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第一話:【ギフト】のある世界

2014/10/09 シリウス王子の年齢を引き下げ。

2014/10/13 屋敷を警備していた人達がいた設定に変更。感応石→反応石に変更。

2015/03/28 社長を支配人に変更。

「あああああああああああああああっ!!!!」

 悲鳴を上げて意識を取り戻した私は、自分が生きている事を理解して愕然とした。一体、どういった奇跡が起これば助かるのかと。

「気が付いた様だな」

 ドアを開けて入って来たのは、絵に描いたような銀髪で青い目の白人美少年。……嫌な予感がして室内を見回す。病院とは思えない豪奢な内装だ。高級ホテルか・何処かの城か? この展開は、もしかして……。

 恐る恐る自分の身体を確認すると、記憶より腕が短く細く・手も小さくなっていたし、胸もストンと……そう、子供になっていた。

 やはり助かったのでは無かった。どう考えても伝説の通りに異世界に転生したのだ……。

 しかし、どうして、赤子の頃からでは無く今になって前世の自我が目覚めたのだろう? ……もしかして、あいつの転生体に出会った?!

「何が有ったか覚えているか?」

 少年にそう尋ねられ、私は、そう問われるような事が今世の私に有ったのだろうかと思い出そうとしたが、前世を思い出した代わりに今世の事は忘れてしまったらしい。今世の自我はどうなったのだろう? 消えたのだろうか? それとも、二重人格になっているのだろうか?

「そうだ。目は痛まないか?」

 そう問われて初めて左目を覆うように包帯が巻かれている事に気付いた私は、やはり混乱していたのだろう。同じ立場で混乱しない人間がいたらお目にかかりたい。いや、今の無し! 高確率であいつだろうし。

「痛くないです。あの……貴方は?」

 まさか、この少年があいつなのだろうか? でも、だとしたら、年齢に開きがあるのが不思議だ。

「俺は、シリウス・エル・ゾルゾーラ。知っているかもしれないが、この国の第二王子だ」

 お、王子様?! 何で王子様が此処に?! それとも、私がお城に?!

「で、思い出したか?」

「……いいえ。自分の名前すら……」

 前世がどうのこうの言っても頭がおかしいと思われるだけだろうし、記憶喪失と言う事にしておこう。実際、今世の記憶は喪失しているのだから、嘘では無いし。

「そうか……。無理も無い」

 シリウス王子は、痛ましげに目を伏せた。

「あの……?」

「お前の名は、フローラ・エル・ナディヤ。ナディヤ商会の会長の一人娘だ」

「ナディヤ商会……?」

 もしかして、大企業なのだろうか? だとしたら、誰かに誘拐された?

「ナディヤ商会はこの国で……いや、恐らく大陸でも随一の豪商だ」

 大陸一の財閥(?)だなんて、想像以上だった!

「それより……良いか? 心して聞け」

 これから言い難い事を語るのか、シリウス王子は目を逸らしてから決心したように私の目を見た。

「昨夜。ナディヤ一族は、毎年恒例の新年の集まりで、親戚一同が本家屋敷に宿泊していた」

 本家屋敷って、フローラの家だろうか?

「しかし、真夜中……何者かが火を放ち、屋敷は全焼した。生存者はお前だけだ」

 他人事のように、すんなりと脳がその情報を受け入れた。

「私だけ、どうやって……?」

 家族も親戚も助からなかったのに。

「住み込みの使用人の一人が、お前を抱えて窓から屋敷の外へ転がり出たんだ。『天級』の治癒の【ギフト】を持つ俺があの場に駆け付けなかったら、お前も助からなかった」

 使用人……。そうだよね。豪商なんだから、使用人の一人や二人……いや、十人や二十人雇っていても当然か。……と言う事は、どれだけの犠牲……?

 他人事の様なのに血の気が引いて行くのは、現実逃避しきれていないからだろうか?

「だが、俺の【ギフト】でも……左目は治せなかった」

 死ぬほどの大火傷を負ったのに、左目以外は火傷の痕も無く治っているのだから、誰が贅沢を言えるだろう? これが魔法なんて存在しない地球での事だったら、命は取り留めても、酷い激痛を伴う治療や長期のリハビリが必要なのだから。

「お気になさらず……。治して頂き、深く感謝しております。ありがとうございました」

「礼は要らん。完全には治せなかったし、火事になったのが『天級』のお前がいる家でなければ、出向いたりはしなかったんだからな」

「それでも、感謝しておりますので……」

 シリウス王子は、感謝されるのが恥ずかしいのか少し顔を赤くしてソッポを向いている。

「ところで、あの……【ギフト】って何ですか?」



 【ギフト】とは、この世界の人間全てが生まれながらに持つ、神から授かった力だ。

 基本的に、火・水・風・土の四属性。稀に、天・地の二属性が生まれる。それ等は能力の強弱で、天級・上級・中級・下級と分けられる。下級が一番多いな。

 属性も強さも遺伝する事は無いので、両親と同じ属性・等級になる事は珍しい。そして、【ギフト】の属性・強弱は先天的なもので、幾ら鍛えても変わる事は無い。

 ジヴィ教会の教えでは、『天級』は『神の使い』とされていて、ジヴィ教を国教とする国では王と同等かそれ以上に扱われる。俺とお前の名前に『エル』が付いていただろう? 『天級』の【ギフト】持ちの称号だ。だから、俺どころか国王や教皇を呼び捨てにしても構わないんだ。



「構わないと言われても、出来ません」

「そうか?」

 シリウス王子は不思議そうな顔をした。子供だから、遠慮無く呼び捨てにするとでも思ったのだろうか?

「因みに、俺は『天属性天級』。そして、お前は『地属性天級』だ」

「地属性は土属性とどう違うんですか?」

「地属性は、土だけでは無く植物も操れる。それに、『土属性天級』では出来ないが、『地属性天級』なら地震が起こせるぞ」

「やりませんよ!?」

 敵国に地震起こせとか命じられたらどうしよう?!

「安心しろ。『天級』にそんな事を命じる命知らずはいない。教会によって、悪魔崇拝者……魔女として処刑されるからな」

 それって、実際には魔女じゃ無くてもって意味だよね?

「今回の事件……犯人の動機が何かは知らんが、『天級』のお前が被害者である以上、犯人は魔女だ。悪魔崇拝禁止罪で、拷問の後火刑に処される」

「拷問までしなくても……」

「過去に一度だけ、犯人に同情の余地があった為に教会の反対を押し切って、悪魔崇拝禁止罪に問わなかった事例がある。500年ほど昔に、『地属性天級』が殺害された事件だ。しかし、その結果天罰が下り、町は住民毎砂と化した」

 殺された『天級』の人の悪霊の仕業という可能性は無いのかな?

「じゃあ、『天級』が犯人だったらどうするんですか?」

「『天級』が犯人であった場合は、悪魔崇拝禁止罪には当たらない。『天級』が犯罪を犯した場合、それは『神の意思』とされるからだ。勿論、その犯人を別の『天級』が殺しても、『神の意志』だ」

 犯人が『天級』だったら……何十人殺されようが、『神の意思』?! そんなの……納得出来ない!

「犯人の見当は付いているんですか?」

「いや。しかし、複数犯だろう。屋敷は火属性中級の【ギフト】で燃やされたが、屋敷周辺を警備していた者達は、地属性中級の【ギフト】で殺害されていたからな」

 警備員までいて、彼等まで殺害されたなんて……。

「どうして、ただの放火じゃなくて【ギフト】が使用されたとか、中級だとか判るんですか?」



 【ギフト】は、体内の『マナ』を使用して発動する。その為、【ギフト】を使用した場所には暫くの間、使用後の『マナ』が残存するからだ。

 さて、ジヴィ教会は、子供が10歳になったら『反応石』に触れさせて【ギフト】を確認するよう義務付けている。これは、『天級』を見付け出す為だ。『神の使い』に、知らず無礼を働かずに済むようにな。

 では、何故生まれて直ぐに確認させないのかと言えば、昔はそうしていたのだが、近年下級の捨て子が余りにも多くなった為だ。

 変更に踏み切る切っ掛けとなったのは、20人以上産み捨てた下級の女だ。中級や上級なら、軍で優遇されるからな。軍に入らなくても、冒険者として成功するかもしれない。だから、中級や上級を産んで裕福な暮らしをと思ったらしい。しかし、産めども産めども下級ばかり。終には、近所で生まれた中級の子供を誘拐して御用となった。

 話を戻すが、その『反応石』だ。それを使って現場の『マナ』を確認した所、火属性中級と地属性中級が其々反応した。通常、火属性中級ではあれほどの火災にはならんが、油を撒いて【ギフト】を使ったようだな。



 『マナ』は魔力と思えば良いだろうか?

「10歳になる前に【ギフト】を使わせてみて、下級だと判ったから捨てるとかは無いんですか?」

「勿論、あるさ。だが、幼い子供は【ギフト】を上手く使えないのが普通だ。下級かと思って捨てたら、実は上級だったから軍で大出世とか。上級の【ギフト】の暴走で、死傷者多数とか」

 うわー……浅はか。他人を巻き込まないでよ。

「さて、余り長居をするのもなんだし、帰るとしよう。次に会うのは、来週の葬儀だな」

「殿下も弔問にいらっしゃるんですか?」

「ああ。ナディヤ商会は王宮御用達だし、お前が『天級』だから俺が行く」

「そうですか」

「葬儀の日程等の詳しい事は、商会の支配人達に聞くと良い。別室に控えている」

 立ち去ろうとするシリウス殿下に、声をかける。

「あの、色々とありがとうございました」

「礼には及ばん」

 ドアを開けて出て行こうとした時、何かを思い出したのかシリウス殿下は振り向いた。

「ああ、そうだ。此処が何処だか教えていなかったな。此処は……お前の父親の弟家族の家だ」

 じゃあ、この部屋は……叔父の? 叔母の? それとも、従兄弟の?

 何だか……申し訳無い。

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