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二十一度

遅くなり本当に申し訳ございません。

m(__)m

先週更新出来る筈だと大嘘を言ったのは私です。


「ふーん、じゃセーラは父上に呼ばれて来たのか」

「はい。ベル様は休憩ですか?」

「ま、まぁな」


嘘だな、頬を流れる汗を見逃してはいないぞ。


あの後、女性に対する接し方を懇々と諭し(途中から虚ろな目になっていたが)つつも話してみると、流石は時期国王。英才教育を受けているのか頭の回転がやたらと速い。受け答えもしっかりしてるし年の割には考え方も大人寄りだ。

性格は子供らしく素直だし、俺様目線もご愛嬌と言ったところか。

からかい、いや思っていたより会話も弾み、途中からはお互いセーラ、ベル様と愛称で呼び合うまでになっていた。

大人に囲まれ、ブラザーズだけが一番歳が近かった私にとって初めての友人だ。



ベンチに座り暫く会話していると風が吹きフルリと体が震えた。冷たくなった手で少し下がったマントを肩に掛け直す。こんなに長時間外に出ているのは初めてではないだろうか。

私の震えを見たベルが空を見上げ首を傾げる。



「今日ってそんなに寒いかぁ?よし分かった、俺に任せろ」


ベルは得意気な表情でこちらに右手を向け何事かを小さく呟けば、私の体の周りをふわりと暖かい空気が取り囲む。

こ、これは私が焦がれてやまない温風ヒーター!?



「へへ、暖かいだろ?俺は風と火の属性を持っているからなら。これって調整が結構難しいんだけどそこはこの俺だからな!……な、何で睨むんだよ!?」

「………………別に」


大人気ないのは自分でも分かっているが、私が一番欲しかった火の属性、しかも風との混合魔法で長年(三年程)恋い焦がれていた暖か温風ヒーターをあっさりと再現して見せたのだ。メラメラとじぇらしぃーが湧いてくるのは仕方がないでは無いか。



「…………」

「………あ、あのさ…」


沈黙に耐えきれなくなったベルが早口のまま言葉をまくし立てる。


「セーラはどんな男性が好みなんだ?

因みに俺は第一王子だし、風の一等星持ちでしかもカッコいいだろ?だからたくさんの女にモテるんだからな!なあなあ、俺凄いだろ?」


…?…ああ、女性が少ないこの世界で、大勢の女性達からアプローチされるのは何よりも自慢になるのか……ふっ、くだらない。

どうだどうだ、と上目でこちらを伺うベルに私は両手を合わせ、にっこりと満面の笑みで褒め称えた。


「わたしのこのみはおとなのだんせいですよー。でもベルさまはすばらしいですおっとこまえーです。ベルさまさいこー、セーラもびっくりすごぉいですねー」

「……何か違う。嬉しくない」


ワガママなお子様である。






「え?」

「だからセーラは婚約者はいるのか?普通女性は生まれた時には5、6人いるもんだろ?」


モテるの話題から婚約の話に飛び、その内容に困惑した。

婚約者?、、聞いたことは無いな。

常日頃から結婚はしなくていい、一生養うと言っている家族たちだ。各方面から打診はあっただろうが、パパさんが笑顔でバッサリと切り捨てる光景しか浮かばない。


「聞いたことはありませんのでいない筈です。ただ婚約者は五人も六人も要りません。一人でいいです」

「何でだ?伯爵家のローゼなんか10人は居るんじゃないか?図々しくも俺を11人目にしたいらしいけどな。え?何でかって?王族と結婚すればいいことづくめだぞ」


10人は凄いな。

下世話だが将来体が持つのだろうか。

何でも王族と一度婚姻を結び下賜された際には、箔がつくらしい。

地方の下級令嬢でも選び放題だとか。


「だから母上なんか俺を生んだ所為で正妃になってしまったと、いつも文句言ってるぞ」


……本っっ当にロクでもない結婚事情だな。

当たり前の様に話すベルの瞳に寂し気な陰りが見え、思わず背伸びをし高い位置にある頭を撫でる。

パパさんの癒し効果には及ばずとも、気持ちが伝わればいい。

大人しく撫でられるままでいたベルは泣き笑いの様なヘニャリとした笑顔をみせた。


「……お前本当に3歳なのかよ…怖くて優しくてまるで年上みたいだ…うん、でもやっぱいいな。お前がいい。

おいセーラ、、どうしてもって言うのならお、おおおおお俺の嫁にしてやってもいいぞ」

「謹んで御断り致します」


撫でる手を止め間も置かずスッパリ切ると、ベルは断られるとは微塵も考えていなかったのか目を真ん丸にしている。


「な、何でだ?あ、そうか。前に姉上が言っていた宝石部屋だな!たくさんの宝石を飾った部屋でプロポーズされるのが女性たちの憧れなんだろ?」


縦ロール、キサマ弟に何を教えている。

…いや、もしかしたら縦ロールの言う宝石部屋は、本当にこの世界の乙女たちの夢なのかも知れない。

しかしロマンチックどころか欲望だらけの部屋だと思うのは私だけだろうか?


「いえ、結構です」

「んじゃ、前にどこかの香水くっさいババアが言ってた恋愛小説にある、二人だけで星空の下ダンスをした後で、でっかいダイヤの指輪を渡すやつか?」


妄想の恋愛小説の筈なのに、でっかいダイヤの指輪のくだりがロマンチックな雰囲気をぶち壊し現実世界に戻している。


「寒い夜空の下で踊る意味が分かりません。馬鹿ですか?風邪ひきたいんでしょうか。

ご安心ください、私は全く興味ありません。百歩譲って踊らなければならないのなら暖かい室内でお願いします。

…はぁ、ベル様は何処から役にも立たない無駄な、いえ、その様な女性に関する情報を仕入れているのですか?」

「え?寄ってくる女性たちがいろいろ教えてくれるぞ。自分はこんな風に言われたいとか、こんなの貰ったら嬉しいとか。面倒くさいからあんま聞いてないけどな。

因みに今王都で一番流行りは、俺でも知っている有名な恋愛小説だぞ。来月15巻目が出るやつで、『女の子はお砂糖とスパイスと素敵な宝石で出来てるの』

変なタイトルだけど、なかなか手に入らないんだよなぁ。皆んなそれを参考にプロポーズするのが流行ってるからな」


微妙に何処で聞いたフレーズだな。


「……どの様な内容で?」

「例えば頭から足元まで宝石で飾ったやたら顔の良い男が『私の全てのを受け取って下さい』とプロポーズするとか、愛を証明する為に全身ハチミツ塗れにした後、冬眠明けの熊の巣穴に突っ込むとか…そそそのだな、魔王とか熊は無理だけど他はセーラが憧れるなら、まま真似してやってもいいぞ」

「嫌です。結構です。それに私は将来、常夏の国ハノアに永住しますので御断りします。ごめんなさい」

「常夏って、セーラはそんな事で俺の求婚を断るのか!?」


そんな事だと?

こっちは死活問題だ。

無神経な発言にジロリと睨めば、ベルは一瞬だけ体を震わせたが直ぐに気を取り直した。


「じゃあじゃあ、俺が今みたいにセーラを暖かくしてやるから問題は無いよな!」

「問題?大有りです。ベル様はずっとこの状態を維持できるのですか?食事も睡眠中も離れていても」

「…た、多分」

「多分では困ります」

「じゃあ絶対だ!成人するまでに効果が持続する魔法か魔法道具を用意するから待っててくれよ。だからハノアには行くな!命令だからな!」


肩に手を乗せるジルの表情は真剣そのもの。強い意志を込めた瞳で私を見ていた。


ーードキッとした。


子供なのにこんな表情も出来るのかと。



……………ん?どき?


…いやいやいや。無い無い。まだ十歳ぐらいのお子様にトキメキを覚えるなんて、気の所為だ。私は断じてショタコンではない。

体は幼児、心は大人なのだ。どちらかと言えばパパさんやダスティさんぐらいの年齢の渋い大人の男性が理想……私の相手は周囲からロリコンと言われるだろうか?性癖にとやかく言うつもりは無いが、俺は幼女が好きだっ!と言う男性とお付き合いしたらしたで若干怖い気もする。

第一、正式では無いにしろこれって公爵家として断ったらどうなるのだろう。パパさんの事だから万が一にもないだろうが。

ぐるぐると混乱している側から、セーラセーラと促す声がするが、少し待て。忙しい男は嫌われるぞ。

暫し熟考した後、出した答えは。



「…ま、前向きに検討します」


日本人の秘儀、前向きに検討します。

NOと言えない日本人の返し技の一つ。信頼度は五分五分、つまりは保留。運が良ければ叶えられ、運が無ければ検討しました結果残念ですが、で締め括られる。


しかし愛想も可愛気もない私の何が気に入ったのか理解できない。飴と鞭作戦が効き過ぎたのだろうか?

一時保留の意図に気付かず了承したと感違いしたベルは、真っ赤な顔を満面の笑みを浮かべ、感極まり抱きしめようと両手を広げて…って、ち、ちょっと待て。ストップストップ!伏せ!



「セーラ!俺、ガフッ!」


ベルは両手を広げたまま私の横をすり抜け、前のめりにベンチからずれ落ち地面に倒れた。



おれがふ?

…って、エンニチーッッ!?



いつの間に来たのか、気絶したベルの頭上でドヤ顔で大きく胸を反らすエンニチの姿。


なに?私が暴漢に襲われそうになっていたから助けた?そうかそうか、ありがとうエンニチ。



でも、君が今踏んでいる少年は一応次期国王だから取り敢えず頭から降りようか。






◆◆◆◆◆◆◆






「ご報告致します。ルイベット様が廊下で意識を失っているところを発見され、医務室に運ばれました」

『予想どおり過ぎて面白くないな。(芸人)失格』

「はぁ?何がだ?」

「失礼致します。ご歓談中申し訳御座いません。逃走中のジグベルト様ですが中庭で意識を失っているところを発見致しました。側にいたご令嬢と共にただいま医務室に向かっております」

「こちらもですか。もう一捻りあっても良かったのですが、全く無いとは。(喜劇役者)残念ながら失格ですね」

「え、だからお前らなんの査定!?」





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