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三十一度

いつも見て頂きありがとうございます。

m(_ _)m


アルフォンス三世君は超レアなので、盗難防止と品質保持の為、中身が分からない様に包装紙で包んでくれた。サービスの可愛らしいピンクのおリボン付きだ。

大きな人形をえっちらおっちら運んでいると、ダスティさんが真面目な、それこそ命懸けな顔でアルフォンス三世君の人形を持たせて欲しいと言ってきたのだが、これはエンニチが私の為に狩って、、いやいや、取ってくれた物なので私が運ぶのが筋だとお断りした結果ーー。



大通りのど真ん中で土下座されました。



……ダスティさん、エンニチより貴方の方が目立ってるよ…。


道行く人々がダスティさんを凝視し、次いで私を見ながらひそひそ声で通り過ぎる。何と思われているのか怖くて想像したく無い。

若干ドン引きしたが、そんなに好きなキャラクターだったのか?

取り敢えず人目があるので、希望通りにアルフォンス三世君をダスティさんに託した。


エンニチは胸ポケットに戻っている。何となく機嫌が良さそうである。



お腹も落ち着いたことだし、次は買い物だっ。





先ずは、日頃お世話になっている人たちへのプレゼントだ。

私も女性。やっぱりショッピングは楽しい。

パパさんにはガラスで出来たペーパーウェイト。中にはたくさんの小さな花が散りばめられていて、とても可愛らしい。


ルイス兄には、白に薄い黄色の羽ペンとスミレのインク。

ロン兄には、グレーに淡い水色の羽ペンと勿忘草のインク。


買うべきか悩んだが、ベルには緑と黄や赤の糸を使った剣帯。


屋敷の人たちとお城の執事さんたちには、雪花祭限定(限定品って素敵な響き)の吸水性バツグンのハンドタオル。端に刺繍された雪や可愛らしい冬苺やデフォルメされた神鳥様など、被らないようにいろんな柄を買った。


いつのまにか専属になってたリアンさんには、何処ぞの地方の伝統模様の繊細なレース編み。


茶飲み友達、もとい大人な王様と守護鳥様には、口には合わないだろうが庶民ワインを。一応礼儀として。


ルツにはほのかに甘いスズランの香りに似た花の香油。


半年に一回ほどお忍びで家に来る大神官のお爺ちゃん(何とルイス兄のお爺ちゃんだった。)には、疲労回復や血行促進の効果がある入浴剤。


因みに、お礼では無いがダスティさんには砥石。……だ、だが本人が前に欲しがっていたのだし。無論色気も素っ気もないのは重々承知の上だ。


エンニチにはルツと同じ店で買ったグレープフルーツに似た柑橘系の香油。

これでお風呂上がりに羽のお手入れをしてあげるつもりだ。


気軽に使ってくれたら嬉しいな。



しかし私は知らなかった。

エンニチ以外、全く使われていなかった事を。


ある物は金庫に厳重に保管され、ある物は額縁に飾られ、ある物は似た香りの別物で偽装され、ある物は神の聖遺物(アーティファクト)の隣に大切に保管され、エンニチも私が一緒でなければ間違いなく同様なことをしていたであろう事を。



随分後になって知ったのだった。








自分用には、ビーフジャーキーを是非とも購入したい。


私の頼みを受けたダスティさんの案内で行った店先には。



「お、おおぅ…」


店の前で立ち尽くす私の目の前には、天井から吊り下げられた紐に括られ、血抜きされた鳥やウサギがいた。

冬の風に吹かれ、縄がギシ…ギシ…と擦れる音と現物がぷらーんぷらーん、と。


ホラーだ。



布で覆われ薄暗い店内は、多少獣臭がするものの、一緒に吊るされたハーブのおかげかそこまで気にはならず、逆にスパイスの香りの方が強い。燻製にした豚や牛肉。私と同じくらい大きな鮭に似た魚の燻製もある。黒く煤け傷だらけの年季の入ったテーブルの上には、大小様々なお持ち帰り用のスパイスの瓶が置かれている。

いや、と言うか。右側に吊られている毛を毟しられたピンク色のウサギの目、こちらを見られているような気持ちに、、鳥の首がこっちを……ひ、ひょえーっ。


前世は一般庶民。

スーパーに並べられた切り分けられているお肉しか見た事は無い。

今世はお貴族様。

調理済みのお肉しか見た事は無い。


リアル。リアル過ぎるっ。

頼むから加工前のものを店先に置かないでくれっ。


「…なんだァ、ってダスティじゃねえか」

「昨日ぶりす。オヤジ儲かってるすか?」

「祭だからな。そこそこ繁盛してるぜ…でだ。この小僧はお前が連れて来た客か?」


ひ、山賊か!?

店の奥からのっそり出て来たのは獣の毛皮を纏った大きなオヤジだ。

毛むくじゃらの素肌の上から羽織るのは、きちんと縫製された毛皮では無く一枚に舐めした毛皮を、紐と紐で大雑把に結んだのをそのまま着ている。とってもワイルド。誰が見ても普通の山賊だ。

深いシワの刻まれた無精髭の顔でギロリとこちらを見る目力が半端ない。絶対子供泣く。とは言え、山賊オヤジもエンニチに比べたらまだまだだがな。


「しかもハノアのお貴族様かい。上客じゃねぇか」



何故にハノア?

いや、確かに将来の永住予定地なのだが。

こちらの問う目線に気付いたのか、山賊オヤジが豪快に笑いながら私の服装を指差した。


「煤けた色の服装をしていても裁縫や生地自体は上物だ。俺の目は誤魔化せねェぜ。

それになァ。まだ冬の始まりのそんな寒くもねえこの時期に、そこまで大げさにな着込むのはハノアの奴らしかいねェよ」

「……………………」

「(………………)」



何も悪い事をしていないのに、エンニチとダスティさんの憐れむ視線が居た堪れない。

生まれも育ちもここ、サミローダ出身ですが?

寧ろもっと厚着したいですが?

雪が積もってるのに寒くないと言う皆んながおかしいんだ。(悲)





「すいません。あの骨付き肉と…この魚?のと、アレも下さい」

「お、ボウ、いや坊っちゃんはなかなかの目利きですねェ。特にこの魚の燻製は新作ですぜぃ。相性の良いチップ探しに何日も苦労したんだ、、しましたんです」

「やっぱり相性とかもあるんですね…あれ?こっちはガッチガチ?」

「坊っちゃんが持ってるのは柔らか目で一、二週間持つ。そっちのは一カ月は軽く持ちますぜぇ。普通は唾液で柔らかくすんだが、坊っちゃんの小さい歯じゃなぁ…ま、スープに浸して食ってくだせい」

「成る程。じゃあこれも下さい」

「毎度あり。

お、そうだそうだ。話は変わるがダスティ、お前最近ギルドに顔出ししてんのかァ?この間酒場でギルドの会計のヤツが、赤字だと泣いてたらしいぜぇ」

「俺の脱退も許さないギルド何て知らないす。

…と言いたいところすけど、この間ダンジョンのやつを買い取りに出したから当分は文句も言われないすよ」

「ダンジョン品か。またオークションで高値で取引されるな。

ま、これもAランクの定めだ。潔く諦めろ。年齢か体を壊したぐらいの理由でも無ければギルドもお前を手放さないさ」

「いい迷惑す」

「お前、確か三年契約だったか?Aランクのお前を子供の護衛にするたァ、公爵様もスゲェよな。

だがギルドも慌てたろうぜ。スランプになったお前の療養期間と宰相様への貸しの一石二鳥だった筈がお前が、『俺の使命は、セラフィーナお嬢様が結婚して子供が出来て孫を見るまで護衛することす!…ということでココ辞めるすね』なんて言い出しやがったんだからなァ」

「そんな照れるじゃないすか〜」


重い。重いよダスティさんや。

私の孫までって、下手したら私の方が先に死にそうだ。

勿論パパさんやダスティさん、ブラザーズも老後の面倒は見るつもりだが、愛が重たいよ。



「でもよぉ、ダスティ。ここだけの話、そのセラフィーナお嬢様つーのは本当にいるのかァ?」


ここにおりますが?


「一部の神官や貴族が見たと言っているが、お披露目どころか公式な行事にも全く出てこねぇじゃねぇか。

皆んな噂してるぜ。精霊が騒いだのは偶々で実際にはそんな姫はいなかったんじゃねぇか、てな」


公式な行事でましたが?

…あ、雪だるまスタイルだったから誰も気付かなかったとか?

寒空の下、外に出歩くなんて正気の沙汰ではないと思います。

昨日は頑張った私。



「俺たち庶民だけじゃなく、お偉いさんも疑ってるぜ。本当にそんな姫がいるのかってなァ。今頃、宰相様も陰口叩かれてるだろうぜ」


ーーなに?



ーーガシッ。


「いっ、何しやがるダス…」

「オヤジ。くだらない話ばかりしてないで早く会計してくれないすかねぇ?ーーーこれ以上余計な事言うのなら、この腕へし折るすよ(ボソリ)」

「お、おお。すまねぇ。さ、さっさとやらねェとな」


詳しい話を聞こうとした時、ダスティさんが山賊オヤジの話を遮る様に腕を掴み、何事か耳元で話した。

するとオヤジのダルそうな態度が一変、キビキビと袋詰めし始めた。


ーーいやいや、それよりも。



「ダスティ」

「ノーコメントす」

「……ダ、ス、ティ〜☆」

「ぐはっっ…ノ、ノーコメントすぅ…っ」



ち。上目遣い攻撃も効かないか。


まぁいいか。伝手はまだあるからな。







◆◆◆◆◆◆◆







「うぐっ。あの上目遣いは何すか?天使すかっ!?それとも小悪魔すかっ!?」

「上目遣いって……してたかァ?ボウズの顔なんてマフラーと帽子で殆ど見えてねぇぜ?」

「オヤジの目は節穴すかっ。あのキラキラとした宝石の様な澄んだ目で見つめられると、ついポロリと答えそうな自分が怖いす」

「…………ダスティ、オメェ」

「ははは、はぁ。護衛として失格すね」

「……モテねぇからって、ついにそっちの道に行ったのか…」

「……は?道ってなんすか?」

「いやっ!いい。みなまで言うな。珍しいがいねぇて訳でもねぇしな!

ボウズの顔はよく分からんが、お貴族様らしい立ち居振る舞いも洗練されてるし、ちんまりしてて愛らしい小動物みてぇじゃねぇか。

だがな、ダスティ。身分差はあるぞ。それにもう一つ。ボウズは子供てーのを忘れちゃいけねェぜ。大人の分別を持てよ」

「………はぁ?…っ!?ち、違う、違うすよ!誤解す!」

「オメェ、説得力がねぇぜ。鼻の下伸びてメロメロじゃねぇか」

「〜〜〜っ!(今のセラフィーナお嬢様は少年の姿だったっす!)」

「大丈夫だ。誰にも言わねェから」

「誤解すよ〜〜っ俺はっ、おっぱいが大好きすーーーっ」



「…ダスティ、最低」

「コクコク(蔑んだ目)」





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