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三度

ここは天国か?


ピヨピヨピヨ

桃源郷、極楽、ユートピア、エデンに楽園などの単語が頭の中を行き交う。


ピヨピヨピヨピヨ

愛らしい鳴き声とクリクリお目め、チマチマ歩く姿が保護欲を掻き立てる愛らしい姿。


ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

バター色、空色、枯葉色、雪色、リンゴ色、白磁色にオリーブ色などなど。


ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ

目にも鮮やかな様々な色をした小さなヒヨコ達がちょこちょこと部屋中を縦横無尽に動き回っている。


眼福だ、生きてて良かった。(まだ二年だが)



本日は二歳の誕生日。

一年前には部屋を花で埋め尽くすという、ある意味乙女の願望的演出をした家族たち。

とても綺麗だった。綺麗だったのだが前世の記憶がある私なら兎も角、普通の赤ん坊には理解出来ないと思うのだが。

去年を踏まえ、今回も何かするだろうと一抹の不安に駆られながら就寝し朝目覚めるとカラフルな色の洪水。

よくよく見れば小さなヒヨコの群れ。

まるで部屋に縁日で売っている着色ヒヨコ達が脱走したかのようだ。

寝起きで呆然としている私を抱き上げ、蕩けるような笑みでおはようとおめでとうのキスをしてくるパパさんとブラザーズ。因みにダスティさんはお仕置き中の為キスは禁止。禁断症状なのかプルプル震える手が怖い。



「…こえなゃに?」

「驚いたかい?今日はセーラのお誕生日だからね。父上からのプレゼントだよ。僕たちのプレゼントはダスティさんと三人で作ったゼリーだよ」

「セーラ、おめでとう。後でゼリー食べよう」

「ぱぱ、るいすにー、ろんにー、だすてぃありあとう」

「セラフィーナ様、お祝いにここにチュウしてもいいんでちゅよ〜……がはっ」

「セーラはヒヨコのヌイグルミが大好きだからね。喜んでもらえたかな?」


パパさんよ、貴方が買ったヌイグルミがデカ過ぎてこれでしか遊べなかっただけです。

そしてダスティさんが床に崩れ落ちているが肋骨大丈夫か?嫌な音したぞ。


「セーラ、好きな子を選んで良いからね」


なっ、このヒヨコ達の中から一羽貰えるのだと言うのか?パパさん乙女心をくすぐる素晴らしいプレゼントだ。デキる男は違うな。


「あい!」


お返事は元気よく。

床に蹲るダスティさんの横をすり抜ける。(非情)

さて、どの雛がいいかな?

目の前のリンゴ色の羽の子も綺麗だしこっちは目が一番ぱっちりしてとても可愛いい。あの子はピヨピヨと愛らしい鳴き声だし、向こうの子はチョコチョコと忙しなく歩く一番元気な子だ。ふむ、羽の色で選ぶか顔や仕草で選ぶか迷うところだ。


……ん?

部屋の隅に動きもせずじっとしている子が居るぞ。

…………あれはヒヨコ、か?

体は愛らしく小さなヒヨコ。色は黒に近い宵闇色をしているがそんな事は問題ではない。目がなんと言うか無垢な雛ではない。凶悪な目つきでヒヨコの愛らしさが欠片も無く、三白眼?少し吊りあがり気味の目はさっきニ、三羽殺ってきました、的な凶悪さだ。漂う雰囲気はまるで凄腕スナイパーかマフィアのドン。

もう一度言おう。あれはヒヨコなのか?


あ、こっちを向いた。

…ガン見されている。子供が泣き出す眼力だ。ほぅ、この私に喧嘩を売る気か?二歳児だがヒヨコ如きには負けんぞ。

お互い目を逸らせば負け、と言わんばかりにじっ〜〜〜っと見つめ合う。


「おや?セーラはあのヒヨコが気に入ったのかい」

「っ、あゔ」


ーーーーな、何だと。


奥で見つめ合っていた筈のヒヨコが足元で私を見上げていたのだ。

断言するが私は目は逸らせてはいなかった。パパさんの声かけに意識を一瞬だけ逸らせただけだ。

つまりあの部屋の隅からこちら、決して短くはない距離を一瞬で移動したというのか?お前忍者かアサシンか?


何度でも言いたい。ーーこれ本当にヒヨコか?



内心汗をダラダラ流しつつ未確認生物ヒヨコを観察している内に、パパさんがこのヒヨコをプレゼントしてくれた。


何故だ。



そしてもう一つ。

いつも抱き枕よろしくヌイグルミヒヨコを抱いているのだが、朝目覚めるとアサシンヒヨコとすり替わっていた。


何故だ。



しかしまぁ、ぬくぬくなのでこれはこれでよし。





◆◆◆◆◆◆◆




「あの雛、セーラにとても懐いていましたね」

「本当、側から離れませんでしたからねぇ。ま、セラフィーナ様の愛らしさの前にはどんな生き物もイチコロですぜ」

「それは当然だけど普段大人しいセラフィーナがあんなに興味を示すなんて珍しいよ……父上どうしたのですか。何か気掛かりな事でも?」

「……父上、他のヒヨコも力が強かったけどあれの魔力桁外れ。唯のヒヨコ違う」

「へ?魔力ですかい」

「ロンは気付いたのか。…そうだな将来は二人とも必要になるし教えておこうか。ダスティも他言無用だよ。

これは年々減少している女性を守る為、二百年ほど前から王族から伯爵までの上位貴族に女性が生まれると力ある雛を集め子供がどの雛をどの様に選ぶのか観察し報告する義務があるんだ。勿論選ばれた雛はその子供の守護者として共に育てられる。

しかし殆どが傲慢さに嫌気がさし見捨てられるかオモチャを捨てるかの様に放り出されるか、死亡例もあったな。兎に角共に育つのはごく一部だね」

「力ある鳥の雛って。…コカトリスやフェニックスの雛に似てるな〜何て思ってたあれは本物だったんすか」

「じゃ、あのヒヨコは?」

「…七年前、シュバルツ様の御子様が200年ぶりに誕生されたのは知っているね?」

「シュバルツ様って国を守る守護鳥ですよね?…ああ、あの時は二羽目?二番目御子様で国を挙げて三日間盛大に祝いましたね。酒なんか大盤振る舞い飲み放題!幾らでも産んでほしいですぜ。……ん?雛って…」

「シュバルツ様の御子様が誕生されて七年。その間に産まれた女性は四人。王女を含めどれも御子様を視界にすら入れなかったそうだよ……私のお姫様以外は」

「……あの雛はもしかして…な、何でここにいるんですか」

「七年前、計算が合わない」

「神の身使いは人の定義では計れないさ。

儀式参加はシュバルツ様のご指示でね。真意は分かりかねるが、御子様自身も誰にも興味を示さず今まで問題は無かったんだが、、まさか御子様がここまで懐くなんてね」

「…城内も神殿も荒れますぜ」

「その時には隣国でも行けばいいよ」

「「 賛成 (です) 」」




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