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2.兄妹喧嘩(ラウダトゥール✕ユースティティア+アウタディエース)

「お兄さまの、馬鹿ッ!!!!」


 朝早くから聞こえてきたそんな声に、ユースティティアは驚いて美しい紫紺の瞳を丸くした。その声の主にはすぐに察しがついたが、彼女の口から零れたと思われる言葉は、未だかつて聞いたことがないものだったからだ。

 そんな風に驚いて足を止めていたユースティティアの目の前で、この国の王太子であるラウダトゥールの居室の扉が少し乱暴に開けられたかと思うと、美しい顔を怒りで赤く染めたアウタディエース王女が姿を現した。

「待て、ディーエ!」

 余裕に満ちてどこか人を喰った態度が常のラウダトゥールの、少し慌てたような声が聞こえてきてユースティティアは軽く柳眉を跳ね上げた。そして素早い足さばきでアウタディエースに歩み寄る。

「……っ、お義姉さま」

「大丈夫? ディーエ」

 可愛い義妹の美しく結い上げられた艶やかな金色の髪を優しく撫でて、ユースティティアはさっとその小さな体を背後に庇った。

「お義姉さま……」

「事情は後で聞かせて貰うから、ここはわたしに任せて」

 にっこりと微笑みかければ、少女は安心したようにほっと息を吐いて頷いた。次の瞬間、僅かに片頬を赤くした美貌の王太子が開け放った扉から姿を現した。

「ディーエ! ……ティティ?」

 彼は扉の前で笑顔で立っている妻の姿に、驚いたように目を瞬く。そんな夫にユースティティアは意識してにこやかな笑みを向けた。

「おはようございます、殿。朝から、これは一体どういう騒ぎですの?」

「いや……」

 言い難そうに言葉を濁したラウダトゥールに、ユースティティアはすっとその美しい顔から笑みを消して、鋭い瞳を夫に向けた。

「そうですか……わたくしには、言えないことだと」

「ティティ、それは……」

 ラウダトゥールが何かを言おうとしたところで、ユースティティアは背後にいるアウタディエースがぎゅっと彼女の背中に縋り付くのを感じた。彼女は安心させるように小さく義妹に肯いてから、キッと夫を睨みつける。

「貴方が何を企んでいるのか存じ上げませんが、ディーエを泣かせるようなことはなさらないと信じておりましたのに……見損ないましたわ。わたくしたち、実家に帰らせて頂きます」

「え、ちょっ! 実家って!?」

「さ、行きましょう、ディーエ」

「お義姉さま……」

 夫の慌てた声をすっかり無視して、ユースティティアはアウタディエースの小さな手を取った。そして妻に無視されて愕然としている夫を顧みることなく、さっさと優雅な足さばきで歩き出す。

 しばらく進むと廊下の向こうから歩いてきた背の高い青年の姿を目にして、ユースティティアは会心の笑みを浮かべた。

「アスト、ちょうど良いところに」

「……これは、妃殿下。おはようございます。朝早くからどうなさったのですか? 殿下は?」

 名を呼ばれたユースティティアの義兄であり、ラウダトゥールの補佐官であるアストラスはちっとも驚いた風もない鉄壁の無表情で淡々と疑問を口にする。そんな彼にユースティティアはにっこりと音がしそうな笑顔を向けた。

「殿下はまだお部屋にいらっしゃるはずですわ。わたくしたちはこれから家出致しますので、貴方、殿下を足止めしておいてくださいな」

「…………は?」

 無表情が常の顔を珍しく顰めて見せて、アストラスの唇からどこか間抜けな響きの声が漏れた。そんな彼の様子に構うことなく、ユースティティアは追いかけて来る足音に気づくと少し力強くアウタディエースの手を握り直した。

「あの人がこの子を泣かせたので、わたくしたち実家に帰ることに致しましたの。と言うことで、説明は後で致しますわ。後はよろしくお願いしますね」

 反論を許さない口調で言うと足早に、それでいて優雅さを失わずに歩き出した美姫の後ろ姿を、アストラスはしばし見つめて。

「……やれやれ……」

 きっと妹たちが来れば両手を挙げて歓迎するだろう妻を思ってため息を吐くと、アストラスは命じられた足止めをするために少し慌てた様子で歩いてくる主へと向き直ったのだった。

ラウダ「ちょ、邪魔するな、アスト!」

アスト「何を仰ってるんですか、殿下。これから仕事ですよ。痴話喧嘩は後にしてください」

ラウダ「後にしたらシアに邪魔されるだろ!」

アスト「でしょうね。自業自得です」


とかいうやり取りをしてそう。

喧嘩の理由も決めてあるけど、長くなるので割愛。

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