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閑話 オネエさんの近状報告

いつも見て頂きありがとうございます。

大変遅くなりましたが、11月投稿ま、間に合いました。( ̄∀ ̄)


あたしの名前はリアン、ただの平民よ。



ねぇねぇ、そんな事よりこのドレス見てくれる? あたしの力作なのよ〜。

これは宰相様が天使ちゃんの為に特注したドレスで、今回体の弱い天使ちゃんが公務を頑張ったご褒美なんですって。 愛されてるわよね〜。

このドレスは全体がフンワリとしつつも、後ろの裾を長くすることによって可愛さと清楚が絶妙なバランスをとっているの。

正に無敵の可愛らしさと清楚な雰囲気を合わせ持つ天使ちゃんの為にあるようなドレスよね〜。

更にこの裾から胸にかけての淡いグラデーションは色を出すのに大変でね、この特別な色合いを出すために南国から取り寄せた貝を……何よ?もうっ、話はここからだって言うのに。

さっきから言っている天使ちゃんは誰かって?



…フッフッフッ。よくぞ聞いてくれたわっ。



ジャジャジャ〜ン! その名は、、セラフィーナ様よ!

あたしは、なんとあのグラージュ家のお姫様の専属をしてるのよっ。

ビックリした?ビックリしたわよね? え?嘘じゃないわ本当だってば。今あたしのいる場所は工房として使っていいと許可されたお屋敷の中にある一室なんだから。

ね?驚いたでしょ? まあ、誰かの専属になるとは思ってなかったあたし自身が一番驚いているんだけどね。


でも聞いてちょうだい。

天使ちゃんはこの地上にいたの。

彼女こそ正真正銘地上に舞い降りた天使ちゃんなんだから。

あら、なにその目は?あたしを疑うの?

あんただって一度は聞いたことがあるでしょ?グラージュ家の至宝とか真珠姫とか。

………へ? 死んでないわよっ!失礼な事言わないでちょうだいっ。天使ちゃんが亡くなるなんて国の、いいえっ世界の損失よっ!

もうっホンッッットに可愛いんだから♫

公爵家の姫様で周囲からアレだけ溺愛されまくっているのに、驕ったとこが無くって、子供ながらに気遣いも出来て才能もあるのよ。このデザインだってセラフィーナ様のアイディアから取り入れたんだから。

何より一番なのは『リアンさんお疲れ様です』、ってはにかんだ笑顔なんてっっ!ご飯三杯はいけるわ。


何でもご本人曰く、異国のヤマトナデシコ?って女性を目指しているらしいのだけども、さぞかし素晴らしい女性なのね。






こう見えてもあたしの作るドレスは王都じゃちょっと有名なものなのよ。

あたしの母親は珍しい働く女性でね、母親がデザイナーで父親がパタンナーの夫婦二人三脚。

子供ながらに息のピッタリ合う両親が作り出す美しいドレスに憧れたわ〜。

勿論今でもあの二人はあたしの目標なの。

だからあたしがこの道に入るのは半ば決められた運命みたいなものね。

あ、こんななりで話し方も女みたいだけど、恋愛対象は異性しか無理よ。だからあっちに行ってちょうだい。

男なのに何で女みたいな話し方をするのかって?

仕事の為であって深い理由なんてないわ。 あたしのドレスってデザインから型紙、縫製まで全部一人でやるの。勿論大変だけどあんな面白い工程を他人任せになんか出来ないわ。

それでね、元になるデザイン画なんだけど、その人のイメージが特に大切なわけ。

だから直接本人に会うのも珍しくないんだけど、殆どの女性ってば図々しくて高慢な割には繊細で、体の大きな男に怯えるのよねぇ。

流石に自分の背丈はどうする事もできないから、せめて相手を少しでも安心させるにはどうすればいいかと考えた末に話し方と格好だけでも変えたら、って女性の真似をしてたらこんな風になったのよ。

ああ、無理はしていないから勘違いしないで。

自分でデザインした華やかな洋服も着れるし、お客様からの評判も上々だしで、今のあたしがあるんだから。

男性物から女性物まで着こなせるんだから、あたしの美しさってば罪よねぇ。




あたしはセラフィーナ様の専属になっても店はそのままにして、グラージュ家を通しての注文のみを受け付けるようにしたの。

本当は専属契約をした時点で店を畳むつもりだったけど、当のご本人であるセラフィーナお嬢様が、折角有名になったのにもったいないって言ってくれたのよ。それに屋敷を離れて一人で安らげる場所が必要ってのも付け加えてね。

ホンッッットに良い子よね。

確かに気さくとは言えご家族は正真正銘高位貴族。やっぱり緊張するわで、数ヶ月経つ頃には気が抜ける場所が必要ってのは身にしみて分かったわ。流石は天使ちゃん。

でも何で庶民の気持ちをあんなに理解出来るのかしら?

店に関しては恐れ多くも、グラージュ家の執事であるセバスさんが、通常はお嬢様のドレスに専念して下さいと、全ての雑用を引き受けてくれているの。有り難いわー。


だから今は毎日が本当に楽しいのよ。

やっぱりあの時やめなくて良かったわ〜。


…ん?ああ。あたしね一度デザイナーをやめようと思った事があるの。

何処の世界でも名が売れるといろいろ面倒ごとが多くなるのよねぇ。

あたしをよく思わない同業者の嫌がらせや、ワザと質の悪いものを卸されたり素材の納期の遅れなんかはザラにあったんだけど、他にも顧客の無理なオーダーとかでストレスが溜まる一方で。 でもやっぱり決定打はアレね。


コンディション最悪な時に、最悪なガキにあったの。




子爵家の一人娘でね。なんて言うのか、もう13にもなるのに周囲にデロデロに甘やかされて育った典型的な貴族女性。

あたしの繊細なレース編み、シフォンを幾重にも重ねた渾身の柔らかな質感。なーんで性格も体型も醜くぶくぶく太ったガキに着させなきゃならないのっ!

病気や体が弱いとか体質的なものならあたしも言わないわよ。

だけど、あんたは違うでしょ!

一万歩譲ってご飯やお菓子が美味しかった所為としましょうか? でも何で前に測ったサイズより肥えてるのよ!たった一週間前よ!?あんた何食べたらこんな短期間で太れるのよ! やめて無理に着たら破れるわ!あんたの要望で娼婦が着るモノぐらい生地薄いんだからね! ちょっ!?ドレスの試着中ぐらいお菓子を手放しなさいよね! あああ、クッキーのカスをボロボロと、、って、いやーっチョコで汚れた手で生地に触らないでーーっ!!



…あの時のあたしは、あのクッキーのカスみたいにボロボロだったわね…。

あら嫌だ、涙が。



でも捨てる神あれば拾う神あり。

身も心もボロボロで、もう店を畳もうかと思ってた時に出会ったのがセラフィーナ様だったの。

あの時の感動は今でも忘れられないわ。

公爵様に手を引かれてやって来たビスクドールの様な綺麗な子供。歩く度にサラサラと音が聞こえてくるような煌めく銀糸。あたしを見つめる瞳は神秘的な紫水晶。

首を傾げる愛らしい姿に鼻血が出そうだったわ。

気が付けば依頼人そっちのけで、夕方までデザイン画を山と積み上げていたのよ。

恥ずかしい話、あの後公爵家の方々(プラス鳥二羽)とドレスの綿密な打ち合わせで意気投合し食事までご馳走になった上、二日酔いになったのはここだけの話にしてね。

でも何年経っても天使ちゃんを見ると、こうインスピレーションが溢れてくるのよねぇ。

本当に罪作りな子☆




トントン。


あら、こんな時間に誰かしら?

扉を開くと執事のセバスさんが、温かい紅茶と共に顔を覗かせていたわ。


「夜分遅く申し訳ございません」

「いいえ、ちょっとばかり集中し過ぎていたからそろそろ休憩しようと思っていたのよ。むしろ丁度良かったわ、って廊下で話す事もないわね。ささ、入ってちょうだい」



セバスさんを部屋の中に招き入れると、彼は直ぐに準備を進めてたわ。用意してきたティーセットに温かい紅茶を入れ、ブランデーを数滴。相変わらず見惚れるぐらい無駄の無い動きねぇ。受け取ったカップからはいい香りを漂わせてるわ…はぁ美味しい。

あたしも仕事柄、貴族のお屋敷でいろんな紅茶をご馳走になってたけど、ココのは格別なのよね〜。



「それでこんな時間来るなんて、急ぎの用かしら?」


暫く雑談と共に紅茶の味を堪能した後、セバスさんに本題を切り出したわ。時間も時間ってのもあるんだけど、ティーセットと一緒に持って来た袋の中身がなーんか妙に気になって落ち着かないのよね。 あたし昔からこういった感は外れた事はないの。

あたしの問い掛けに、セバスさんが少し困った顔で袋の中身を取り出したのだけれど。



「…ナニコレ…」


袋の中から出て来たのは、見た事もないほどの数の雪花。 偽物、、ではないわよね。勿論偽物も出回ってるけど、この家ではありえないわ。それに雪花は精霊が作り上げたとされ、感じ取れないほど薄い魔気を帯びてるの。 だから雪花同士が触れ合うと魔気が共鳴して本当に微かな音が聞こえるのだとか。

……微かどころか、これだけの数がシャラシャラシャラシャラとそうとう煩く、、は無いわね。癒し?寧ろずっと聞いていたいかも。

優しく響く音にうっとりしているあたしに執事さんが経緯を説明してくれたのだけれどもーー。



「流石はセラフィーナお嬢様、非常識ね。精霊の祝福の大盤振る舞いじゃない」

「推測ですが、エンニチ様により接触が出来なくなっている反動かと」

「…?…ああ。何となく分かったわ」


天使ちゃんは生まれた時から精霊たちが挙って纏わりつき、もう溺愛レベルだったのだとか。

当人は精霊を見る目は持っていなかったのは幸いだったのかしら?

天使ちゃんに認識されずとも、精霊たちは健気?に気を引こうとあの手この手で纏わりつき、皿は割れる、夜中に子供の無邪気な笑い声は聞こえる、庭の草木がジャングル化するなどなどホラー感満載もとい悪気のない被害が拡大した結果、最終的には宰相様が屋敷全体に結界を張り外に追い出す事で落ち着いたんですって。


「私は精霊を見るとこが出来ませんが、僅かながらに認識できる同僚が言うには、光に誘われビッチリと窓に張り付く虫のようだったとか」


せ、精霊を虫扱い?

…まぁ、想像したら怖いと言うか、そうとう鬱陶し、、コホンッ。

そしてセラフィーナお嬢様の守護鳥として来たエンニチ様が、半日も持たずにキレて精霊を近付けなくさせたのだとか。 …どうやったのかしら?


でもエンニチ様なら何でもありね。





「じゃあ、明日の夕方までにこの雪花をドレスに縫い付ければいいのね」

「間に合いますか?」

「…ん〜、なかなか難しいわねぇ。衣装合わせなんかを入れて最低でも明日の昼までには終わらせないといけないわ。 ……?それ何セバスさん」


セバスさんの手にはレース編みのハンカチーフを持っていたんだけど…へぇ珍しいわね。これってば最北部に住む少数部族の女性が冬の間の内職に編む珍しいもので、何年かに一度お目にかかれればラッキーな事なのよ……お土産?セバスさんがあたしに?……て、天使ちゃんからですってっ!??


「ほほほ。ま、間に合わせるってのがプロと言うものですわ。

絶対必ず何としても命がけで間に合わせますから、それ下さいっっ!!」


と心を込めてお願いしたわ。

『土下座ですかっ!?』セバスさんの焦った声が聞こえるけど、

プライド?



そんなもの天使ちゃんの前にはゴミよゴミ。








書いていて、夜中なのにチョコレートケーキが無性に食べたくなりました( ̄ー ̄)

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