表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/19

第六話:友達は選びます

 葬儀が始まり、故人の安息の為に祈りが捧げられる。

 暖炉はあるが、放火事件と言う事に配慮して点けられていない。……と言う事は、土砂崩れ等で生き埋めになった人の棺は、土葬しないのかな?

 コートを脱がなくて良かったのは、この為だったのだろうか?

 代わりに、火属性の【ギフト】を持っている人達が温風を起こしている。後でカルさんに聞くと、火を出さずに空気を温める事が出来るのは、上級以上との事。

 尚、この大聖堂に墓地は無い。その為か、王侯貴族は屋敷の敷地に納骨堂が在り、そこに埋葬されるらしい。なので、葬儀の後、王都の南西にある墓地まで移動しなければならないのだが、これだけの数の棺を移動させるのは大変ではないだろうか? どれぐらいの時間がかかるのだろう?



 聖歌斉唱や聖水によるお清め等が済んだ後に、会葬者の受付が始まった。

「第二王子シリウス殿下の御成ーりー!」

 張り上げられたその言葉に、私以外の全員――警備の神聖騎士達を除く――がサッと跪いた。椅子なんて置くスペースは無いので、全員立っていたのだ。

「フローラは良いんだよ」

 慌てて彼等に倣って跪こうとした私に、カルさんがそう囁く。

 シリウス殿下は、黒い髪の美少年――恐らくビシュヤ王国の第二王子様――と護衛らしき黒いコートを来た数名の男性を従えてやって来た。

「シリウス・エル・ゾルゾーラだ。ゾルゾーラ王家を代表し、ユーアン会長と一族郎党の逝去を悼み、謹んで哀悼の意を表する」

「態々御忙しい中ご参列頂きまして、ありがとうございます」

 皆跪いて顔も上げない中で私だけ殿下の相手をしているから、落ち着かない。しかも、シリウス殿下は、同じ人間とは思えない程の美少年である。

「ユーアン会長には、成人してからの返済と言う条件で大金を貸して貰い、感謝している」

「大金を……?」

 証文は何処に在るんだろう?

「ああ。護身用に私兵が欲しくてな」

 シリウス王子は後方の男性達を振り向いた。10代後半から20代だろうか? 全員男性かと思っていたが一人女性……いや。違うな。腰の位置からして男性だ。一見美少女に見える彼は、シリウス殿下程ではないが可也の美少年だった。

「と言うのは表向きで、糞兄貴の親衛隊にするには勿体無いから奪ってやった」

 えー? でも、第一王子の親衛隊なら何れ国王の近衛になるんでしょう? 名誉とか欲しかったんじゃ……? あ、でも、『天級』の方が地位が上だから、シリウス殿下の親衛隊の方が良いのかな?

「シリウス。こんな所でそんな汚い言葉を使うものじゃないよ」

 黒髪金目のキラキラした美少年が……ん? キラキラ? ……まさか、これは一目惚れと言う奴だろうか? でも、別にドキドキしてないけど……?

「あんな奴、糞でも上等な表現だが……失礼した。フローラ嬢」

 美少年が糞だなんて言わないで欲しい。

「いいえ。それにしても、随分軽蔑していらっしゃるんですね」

「汚兄様をよく知っても軽蔑しないのは、汚妃様ぐらいなものだろう」

 脳内翻訳自重しろ。

「シリウス。『天級』なんだから、発言に気を付けて。ラヴィータ殿下を貶したら、君を次期国王へと推す声が増えるよ。君もそれを望んでいるように見えるからね」

「それは困る……」

「どうして、そこまで軽蔑していらっしゃるんですか?」

 私が尋ねると、シリウス殿下は遠い目をした。

「子供は知らない方が良い」

 一体、何を知ったんですか?! 知りたい様な、知りたくない様な……。


「ラナ・エル・ビシュヤです。同じ『天級』として、深く哀悼の意を表します」

 黒髪金目の美少年は、思った通りビシュヤ王国の王子様だった。キラキラしているから、天使か何かの神聖な存在の様な印象だ。

「キラキラして見えるだろう?」

 シリウス殿下が確認して来た。私だけにキラキラして見えるのではないようだ。

「ラナは俺と同じ『天属性天級』だ。【ギフト】は同じ級でも強さに差が有ってな。理由は【ギフト】を使い熟しているかどうかなんだが……。『天級』の【ギフト】を使い熟せるようになると、このようにキラキラと後光が差す」

 これ、後光なんだ。もっと眩しいイメージだったけど、まあ、神様とかじゃないしなぁ。

「あの……失礼かとは思いますが……暗い所で光りますか?」

「うん。光るよ」

「ラナが発光しているんだから、光るに決まってるだろう」

 ラナ殿下は微笑ましげに、シリウス殿下は呆れたように答えた。

「あ、そうですよね。……あれ? じゃあ、私も後光が差すようになる可能性が……?」

 私、後光が差す様な立派な人間じゃないんだけど。

「そりゃ、あるな」

 よし! 使い熟さない程度に使い方を覚えよう!



 暫くして、灰色の髪の少女が男性を従えて、シャナリシャナリといった感じでやって来た。赤い靴で。

「メジュフェ商会会長ティティ様です」

 アラクネさんが教えてくれた。

「初めまして、フローラさん。あたくし、可哀相な貴女とお友達になって上げに来ましたのよ♪」

 帰れ。

「貴様! 無礼であろう!」

 神聖騎士達が気色ばんで声を上げた。

「無礼だなんて。お友達は対等なものでしょう?」

 ツリ目を細めてティティは微笑んだ。

「貴様のような……赤い靴を履いて来たような奴が、フローラ様と『お友達』?! 寝言は寝て言え!」

「何がいけないの? あたくしは遺族じゃないんだから良いじゃない。あたくし、赤が好きなの。だから、ほら!」

 ティティがコートのボタンを外すと、赤いワンピースが露わになった。

「素敵でしょう、コレ?」

「摘み出せ」

 シリウス殿下が命じる。

「キャア! 何をするの!? 放して!」

「お嬢様を放してください!」

 ティティは神聖騎士に引き摺り出された。

「不敬罪で処刑に致しましょう」

 司教が決定する。

「そこまでしなくて良いわ。一生、赤禁止で」

「破ったら?」

 何故か、シリウス殿下が確認して来た。

「一生が終了」

「ははは。良いんじゃないか? 何時まで我慢出来るか見物だな」

「……御心のままに」

 司教は不満げに引き下がった。


「そうだ。フローラに、俺の銀獅子騎士団を護衛として付けようと思うんだが」

 シリウス殿下の言葉に、護衛達は初耳なのか驚愕の表情を浮かべた。

「こいつ等の【ギフト】は上級だし、俺は自分の身は自分で守れるし」

「恐れながら、殿下」

 護衛の一人が、シリウス殿下に話しかける。

「彼には気の荒い女性達が付き纏っています。フローラ様の護衛に就いては、危険を増やす事になります」

 彼が顔を向けて示したのは、先程女性に見間違えた人物だった。

 失礼とは思うがとても意外だ。それだけモテるならジャニーズ系とかだと思っていたのに。

「気の荒い?」

 そこが引っ掛かったので首を傾げる。

「はい。以前、彼と会話をした女性が袋叩きにされ、全治一ヶ月の怪我を負わされました」

「……逮捕しないの?」

「逮捕しましたが、一部に過ぎませんので……」

 どれだけいるんだろう?

「我々も、同じ騎士団に属していると言うだけで敵視されておりますし」

「この国ではね」

 カルさんが私の耳元で囁く。

「同性と恋人になる事が珍しくないんだ。この国で『親友』と言えば、同性の恋人を指すから気を付けてね」

 えー!? ……だから、敵視されたのか。

「シリウスは大丈夫なのか?」

 ラナ殿下がシリウス殿下に尋ねた。

「俺に向けられた敵意を感じた事は無いな。『天級』だからだろうな。フローラも大丈夫だろう。流石に、悪魔崇拝者として処刑されたくは無いだろうさ」

「そうだと良いのですが……」



 結局、明日から銀獅子騎士が護衛として常時二名付けられる事になった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ