第三部
私が気がつくと、綺麗な寝室のベッドに寝かされていた
殺風景だけど高価そうな家具が並んでいる。
和将とかけるは、わたしが仲間?と訪ねると、バツの悪そうな顔でゆっくり話し始めた
どうやら彼らは広島の暴走族らしい
規模の大きなチームらしく沢山仲間がいると言っていた
そして…かずまさは副頭…NO.2にあたる人物らしい
引いた…?と聞かれ、わたしは少し考えた
和将は好き…何をしてても和将は和将かな…
あまり深く考えないわたしはその結論に異議は無く、正直に言ってくれたことにお礼を言った
和将は微笑み、わたしの頭を撫でてくれた
わたし…和将の手…大好き…
もっと好きになれそうな気がした。
ただ、かけるはカズを見ながらニヤニヤしている
和将はそれに気づき、(ゴッ)っと頭突きをかました
それからは三人でご飯を食べ、和将らの用事にわたしもついて行くことになる
未知の世界の扉を開けるほんの始まりに過ぎないことだった
「耳が痛い…」
『ぁー?』
「耳痛い!!」
『ははっ!』
『そのうち慣れらゃ』
「その前に中耳炎で死ぬ」
(ぼすっ)
『かぶっとけゃ』
「前見えない…」
『高いんゃから汚すなゃあ?』
「かけるに売る」
『いくらで?』
『俺のプレミア付きゃど?』
「…千円?」
『ひこずりまわすか』
「大切にかぶります」
『おし』
そんな会話が楽しくて周りの騒音…
もとい…バイク、車の音が気にならなくなってきた。帽子のおかげ…?
怖い…本当に怖い…トイレに行った帰り、いかつい兄ゃんが喧嘩している所に出くわした。
《なんゃこら!!》
《ぁあ?!》
一人がすごい喧騒で叫んでいる
その相手はものすごくゴツい…おじ…?ぃゃ…お兄さん。
何も言い返さなぃ…何でだろ
トイレの割れた小窓から見ているわたしは、早く終わるのを願ってただ見ている…。
大きな音がした
しばらくしてそっと覗いてみると…
大声で叫んでいた兄ゃんがうずくまっている。
その時
…大きな人と目が合った…
殺される?
死ぬ!!
しゃがみ込むわたしに気づいた大男は…《もう大丈夫じゃけ出て来てかまんょ》
それだけ言うと、足音が遠のいていった…
急いで和将の所にもどると、遅いと怒られた
言い返す暇もなく大きな声がした
〔ヤマザキ!!出てこいや!!〕
《はい》
〔表でころがっとるアレはなんじゃぁ〕
《目つきが気にいらないと言われまして》
〔それで手え出したんか〕
《いえ、これを持ってました》
〔…シャブか〕
《胸ポケットに入っていました》
〔ちっ…クソガキが…〕
〔詳しい事は後で聞くけぇ、すまんかったな〕
《はい》
《失礼します》
静まり返った海岸ばたの倉庫の中は、声が良く響いた。
わたしは和将にあの人ら誰?と聞くと
でかい方が山崎たかまさ、仲間の一人らしい。
そしてこの騒がしい場を一瞬でおさめた彼は…
加賀城大志、このチームのリーダーでNo.1だと教えてくれた
物腰やわらかそうなお兄さんだった…
短めで揃えられた綺麗な黒髪
黒いシャツに大きめのGパン
顔は…かなりいいと思う。
さわやか系の面構えで、…口の悪さがなかったら…と思うと少しへこむ自分がいた。




