白一色
産み落とされた時から、私はその場所にいた。
白い壁、白い天井、白い床、白いトイレ、白いベッド、白い布団、白い服、白い人形……
食べ物と排泄物だけは色が付いていると教わった。
私は『ホワイト』という名前で呼ばれていた。
色の白という名前だそうだ。
ある程度のコミュニケーションを取れる位の物事は教わっていたらしい。
先生という人は、私と同じ白一色の物に包まれて、色々な事を教えてくれていた。
自分は人間という生き物で、白一色の美しい、何の汚れもない『ホワイト』なんだと言われていた。
私と違って『ブラック』もいれば『レッド』や『ブルー』といった色もあると教わった。
でも、その色は見たことがないし、教わらなかった。
だから、食べ物の色に白以外のものがあるのはわかるけど、その色が何色かはわからなかった。
頭がチクチクしだすと、ガーッと音のするバリカンというものでツルツルにされた。
こぼれ落ちる細かい白ではない色も、何色か教えてもらえなかった。
でも、相手が話している内容はわかる。
ある程度の言葉もしゃべることができる。
いつも食事を持ってきてくれる人は、全身真っ白で覆われていて私と同じ白だった。
食事を置いていくと、直ぐに部屋を出ていく。
おしゃべりをするのは、先生とだけ。
物心付いたときからずっと同じ生活。
生きるというのは、そういうことなんだと思っていた。
寝て、起きて、食事をして、先生と話して、寝る。
それが日常だった。
ある時、目が覚めたら、真っ白いベッドのシーツや服や下着が見たことのない色に染まっていた。
私の身体の中から食べ物が出てきたのかと思った。
そして、お腹も痛くなって叫んだ!
慌てて駆け込んできた先生は、身体は白かったけれど、顔が白ではなかった……
頭には私がバリカンで剃られて落ちる色、その他にも知らない色が顔にいっぱい付いていた。
更にパニックになった私は、先生の食べ物のような色の顔に飛び付いてかじった。
先生は勢いで倒れて、そのまま静かになったので、出された食事を食べ続けた。
固くていつもの食事と違って、全然美味しくなかった。
初めて出た部屋の外は、見たことのない色でいっぱいだった。
自分の部屋の中から見える正面の壁だけは、キレイなホワイトだった。
隣の部屋は、先生の顔から出ていて、私のベッドや服を汚した色のドアだった。
先生が握っていた鍵の束に、同じ色の鍵があった。
その鍵を使って、鍵と同じ色のドアを開けてみると……
中には私と同じ年頃の人間が、同じ色で統一された部屋の中にたたずんで怯えていた。
「私はホワイト、あなたは?」
「僕はレッド、君の身体にも僕と同じ色が付いているけど、ホワイトもキレイな色だね」
今まで感じたことのない、不思議な気持ちになった。
鍵と同じ色のドアを次々と開けていく。
「私はホワイト、あなたは?」
「私はブラック、他の色を2つも初めて見たわ」
たくさんの色と出会い、たくさんの色を知った。
私は急に恐ろしくなった……
先生?あなたは何色だったの?




