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破邪の利剣  作者: 武嶌剛
壱幕 旅鴉
4/12

警告

 赤い夕暮れの輝きが、浮かぶ雲の合間を滲ませて、地上に長い影を落とす。


 屋敷の門の前に、人影は二つ。ちょうど役目を終えた女剣客が別れを告げて、村の主に見送られているところだった。


「この御恩、けっして、忘れませぬ。年の明けて今頃の季節。また、おいでくだせぇ。そん時には、せめてものご馳走を……」

「礼はいらぬと申している。わたしのできることは、アヤカシを斬るだけ……。これより先、作物を育て、村を実らすは、御仁たちの力にしかできぬことよ……」

「ええ、ええ……。」


 老人が、腰を低く、頭を深々と垂れて、礼をする。

 視線を落とせば、彼もずいぶんと痩せていた。着物から覗く腹は、肉がそげて、あばらが浮いている。きっと、村全体がそのように飢えているのだ。


 ゆえに、あぶれる者がいる――


 女剣客は、塗傘のふちを目深に構えると、


「……ひとつ、気をつけよ。苦しき時なればこそ、皆で一丸となって乗り越えねばならん――。アヤカシは、人の心の弱みにつけこむもの。また現れんとも限らぬ……」


 そう、釘を刺すように忠告した。


「はぁ……。それはたしかに、おそろしいこと……ですがな、村のモンは家族みたいなもんでして……大丈夫、かと……」

「……あの子もか?」


 そう切り出すと、ぎくりとしたように老人が動揺した。

 ふっと、ため息を吐いて、背を向けると、女剣客は最後にこう言い残した。


「よいか。人が円満でいればアヤカシは基本的に寄りつかん。くれぐれも、隙を作られるなよ……」


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