイデスワ」

「棒読!?なんだなんだ、何で怒ってるんだよ?俺セーラに何かしたか?」

「食べ物の恨みは恐ろしいのです」



許すまじ。


事の重大さを理解していないベルがブラザーズに目で訴えるも、笑顔で無視されていた。



「あーっ!もうなんだよ、わけ分からん!だいたい来るなら来るって言えよなっ。そしたら俺がセーラをエスコートしたのに」

「元々セーラ、来る予定なかった」

「まぁ、たとえ出席する予定でもエスコートは私たちがしますので、殿下のお手を煩わせたりはしませんよ」

「俺がしたいって言ってんだよ!」

「はぁ我儘ですね。では私たちと父上、後はそうですね、お祖父様が出席出来ない夜会にはエスコートをお願いしますね」

「…それ一生無理だろ」

「遠回しに言ってる」

「俺は皇太子で次期国王だぞ!命令だ、俺は今度の夜会でセーラをエスコートする!」

「どうぞご自由に。ただセーラは夜会を好みませんから次回があればいいですね」

「お、おまえら…。いつか絶対に不敬罪で処罰してやるぅぅ」

「セーラに嫌われたいならやればいいと思う」

「うぐぅ」



周囲に聞こえないよう小声だが、相変わらず三人のコントはリズム感もあり大変よろしい。

私の密かな娯楽の一つである。

目の前の料理をお預けされた私を哀れんだ先ほどのカールなコックさんにコッソリと頂いた薔薇を模した小さな砂糖菓子を、ポケットの中にいるエンニチと分け合いながらプチ娯楽を楽しんだ。








ひとしきり漫才を終えたベルが若干憔悴しつつもこちらに来ると、私の目線まで腰を屈め手を取った。

どうした?手が震えとるがな。



「セー、…コホン…セ、セラフィーナ姫、どどどうか俺じゃなかった、私と踊ってはいただけませんか」



……ダンスとな?


タンス、いやいやダンス。踊り?…えっとマイムマイム…は違うのか?ワルツやタンゴ、ルンバのアレか?


しゃるうぃだんす。



…………ダンス……?



私を腕に抱き抱えながらパパさんが優雅にステップを踏んだり、ダスティさんにアクロバティックなみにグルングルン回されたり、ブラザーズたちの両手を持ちデタラメなリズムでクルクル回るアレか?



…………をや?





何故だか、

冷や汗が止まらないぞ。






◆◆◆◆◆◆◆






「ぬぅ!?あの若造めえぇぇ。ワシを差し置いてセラフィーナちゃんと踊るじゃと!……女性から足を踏まれ続ける呪いをかけてやろうかの。

しかしまあ生意気な小僧はどうでもいいが、セラフィーナちゃんは妖精のように可愛らしく踊るんじゃろうなぁ♫」

「義父様、顔面崩壊しているのでご注意を。

因みに貴方の妄想を否定するようで申し訳ありませんが、残念ながらセーラにはダンスは教えていませんので、ワルツすら踊れません」

「何故じゃ?セラフィーナちゃんぐらいの年頃じゃともう教わってもおかしくはないじゃろ?」

「まぁ敢えて先延ばしにしていたのは認めますがね。

私たちの可愛いセーラが、なぜ何処ぞの馬の骨と踊らねばならないのですか?

手に触れるだけでも万死に値するというのに」

「それもそうじゃの。

まだセラフィーナちゃんは習わんでいいわい。

…しかし今はアレをどうするかの?皇太子じゃぞ。面倒じゃのぅ」

「ダンスはいずれロッテンマイヤー氏に習う予定だったのですが…まぁ私が行って収めてもいいのですが良い機会です。

ここはルイスとロンに任せてみましょう」


「コイツ自分の息子たちに丸投げしよった」








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