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逝きたい人・へ  作者:
11/11

第十一部

灰色ノ空ガ眩シイ朝ダッタ

暖かい。

目が覚めるとあなたが居た。

いつ起きたのか、漫画を読んでいる。

腕枕をしてくれて、彼の胸の中で見る夢はとても幸せだった…気がする…

『…起きたがか?』

「んー…」

『ヨダレふいとけ?』

「んー………」

(ぎゅ…)

『ぉい…』

『俺の服…』

「ー…………」

『寝んなゃ…』

『服…冷たい…』

昼過ぎ。起きると隣には冷たい笑顔をした和将が…怒ってないと口では言うくせに…目が笑ってない

顔の筋肉だけで笑うその様は…私をびびらすには十分で…

…謝ろう…と決心するまで時間がかかった。

ドキドキしながら近づいて…後ろから抱きしめてみる。

怒ってます…?

と聞くと、

どう思う?

と帰ってきた。

彼の標準語に怯えた。

ごめんなさい…っ!と力一杯謝ると

和将は近くにあったテーブルに飲みかけの珈琲を置いた。

と、その時。急に自分の体が浮いた、びっくりして暴れることすらしなかったが。

寝室まで一直線に向かう彼に迷いは無かった。

寝室のドアを乱暴に開け、ベッドへと放り出された。

勢いよく落ちた私はしばらく目を回していた。

『…かおり』

「…んぁ…」

『俺の顔見えちゅうが?』

「ぅ…」

「!!」

「ひぇ!?」

『なん?俺の顔になんかついとぅが?』

「…違っ!!」

「ゃ…近い!!」

『黙ってみぃ?』

「へ…?」

『しー………』

「…っ!」

(ちゅっ)

「…!!?」

『顔…赤ぃど…』

「な…?!」

『これぐらいで真っ赤になっちゅうが…先が見えながなぁ』

「…先?」

『そ。先。』

(ぐぃっ)

(ちゅ…くちゅっ)

「っー……!?」

(ヌルッ)

「ー……!!!」

(どんっ!!)

『…痛っ…』

「ばっ…!」

「ばかぁ…」

『ゃべ…』

和将は部屋を早足で出て行った。

私の体に残った恐怖感と…まだ未体験だった感覚はなかなか消えなかった。

しばらくして私も部屋を出たが、和将の姿は無くホッとした自分が居た。

携帯を開くと由実さんから着信があった。

かけ直すと、遊びに来ない?と誘われた。

由実さんの自宅へと向かう足取りは早足で、どこか和将の家から逃げるような気持ちに後ろめたさがあった。

それでもいつもより早く着いた由実さんの家…今更家には帰りたくない気持ちが膨れ上がって…今日のことがショックで…頭がグチャグチャで…由実さんのマンションの前でしゃがみ込んでしまった。

…なにしてるんだろ。そぅ思い立ち上がるのに十分は必要とした。

インターホンを押す。二度三度押してみるが出てくる気配がない。

…トイレかな…?

ケータイに電話してみた。

通話中だょ…

気づかないのかな…ドアを押してみると開いていた。

不用心極まりない

そっとドアを押し開き、由実さーん?と呼んで見る。

するといきなりリビングから由実さんが飛び出した。

いや…飛び出て来た…かな?




〈香織?〉

「…おじゃましてます」

〈ぅんっ〉

〈早く入りなっ〉

「はいっ」

由実さんの部屋は可愛い。

ぬいぐるみがキチンと並んでいたり。

白を基調としたヒラヒラとしたものが多く揃えられている。

私は淡いピンク色のソファーに座り、出された紅茶をすすった。

そしてさっきから気になってたことがある。

………

由実さんの挙動が…不信だ…

お茶をこぼす

机の角で足をぶつける

ソワソワと落ち着かない。

ケータイをチラチラと見る。

……

……

……

……

私的診断結果。

「…和将から連絡がありました?」

一瞬その場の空気が止まった…気がする。

「しかも今日のこと…全部知ってたり…」

〈なっ…なんでわかったの?〉

「由実さん…挙動不審でしたょ?」

〈…やっぱり急には香織相手に秘密は無理ょね…〉

〈うちは香織の口から聞こうて思ってたんよ?〉

「…和将はなんて…?」

〈…やっちゃいけないことしてしもうたって凹んでるみたいよ?〉

「…へー…」

〈香織は…その…嫌やったの?〉

「…キスですか?」

〈…ハッキリ言うね…〉

「嫌…って訳じゃないんですよ…」

「…恥ずかしいんです…」

〈全てが初めてのことやもんね…〉

「私の…想像より…」

「本当のキスはなまめかしかった…です」

〈怖かった?〉

「…はぃ」

〈和将が?〉

〈ベロちゅーが?〉

「…っ!!」

「…どっちも…ですね…」

「急にうちの知らない男の人になった気がして…」

「怖かった…です…」

しばらく話をして居ると、由実さんのケータイが鳴り、電話に出た由実さんが顔を青くして絶句した。

そして…私に向かって、…落ち着いて聞いて?と、念を押す。

何だろ。由実さんの言葉を待つ。

ゆっくりと彼女の口が開いた。



〈和将と香織ちゃんが…エッチしたって話が…〉

〈チームの中で広がってるみたい…〉

「……はぃ?」

〈今日和将に呼び出しがかかるょ…〉

「…なんで?」

「?てかエッチしてないですけど…」

〈香織ゎ…今チームの中で何て言われてるか知ってる?〉

「…?」

〈チェリーちゃん〉

「…?」

「…!?」

「普通女に使いますか?!」

〈まぁね…〉

「…最っっ悪ですね…」

〈まぁ…それを汚したらしい和将は…〉

〈みんなに真相を聞かれるみたいね…〉

「…汚されてないですし…和将は一応私の彼氏なんですけど…なんで…」

〈…にぶちんね…〉

「!?」

〈まぁ…いずれ分かるでしょっ〉

家に帰る。

和将は居なかった。チームの所へ行ったのだろうか…

ギンジロにご飯をあげると、しばらくテレビをぼーっと眺めていた。

P.M10;00

遅いな…

さっきから時計ばかり気にしている。

…これって……

「付き合う前の…あの夜に似てる…」

和将のことが気になって…気になって…眠れなくて…

結局朝方にワン切りみたいなことしちゃったんだっけ…

ただ声が聞きたくて…

でも結局私寝ちゃったんだっけ…

それから…それから………

和将は電話を何回もかけ直してくれた…それで…付き合ぅって話しになって………

和将に逢いたい…

しばらくうずくまっていると、インターホンが鳴った

帰って来た?!

急いで玄関を開けた…そこには…

最近チームに入った新顔の人達が居た。

須藤

中川

鈴村

……もう一人の名前が出てこないゃ…

「あの…和将はまだ帰ってません…」

《知ってるよ?》

《今香織ちゃん…一人だよね?》

「…はぁ…」

中川の話方は子供扱いされてるようで腹が立つ。

次に名前がわからない人が話かけてきた。

《これが和将の女?!》

《マジ可愛いーじゃんっ!》

…きしょい…

頭悪そうな喋り方でジロジロ見て来る。あとの2人は後ろで何か話してる…

急にお腹を殴られた。

痛みが体中に一瞬で広がった。

…気が付くと私は家の寝室で寝転がっていた。

…ただし…衣服を身につけてはいなかった。

下着だけの姿で起き上がるとお腹に鈍い痛みがあった。

訳がわからない。

霞む目をこすりながらぼーっとしていると、ドアが開いた。

《おい》

《起きたぞ》

その声と共にさっきの男達がゾロゾロ入って来た。

《香織ちゃんって和将とまだやってないんだろ?》

《俺らに香織ちゃんの処女ちょーだい?》

「…はぁ…?」

…目が霞む。

こいつらの声が響いて聞こえる。

《ああ。あまり動かない方がいいかもね》

《こんなの打っちゃってるし》

目の前には注射器の中にある蛍光色の液体。

《体熱いでしょ?》

《俺らが冷ましてやらなきゃなぁ?》

…笑ってる…

こいつらが言っている言葉がわからない。

頭が…重い。

その時、急に私の体がベッドに押さえつけられた。

意識が驚きと共に戻る

暴れた。

必死で抵抗するが男達の力にはかなわない。

腕を押さえつけられさらに薬を打たれる。

体が過剰に反応した。

泣き叫んだが、呼びたくない名前があった。

和将…

こいつらの前でこの名前だけは…口に出したくなかった。

体が熱い。頭が…意識が飛びそう…











和将…どこにいるの?

逢いたいよ…

苦しいよ…

ドコ…?

助けて…かずまさ…



目が覚めると…病院のベッドに寝ていた…

右手に感触がある……

暖かい…

「かず…?」

『…!!』

『香織!!』

『起きたんか!』

『どっか痛いとこないか!?』

『気持ち悪くないか?!』

真剣で…でもどこか泣きそうな顔で話かけてくる

『どっか痛いんか…!?』

「…ん…大丈夫…」


『このままずっと起きんかと思った…』


「かず…」

重い鉛のような手を和将に向けて差し伸べた。

「おかえりな…さい」

少し微笑えることができた。

和将はソッと抱きしめてくれた。

肩が…少し震えてる…

だいぶ力も戻ってきた。

その分強く和将を抱きしめた。

「好き…大好きよ…」

『うん…』

その後は大変でした。レディース!?の姉さんらが泣きながらお見舞いに来たり。その時は由実さんも泣いていた。

他にも仲の良かった人達が次々とお見舞いに来てくれた。

ただ…あの日以来和将が来ない。

仕事が忙しいのかな、と諦めていた。

そして、1ヶ月後。退院した。

由実さんが迎えに来てくれたが、車の中でもあの時の話は出なかった。

気を使っているのだろうかいつもの由実さんだ。

電車を使って私の自宅に戻った。

鍵を開けると、広い空間が寂しく思えた

実家の方に帰ることにした

実家に着くと、

元私の部屋に入り、殺風景な床に寝転がった。

あの日のことを思い出そうとするが、途中から記憶が無い。頭が痛い。

思い出すことを諦めて窓から空を見上げた。

一時間くらいそのままぼーっとしていると、玄関から音がした。

(バタン)

無視を決め込むと、階段を物凄い勢いて駆け上がる音が聞こえた。

…お母さん?

ドアが轟音を立てて開かれた。

そこには

和将…?

「和将!?!」

ビックリして勢いよく起き上がった。

そこにはスーツが着くずれて汗だくだくの和将が立って壁にもたれかかっていた。

『なんで…』

『こっちに帰ってきとんど…』


「へ!?」

『なんで!!』

『俺んところに帰ってこんのぞ!!』

「ぃゃ…」

「忙しいのかなって思って…」

『こん…っっっ』

『ばか!!!』『…帰るぞ』

「…へ?」

『ほらっ』

「…ひゃっ!?」

かつがれたまま階段を降り、家を出て、前に停めてある和将の車に押し込まれた。

広島に向けて真っ直ぐ進む車の中で、

気になっていた話を出してみた。

「…嫌いにならないの?」

『…あ?』

「だから…もう処女じゃないから…」

『…なに?』

「へ?」

『…今…なんて?』

「だから…っっ」

『お前はまだ処女やぞ?』

「……なんで…」

「うち…確かあの時…」

『記憶が無い』

『違うがゃ?』

「ぇ…うん…」

『お前やられてねーがょ』

『新人の一人がゲロったが』

『あの日噂流して俺を家から離れさせたこと、目的は好きな女を自分らのもんにしよーとしたこと』『今そいつらが香織の所へ向かったこと。』

『全部話して…助けに行って下さいて土下座したがょ』

『…だから間に合えた…』

「……」

返す言葉がない

ただ…肩の力がドッと抜け、涙が溢れてきた。

我慢してた分。一気に泣きじゃくってしまった。

その間…和将はずっと肩を貸してくれた。





和将の家に着くと、一本のビデオテープがおいてあった。

香織

とだけ書かれてある。

和将がそれを私に渡した。

処分はお前が決めろ。

そう言い残して風呂場へ向かった。

…撮られてたんだ…あれ…

なんとなく再生してみた。

そこには、裸の私が暴れている。

男達が私の体を押さえつけて…

注射を…

あれ?

男が一人のけぞって倒れた…

…大事であろう所を押さえて……

そして…私から見て右側の男も…

そこでドアが開き和将達がなだれこんで乱闘……

あの2人は…?

ビデオを巻き戻してみた

そこで和将がお風呂から出て来て、丁度問題の場面。

和将が一言。

『えげつないな』

「もしかして…」

「これ」

「私がやっ…?」

『あれは不能決定やがね』

「…嘘…」

『俺にはやらんでよ?』

「!?」

「しませんっ!」

『じゃあ…俺は香織襲ってぇえんや?』

「やっ」

「それは…っ」

『いかんがか…?』

「その…」

『嫌?』

「…………」

「嫌じゃ…なぃ…」


『じゃぁ…』

(ちゅっ)

「…!!!」



この後の事はご想像にお任せします!

でも、この時が一番幸せでした。

長くつたない文章に目を通して頂いた貴方様、本当にありがとうございました。

よく目を休めてあげる事をお勧めして、後書きとさせて頂きます!





終わり

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