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『ブレイク・ネクサス』改訂版  作者: 嵗(sai)
第二部:ネクサス・ロジック

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第十六章:太平洋上の密約と剥がされた神話

16.1. コーヒーブレイクと情報の消滅


Ⅰ. 一万メートルの棺:RC-135V/WⅢのリズム


太平洋の漆黒の海原の上空、遥か一万メートル。


この高度では大気は希薄で、外気温度は零下五十度を下回る。その極限の真空に近い空間を、千姫一行を乗せた「RC-135V/WⅢ」――本来は戦略情報収集を目的とする大型電子戦機が、東へ向かって猛然と突き進んでいた。


機体の窓の外には、地上の喧騒から隔絶された、星々が散りばめられた宇宙にも似た深遠な闇が広がっている。時折、主翼の端で明滅する航行灯の赤い光だけが、自分たちが依然として物理的な世界に存在していることを証明していた。


この機体は、かつての爆撃機を原型としながらも、その内側には最新鋭の情報収集・分析機器が「移動要塞」のごとく詰め込まれている。だが今のこの機体は、一国の存亡を賭けた戦いの余韻に浸る、疲弊しきった乗員たちを運ぶ「空飛ぶ棺」でもあった。


操縦席コックピットでは、玄武が、彫像のごとき不動の姿勢で操縦桿を握っていた。


彼の視線の先には、何百もの計器と多機能ディスプレイが琥珀色の光を放っている。玄武の表情には、ネバダの死線を越えたことによる極度の集中と、肉体の芯に蓄積した重い疲労が入り混じっていた。


彼の指先は、まるで熟練のピアニストが難解なソナタを奏でるかのように、正確かつ無駄のない動作でスイッチ類の上を滑っていく。


この老朽化しつつも信頼性の高い機体を、米軍や他国の警戒網を掻い潜りながら日本本土まで無事に届けるという重責。そのプレッシャーが、玄武の寡黙な背中から重厚なオーラとなって滲み出ていた。


機内中央部、窓のない広大なコンパートメント。


そこは本来、言語学者や暗号分析官が並ぶ席だが、現在は緊急用の医療区画へと改装されていた。その中心で、リクトは、静かにベッドに横たわっていた。


リクトを取り囲むのは、秋吉と朱雀が即席で組み上げた、人類最高峰の生命維持システムだ。


彼の身体には、テロス・ギアと生体組織の癒着を安定させるための複雑なバイパスケーブルが、あたかも新たな血管のように張り巡らされている。


壁一面のモニターには、彼のバイタルサインがリアルタイムで刻まれ続けていた。規則的に波打つ心拍数。一定に保たれた体温。そして、脳幹の深層部で明滅する微かな電気信号。


それは、秋吉の構築した「ダミーシステム」が、少年の命という灯火を、風前の灯の中で辛うじて守り抜いているという、科学的な証明であった。




リクトの眠る医療区画のすぐ隣。


高度な暗号化サーバーが唸りを上げるコンパートメントでは、秋吉博子と朱雀の二人が、人智を超えた集中力で行っていた「作業」を、今まさに完遂させようとしていた。


二人の前には、数十枚の超高解像度ディスプレイが、冷徹な光を放って並んでいる。


数秒前までそこには、ネバダの戦場におけるリクトの全行動記録、テロス・ギアの出力ログ、さらにはアビス・ラの核を破壊した際の量子崩壊データといった、「日本国の秘匿技術」として、いかなる対価を払ってでも隠蔽せねばならない機密が、文字通り山積していた。


「……最終確認。ターゲット・ログ、テロス・ギア起動記録、並びにNCU(神経接続ユニット)との連動データ、物理消去プロセス……完了」


秋吉は、数時間もの間装着し続けていたヘッドセットを外し、肺の底にあるすべての空気を吐き出すようにため息をついた。


彼女の目は、画面から放射される強いブルーライトに晒され続け、白目が微かに赤く充血している。彼女の脳内では、未だに膨大なコードの残像が高速で明滅していた。


朱雀もまた、流れるような手つきでキーボードを叩き、情報の「墓穴」を掘り進めていた。


「了解。バックアップ領域のゼロクリア、キャッシュデータの揮発処理、および関連する全クラウドサーバーへのミラーリングも、完全に消去した。……いいか、これによって『ポイントN423』で行われた戦闘の痕跡は、地球上のどの公開ネットワークからも、そして、いかなる軍・諜報組織の秘匿データベースからも、物理的に抹消されたことになる」


朱雀は達成感というよりも、ある種の虚脱感に近い感覚で、派手に背もたれに体を預けた。


「これで、俺たちは何も見ていないし、何も知らない。……リクト君が何をしたかも、その結果何が起きたかも、世界からは『最初から存在しなかった事象』になった。完璧だ」


激しいタイピング音と冷却ファンの唸りが止み、機内に不自然なまでの静寂が戻った。


極限の緊張状態から解放された一同のために、千姫は無言で、持ち込んだ最高級の豆をミルで挽き始めた。


芳醇で力強い、コーヒーの香りが狭い機内にゆっくりと漂い始める。その日常的な香りは、先ほどまで「世界の終わり」を扱っていた者たちの鼻腔を突き、麻痺していた感覚を呼び覚ましていく。


千姫は、磁器のカップに注がれた褐色の液体を両手で持ち、その熱を感じながら、リクトのバイタルモニターを眺めていた。彼女の思考は、すでに日本帰国後の政治工作と、リクトの義体修復のためのリソース確保へと飛んでいた。


「……お疲れ様だったな。秋吉、朱雀。見事な手際だ」


千姫が低く、落ち着いた声で労うと、秋吉は小さく頷き、差し出されたカップを震える手で受け取った。


コーヒーの熱が彼女の指先に伝わり、蒼白だったその頬に、ようやく「人間」としての色が戻ってきた。


一万メートルの上空、神話の残滓を焼き捨てた彼らは、今、静かなコーヒーの苦味と共に、現実の世界へと帰還しようとしていた。


________________________________________


16.2. NCUの枷とネオ・メディカルへの宣戦布告


Ⅰ. 神経の鎖:解体不能の呪縛


太平洋の成層圏を突き進むRC-135V/WⅢのコンパートメント内。


千姫は、最高級の豆で淹れたコーヒーの香りを一度だけ深く吸い込むと、まだ熱の残るカップをそっと、しかし断固とした所作でテーブルに置いた。


彼女の視線は、隣の区画で眠るリクトから、情報の深淵にいた秋吉博子へと移る。その瞳は、もはや休息を終えた「指揮官」のそれであった。


「……秋吉。単刀直入に訊く。リクト君の延髄に癒着したNCU(神経接続ユニット)を、今この場で、あるいは帰国後すぐに物理的に除去することは可能か?」


秋吉は、次のコーヒーに手を伸ばそうとした動きを、凍りついたように止めた。


彼女の細い肩が微かに震え、先ほどまでの「人間らしい安らぎ」が、一瞬にしてプロの情報分析官としての緊張に塗りつぶされる。


「……今は、不可能です」


「理由を述べろ。医学的、あるいは工学的な障壁はどこにある」


秋吉は、膝の上に置いた端末の画面を再起動させ、リクトの神経系統とNCUが融合している三次元ホログラムを空間に投影した。


「現在、私たちが即席で構築した『ダミーシステム』は、リクト君の脳が発する微弱な生体電気信号を、外部サーバーで擬似的に演算し、心臓や肺へ送り返しています。つまり、NCUの表層的なエミュレーションには成功している。……ですが、最大の問題はその『接点』です」


秋吉は、ホログラムの一部を拡大した。そこには、NCUの極微細な触手が、リクトの神経細胞一つ一つを抱きしめるように絡み合っている絶望的な光景があった。


「ダミーシステムが機能するためには、この『壊れたNCUの物理的なハードウェア』を中継局ハブとして利用せざるを得ません。リクト君の脳は、すでにNCUが存在することを前提とした『神経回路の再構築ニューロプラスティシティ』を起こしてしまっている。……今、NCUを強引に引き抜けば、彼の自律神経系は情報のフィードバックを完全に喪失し、脳が肉体を認識できなくなります。結果として待っているのは、極度の神経性ショック……あるいは、全臓器の一斉機能停止による即死です」


千姫は目を細め、細い煙を吐き出すように言葉を促した。


「……なるほど。では『今は』無理だと言ったな。いずれは可能になるということか」


「……ええ。NCUの内部アルゴリズムを完全に解析し、彼の脳と一対一で完全同調シンクロする『無欠の完全ダミー』を新たに製造できれば、物理的なNCUを切り離し、純粋な生体機能へと回帰させることは可能です。……ただし」


秋吉はリクトのバイタルモニターを忌々しげに一瞥し、ノイズの混じる波形を指差した。


「現状、彼に装着されているNCUは、アビス・ラとの戦闘による過負荷で、内部のコアチップが焼き切れています。……データが断片化しすぎていて、NCU自体の設計思想や、暗号化された制御プログラムの全容が読み取れない。……自力でのリバース・エンジニアリングは、ここで限界です」


Ⅱ. 獲物の捕捉:ネオ・メディカルへの照準


千姫の表情が、一瞬で温度を失った。


それは、あらゆる不確定要素を切り捨て、唯一の「勝利へのパス」を特定した冷徹な指揮官の顔だった。彼女の異質の精神核は、秋吉が提示した課題を、即座に「奪取目標ターゲット」へと変換する。


「……なるほど、状況は理解した。つまり、我々に不足しているのは『解答』ではなく『問題の設計図』だ。……開発元であるネオ・メディカルが、その深部サーバーに隠匿しているであろう、NCUの完全なアーキテクチャ情報。それさえあれば、リクト君を解放できる。そうだな?」


「はい」


秋吉は力強く、迷いのない声で頷いた。


それは分析官としてのプロの矜持であり、自分の知識が及ばぬなら、その源泉を奪い取ればいいという、ある種の傲慢なまでの自信の表れでもあった。


千姫の目が、きらりと鋭い光を放った。


それは漆黒の海原を飛翔する猛禽が、獲物の位置を完全にロックオンした際の眼差しだった。


彼女の口元に、微かな、しかし暴力的なまでの愉悦を孕んだ笑みが浮かぶ。それは強敵を倒すための王道を見つけ出した武人の笑みであり、ようやく「本番」が始まったことを確信したギャンブラーの笑みでもあった。


「……面白い。秋吉さん、そして朱雀。……手加減はいらん。ネオ・メディカルの全システムを、文字通り『丸裸』にしてしまえ!」


「了解しました!」


秋吉は、まだ中身の残っているコーヒーカップをテーブルに叩きつけるように置くと、弾かれたように踵を返した。


彼女は迷いなくヘッドセットを装着し、自身のメイン端末へと飛び込む。彼女がコンソールに指を触れた瞬間、周囲の空気がパチパチと静電気を帯びるような緊張感に包まれた。


Ⅲ. 演算の戦場:情報の飽和攻撃


秋吉の指が、キーボードの上で残像を伴って踊り始める。


ディスプレイには、ネオ・メディカルの幾重にも張り巡らされた防壁、多層防御システム、そして擬装されたダミーサーバーの群れが、極彩色のデジタルデータとして映し出された。


「……認証プロトコルを突破! 第四階層までダイブします! 暗号化されたパケットを順次解凍、プロキシを三十六個経由して、こちらの発信源ソースを完全に秘匿。……逃がさない、隠し事なんて全部引きずり出してやる……!」


秋吉の周囲の空間は、もはやRC-135V/WⅢの機内ではない。そこは、数億のバイナリデータが飛び交う「電子の戦場」へと変貌していた。


その横で、朱雀もまた自身の端末に向かい、獲物を見つけたハイエナのような、獰猛な笑みを浮かべていた。


「……ッ、上等だ! 敵の迎撃システムが起動したな。ハニーポットに、対抗ウィルス、おまけに物理的な回線遮断か……。だが、俺がいる限り、秋吉さんに指一本触れさせやしない!」


朱雀の指が、秋吉とは対照的な重厚なリズムでキーを叩く。


「セキュリティ、情報防壁、対抗措置の全ては俺が引き受ける!


秋吉さん、後ろは気にするな! 脇目も振らずにネオ・メディカルの心臓部コアを叩き潰せ! ……やっちまえーっ!」


機内に、激しい打鍵音と電子音、そして二人の天才が放つ熱狂が充満していく。


一万メートルの高空を飛ぶ電子戦機は、今や日本へ帰還する輸送機ではなく、一巨大企業を、ひいては世界の秩序を根底から揺るがす「弾丸」へと変貌していた。


千姫はその狂騒を背中で聞きながら、冷え切ったコーヒーを一口啜った。


彼女の視線の先には、闇に沈む太平洋の果て、自分たちがこれから踏みにじることになる「偽りの平和」が待ち構えていた。


________________________________________


16.3. 0.08秒の断絶と秘匿情報の大量流出


Ⅰ. 電子のドッグファイト:無双のハッキング


RC-135V/WⅢのコンパートメント内は、もはや静かな帰還の場ではなかった。


数十枚のディスプレイが放つ、網膜を焼くような青白い光が激しく明滅し、壁一面をデジタル・データの濁流が覆い尽くしている。


朱雀と組んだ秋吉博子の進撃は、まさに「無双」という言葉を具現化したものだった。


朱雀が構築する多層的な動的防御壁アクティブ・ファイアウォールは、ネオ・メディカルが放つ対抗ウィルスやハニーポット(囮)を、まるで荒波を裂く砕氷船のように粉砕していく。彼が作り出す安定した侵入経路こそが、秋吉の超絶的な解析速度を、理論上の限界値まで引き出すための「聖域」となっていた。


ネオ・メディカルが誇る、世界最高峰のセキュリティを施したデータベース群。それは他国の諜報機関であれば数年を費やす難攻不落の要塞だが、秋吉と朱雀のペアにとっては、鍵の壊れた紙細工の扉に過ぎなかった。


機内に響くのは、二人の指先が奏でる、重機関銃の掃射にも似た高速なタイピング音のみ。それは、一つの巨大企業の神話を解体していく、冷徹な葬送曲であった。


Ⅱ. 禁忌の目録:剥がされる神話


「……抽出開始。これとこれ、そしてこれは……テロス・ギアの基本骨格、および人工筋繊維の分子構造に関する一次技術資料。……こっちは……NCU(神経接続ユニット)六層CPU構築アルゴリズム……。開発コードネーム『ブルーフィルム』を確認。……酷い。これは論理学ではなく、人間の精神をデジタル信号に無理やり『圧縮』するための破壊的なコードです」


秋吉が読み上げるデータのタイトルは、どれもがネオ・メディカルが世界を影から支配するために積み上げた、血塗られた核心技術であった。


「……さらに、主任科学者による倫理規定無視の考察ログ。……それから、実装実験体の観察記録No.1からNo.4。……リクト君以前に、これほど多くの被験者が、このデバイスによって精神崩壊ブレイクを起こしていたなんて……」


その内容は、人類の倫理観を根底から試すような、冒涜的なまでの極秘文書の山であった。


千姫は、流れるデータの内容の重さに、わずかに目を見開く。彼女の異質の精神核は、その情報の価値を即座に「対政府・対企業交渉における核兵器級のカード」として計算し、静かな興奮に打ち震えていた。


そして、常に機械のように冷徹だった秋吉の声が、初めて大きく震えた。


「……ッ! 千姫さん、見てください! これを……! 我々の探していたミッシングリンク、雷門玄一らいもんげんいち博士の未発表論文の一部が、ネオ・メディカルの最深部、物理隔離されたストレージ内に……見つかりました!」


「……! それは、それは……最高の収穫だな」


千姫は、感情を抑えきれない獰猛な笑みを浮かべ、払うように手を振った。


彼女の脳内では、霧が晴れるように「勝利のグランドデザイン」が完成しつつあった。


「内容の詳細な確認は後にしろ。今はただ、その情報の海を隅から隅まで、残さずさらいたまえ。……我々の戦いの、そしてリクト君が払った犠牲の答えは、すべてその暗闇の中にある」


Ⅲ. 0.08秒の空白:天才の演算論理


その時、快進撃を続けていた朱雀の顔が、わずかに苦渋に歪んだ。


敵側の防衛AIが、基幹回線を物理的に遮断シャットダウンするという、暴挙に近い対抗策に出たのだ。


「おーっと! 主配線を無理やり切りやがったか……だめだめー、そんな子供騙し。すぐに偽装パケットでバックドアを再構築ー、はい元通り! ……秋吉さん、今、わずかな断絶が発生した。影響は……?」


朱雀は一瞬で体勢を立て直し、コンマ数秒でシステムを復旧させた。だが、その額には冷や汗が流れている。


秋吉はタイピングの手を一切止めず、画面から視線を外すことすらせず、氷のような冷徹な声で状況を報告した。


「……0.08秒。朱雀さん、今、ネットワークに『0.08秒』の空白が生じました。私の脳内で行っていた、十六の並列処理における最適化計算が、この瞬間に同期を失いました」


秋吉の言葉は、専門外の者には理解し難い、異常なまでの精緻さを孕んでいた。


「0.01秒の断絶で、私の作業は全体整合性を失い、単体プロセスで28秒間の強制停止に追い込まれます。これは致命的です。今回は、バックアップ回線での並列処理を維持していましたので、全体での遅延は『18秒』に抑え込みましたが。……朱雀さん、ラインの維持を、死守してください。これ以上の揺らぎは、解析完了を帰国後まで遅らせることになります」


朱雀は思わず、喉の奥で唾を飲み込んだ。


0.08秒という、人間には知覚することさえ困難な瞬きの合間のミスが、秋吉の演算世界では「18秒」という、戦場における永遠にも等しい遅延を生み出してしまう。


秋吉博子の作業は、それほどまでに極限の、一分子の狂いも許さないほどの効率化が図られていたのだ。彼女は今、自らの脳をオーバークロックさせ、電子の海と一体化している。


「……悪ぃ。すぐに、その遅れを取り戻す! ……ネオ・メディカルの防衛プログラムども、これ以上、彼女の邪魔はさせねえぞ!」


朱雀は吼えるように叫ぶと、再び情報の海へと沈んでいった。


太平洋の上空、一万メートル。


一機の電子偵察機の内部で、一巨大企業の「神話」が、一秒、また一秒と、生々しく剥ぎ取られていく。


夜明けが近づくにつれ、情報の略奪は加速し、新たな世界の真実が、彼らの手の中に握られようとしていた。


________________________________________


16.4. アリスの招待とプロメテウスの壁


Ⅰ. 現場の匂いと「アリス」の誘い


太平洋の成層圏、RC-135V/WⅢのコンパートメント内。


秋吉と朱雀の間で交わされる、0.01秒単位の演算遅延やパケット損失、並列処理の最適化といった、人間という種の理解を超えた超高度な技術対話。その激流の傍らで、一人の少女が、手に持ったノートとペンを握ったまま、魂が抜けたような声を上げた。


「……ふぇー、あわわわ。何をやっているのか、私にはさっぱりだー」


戦場記者であるシホのその声は、極限まで張り詰めた機内の空気を、一瞬だけ弛緩させた。


千姫は、コンソールを見つめていた顔をゆっくりと上げ、その視線をシホに向けた。彼女の眼差しには、冷徹な分析官としての光は残っているものの、そこにはわずかな興味の色も混じっている。


「……シホ。あなたは真実を追う記者だと自称しているが。……この時代に、ネット環境や情報端末を駆使して自らアクセスしようとはしないのか?」


「私は現場を走り回って、その場の空気を感じるのが専門なんですー。直接会って、目を見て、膝を突き合わせて話を聞く。それが私の仕事だと思ってます。……機械は、どうも苦手で。調べ物は図書館で古いマイクロフィルムを回したりとか、古風な方でやっています」


千姫は、フッと鼻で笑った。それは嘲笑ではなく、デジタルの極致に身を置く者として、シホが持つ「アナログな執着」を、一つの有効なリソース(資源)として認めた笑いだった。


「……なるほど、現場主義か。情報の鮮度よりも、その背後にある『人間』を掘り出すタイプだな。いいだろう、シホ。日本に帰還した後、我々から一つ提案がある」


千姫は、自身の端末から一つのプロジェクト・ファイルを呼び出した。


「近く一般公開を控えている、我が国の次世代汎用AI端末――通称PBパーソナルブレイン。その最新鋭機である、ALICE(Analytical Logic and Information Cipher Engine:分析論理情報暗号エンジン)……通称『アリス』を、一台あなたに回そう」


シホの瞳が、その言葉を聞くなり、驚愕と歓喜で大きく見開かれた。


「ええーっ! それ、開発発表から話題になってる最新機じゃないですか! スケジュール管理から生活環境の最適化、さらには過去の取材記録を分析しての思考・創造支援までこなすっていう……! 本当に、私なんかにいいんですかっ!」


「構わん。あなたの記者としてのフィールドワークをサポートするための、長期実地運用モニターとして、正式に貸し出せるよう手続きをしておこう。……ただし」


千姫の声のトーンが、わずかに低くなる。それは「異質の精神核」を持つ指揮官としての、対等な取引ディールの宣告であった。


「たまにで構わない。あなたのその『現場の匂い』のする一次情報を、私にも提供してもらう。アリスを介したデータの同期……それを貸与の対価とする。いいな?」


「もちろんです! アリス、楽しみです! 精一杯使いこなしてみせます!」


シホは、先ほどまでの「高次元の電子戦」という重圧から解放され、まるで宝物を手に入れた子供のように歓声を上げた。彼女のその無邪気さが、リクトという少年をこれまで支えてきたのだという事実に、千姫は密かな得心を得ていた。


Ⅱ. 略奪の完了:ネオ・メディカルの黄昏


シホが歓喜に浸る背後で、コンソールが「完了」を告げる冷徹なビープ音を鳴らした。


秋吉博子が、網膜に焼き付いたコードの残像を振り払うように目を閉じ、深く息を吐く。


「……千姫さん。ネオ・メディカルの深部サーバー、完全な『丸裸』が完了しました。……同社の秘匿研究データ、財務諸表の裏帳簿、政財界への不透明な献金記録、および関連する全人事リスト。……すべて、こちらの秘匿ストレージに確保しました」


続いて、朱雀が獰猛な笑みを浮かべ、最後のコマンドを入力した。


「ネオ・メディカルのデータベース、および物理的に分散されていたバックアップ領域を含め、関連する機密情報はすべて『論理消去』および『上書き破壊』を完了しました。……これで、連中は『ブルーフィルム』の設計図も、雷門玄一博士に関する技術的根拠も、文字通りすべて失った。……明日から、連中は自分たちの技術が何であったかさえ、証明できなくなる」


千姫は深く、満足げに頷いた。彼女の脳内では、ネオ・メディカルという巨大企業を解体するための法廷闘争と、リクトの義体修復のためのリサーチが、最短ルートで結ばれた。


「……ふふ、了解した。見事だ。……では次だが、ネオ・メディカルのスポンサーである『プロメテウス財団』だ。彼らの内部情報についても、ネオ・メディカルとのネットワーク連動性から、芋蔓式に入手可能か?」


その問いに対し、先ほどまで意気揚々としていた朱雀の顔が、急に気まずそうに曇った。


Ⅲ. 沈黙の壁:プロメテウスの異質


「……それ、実は。ネオ・メディカルを攻略したついでに、そのバックボーンであるプロメテウス財団のシステムもちょっと覗いてみたのですが……」


「……ん? 何か問題でもあったのか」


「……データベースが、存在しません」


千姫は怪訝な顔を浮かべた。情報戦の専門家である彼女にとって、「存在しない」という報告は、単なるエラー以上の異常事態、あるいは「概念的な死角」を意味する。


「存在しない? サーバーが物理的に切り離されているのか。それとも、極めて高度なステルス・コーディングが施されているのか」


「いいえ。存在しない、のです。……どれほどネオ・メディカルの通信ログを遡っても、プロメテウス側から『電子的なデータ転送』が行われた形跡が一切見当たりません。……推測ですが、彼らは事前に全てのデジタルデータを物理破壊して消去したのか、それとも……」


朱雀は、信じがたい結論を口にするのを躊躇うように、言葉を継いだ。


「……元々、一ビットのデジタルデータも持っていなかったのか。……存在しないものを、電子の海から探り出すことは不可能です。例えスタンドアロン(非接続)の環境であっても、排熱量や電力消費パターンの解析でアクセスする方法はありますが……それすら反応がありません」


千姫は、顎に手を当てて深く思考した。


一万メートルの上空を飛ぶ最新鋭の電子戦機をもってしても、捕捉できない空白。


「……つまり、彼らは、極めて、旧式な……紙媒体ハードコピーと対人接触のみで組織を動かしているというのか? ……この二十一世紀に、そんなことがあり得るか?」


「その様に思われます。あの組織の規模、そしてリクト君という超高精密な義体を生み出した背景からして、信じ難いことですが。……デジタル・データという『痕跡』を一切残さない。……これはもはやサイバー戦の範疇を超えています。……実際に潜入し、物理的に棚をひっくり返さない限り、彼らの正体は暴けません」


千姫は、冷徹に、しかしどこか期待を孕んだ声で結論を下した。


「……分かった。プロメテウス財団に関しては、これ以上の電子工作はリソースの無駄だ。上のセクションに対応を求めておこう。……ここからは、我々情報分析官の専門外。潜入・破壊・奪取を専門とする『別動隊』の仕事だ」


太平洋の夜が、白み始めている。


剥ぎ取られたネオ・メディカルの神話の先に、より深遠で、より古臭い「本物の闇」が口を開けて待っていた。


千姫たちの帰還は、同時に、新たなる泥臭い「物理的な戦い」の幕開けでもあった。


________________________________________


16.5. 三人の分析と『未知』の発見


Ⅰ. 知性の融合:トライアングル・アナリシス


RC-135V/WⅢのコンパートメント内に漂っていたコーヒーの香りは、いつしか電子機器の過熱によるオゾン臭と、三人の専門家が発する張り詰めた殺気に塗りつぶされていた。


千姫は、空になったカップを端に寄せ、鋭い眼光をコンソールに向けた。


「……感傷に浸る時間は終わりだ。奪取したデータの初期解析ファースト・ルックに移行する。秋吉、朱雀。俺も加わる。三点支持トライアングルで一気に中枢まで掘り進めるぞ」


秋吉は短く「了解」と応じ、メインモニターにネオ・メディカルから「強奪」した夥しい数のインデックスを表示させた。画面をスクロールするファイル名の奔流は、一企業の歴史そのものであり、数千人の研究者が生涯を費やした知の集積であった。


「まずは、テロス・ギアの設計思想に関する、開発局の秘匿レポート……プロジェクト名『ブルーフィルム』の深層データから入りましょう」


三人の分析作業が開始された。


千姫の、情報の断片から背後の戦略的意図を読み解く「大局的な直感」。


秋吉の、数式を楽譜のように読み解き、一ミリの矛盾も許さず論理を再構築する「演算の天才」。


朱雀の、複雑怪奇な暗号アルゴリズムを構造的に解体し、安全なアクセスを担保する「構造把握の極致」。


この三つの異質な知性が一塊となり、ネオ・メディカルが幾重にも施したプロテクトの奥底へ、音もなく潜り込んでいく。


一方、現場記者であるシホは、その「圧倒的な知性の渦」が作り出す重圧についていけず、そっと席を離れた。彼女にとって、数字やコードの羅列は、そこに込められた「人の情念」を覆い隠す冷たい鎧にしか見えなかった。


彼女は静かに、リクトの横たわるベッドサイドへ移動した。


「……リクト君。待っててね。もうすぐ、日本に帰れるから」


彼女の優しい呟きは、NCUの出力調整を行うポンプ音にかき消され、深い眠りの中にある少年の耳には届かない。シホは、彼の首筋から伸びる無数の銀色のケーブルと、血の気の失せた青白い顔を交互に見つめた。


彼女にできるのは、この少年が背負わされた「兵器としての運命」の重さと、ネバダの激戦で彼が削り取った命の欠片を、想像し、祈ることだけだった。


Ⅱ. 禁忌の3%:アンノウン・コード


その頃、メインコンパートメントでの分析は、ついに「核心」の地層に到達していた。


三人の視線が、ある一つのレポートに釘付けになる。それは、ネオ・メディカルの技術陣が、総力を挙げて解析を試みた『NCU完全解析報告書:最終版』であった。


その文書の末尾には、戦慄すべき事実が記されていた。


レポート全体の97%は、現在のコンピュータ・サイエンスによって解明済み。しかし、残る『3%』――NCUの全機能を統括する最深部のコア・コードだけが、いかなるスーパーコンピュータを用いても、いかなる数学的アプローチを用いても解読不能な『未知アンノウン』として隔離されていたのだ。


千姫が、その異常な分析記録を読み上げる。彼女の声は低く、未知の脅威を検知した野獣のように、警戒の色を帯びていた。


「……『その不明なプログラムを強制起動させた際、モニター上に描出されたのは、従来のバイナリ構造を逸脱した、一種の魔術式のような複雑な幾何学的図形であった。図形化されたパターンは観測者の視線に反応するようにランダムに位相を変え、既存の論理体系では記述不可能。我々は、この図形化されたコードを「六芒星のコクーン」と仮称した』」


千姫は一息つき、さらに凄惨な記述へと目を進めた。


「『……内部コードへの強硬的なアクセスを試みた直後、繭が突如として暴走。解析用端末の制御権を完全に剥奪。OSを無効化し、院内ネットワーク全域を約三十秒間にわたって自動走査し始めた。物理的な隔離を無視した情報拡散の予兆が見られたため、危険と判断。……直ちに当該端末をテルミット焼却により物理破壊した』」


機内に、氷を流し込んだような冷たい沈黙が訪れた。


最新鋭の電子戦機の唸りさえ、今は不気味な警告音のように聞こえる。


「……秋吉。これは、何だ。プログラムなのか? それとも……」


秋吉博子は、その記録に添えられた解析主任の、断末魔のようなメモを辿り、みるみると顔色を失っていった。


「……『不明なコード』、残り3%の『未知』。……千姫さん、これは、ただのプログラムではありません。……バイナリでも、量子ビットでもない。……あえて言うなら、これは『意思』を持った構造体です。解析者の記述を信じるなら、これはテロス・ギアの根源……雷門玄一博士がどこからか引き摺り出してきた、超古代技術の、あるいは異世界の残滓アーティファクトそのものです。……ここで、このデータを安易に展開するのは、絶対に止めてください」


Ⅲ. 秩序と混沌:天才の嗅覚


朱雀は、そんな秋吉の、これまでにない怯えを含んだ警戒心を、皮肉交じりの薄い笑いで受け止めた。だが、その瞳に笑いはない。


「……へえ。秋吉さんなら、どんな禁忌だろうと、すぐにでも中を覗こうとすると思いましたがね。……『世界最高の解析官が理解不能なコード』。これほど天才の好奇心を刺激する餌が、他にありますか?」


秋吉は、不機嫌そうに顔をしかめ、朱雀を射抜くような視線で見つめた。


「……私は、システム(秩序)を愛する分析官です。むやみに未知の劇物を弄んで、世界を混沌ケイオスに叩き込むような真似はしません。ましてや、これがテロス・ギアの心臓部であり、『雷門玄一に関わる』モノである以上、慎重にならざるを得ない。……私は、自分の知性の限界を知っています。だからこそ、この『繭』の向こう側にあるものが、人類に扱える火ではないことが分かるんです」


秋吉の言葉には、天才故の傲慢さではなく、天才故に「理解を超えた力」に直面した際の、原初的な恐怖と生存本能が働いていた。


千姫は、深く納得したように苦笑し、秋吉の判断を全面的に支持した。


「……秋吉さんの言う通りだ。この『未知』は……。本局に帰還した後、電磁波的にも物理的にも完全に隔離された、最深部のラボで調べることにしよう。……これは、世界中のネットワークに一瞬でアクセスし、情報を統治しようとしたテロス・ギアの、いわば『神としての能力』の根源だ。下手に触れれば、この機体ごと、太平洋の真ん中で電子の藻屑にされかねん」


「……そうですね。承知しました」朱雀も、冗談を切り上げ、真剣な表情で頷いた。「この『六芒星の繭』のデータには、最高レベルの多重暗号と、物理的なアクセスロックをかけておきます。たとえ内部ネットワークからでも、三人の生体認証が同時に揃わない限り、絶対に展開は不可能です」


夜明けが、近づいている。


ネバダの地で略奪した富は、単なるデータではなかった。それは、人類がまだ手にするべきではなかった「パンドラの箱」の鍵であった。


RC-135V/WⅢは、その禍々しい秘密を抱えたまま、静かに日本本土へと高度を下げ始めた。


________________________________________


16.6. 生還の兆し


Ⅰ. 静寂の波紋:バイタリティ・スコアの律動


朱雀の指先が、コンソール上で最後の多重防御壁マルチレイヤー・ファイアウォールを物理的にロックし終えた、その時だった。


機内を支配していたのは、ネオ・メディカルの神話を解体し終えた後の、虚脱感に近い静寂だった。秋吉は極限の演算から解放され、虚ろな目で宙を見つめ、千姫は冷え切ったコーヒーを最後の一口まで飲み干そうとしていた。


だが、メインコンパートメントの中央に鎮座する巨大なディスプレイの片隅。


そこには、秋吉がリクトのNCU(神経接続ユニット)の状態を監視するために独自にプログラムした、特殊な評価値が表示されていた。


「システム・バイタリティ・スコア」。


それは血圧や脈拍といった、肉体ハードウェアの数値を測るものではない。リクトの「脳」という有機知性と、NCUという「機械」の接続界面インターフェースにおいて、どれだけの情報整合性が保たれているかを示す、いわば魂の定着率とも呼ぶべき過酷な指標であった。


ネバダを離脱して以来、その数値は「42.0000」という、生命維持の最低境界線上でピクリとも動くことなく、冷酷な水平線を刻み続けていた。


しかし、その安定した、絶望的なまでの静止ラインが、カチリ、という微かな電子音を伴って、震えた。


「……ッ!?」


秋吉が息を呑む。


数値は「43.0000」へ。上昇、という生易しいものではない。それは深海から突如として浮上した潜水艦のように、あるいは、呼びかけに応じた戦士の挙手のように、明確な意志を持って「応答」したのだ。


千姫、秋吉、朱雀。


日本最強の情報分析チームを構成する三人の知性は、そのわずかな、しかし宇宙の誕生にも等しい衝撃を孕んだ変化に、言葉を失って画面を凝視した。


医療区画のカーテン越し。シホが寄り添う暗闇の中で、リクトは依然として、死を偽装したかのような静寂の中で眠り続けているように見える。


しかし、現実のレイヤーとは異なる電子の深淵において、異変は起きていた。


彼らが「触れてはならない毒」と判断し、厳重に、物理的な隔絶さえ伴って封印したはずの『未知アンノウン』のコード……あの『六芒星のコクーン』が、封印の檻を突き抜ける不可視の共鳴波を放ち、リクトの体内のNCUと、刹那の交信を果たしたのだ。


Ⅱ. 剥がされた神話の先へ:帰還の空


太平洋を時速九百キロメートルで東進する、RC-135V/WⅢ。


機体の腹の下には、まだ太陽の光を拒む漆黒の海原が広がっている。


その孤独な機体の中にいま、世界の均衡を容易に崩壊させる三つの要素が、奇妙な調和を持って共存していた。


一つは、ネオ・メディカルという巨大企業の欺瞞を暴き、その神話を解体した末に得られた、血塗られた情報の残骸。


一つは、超古代の叡智か、あるいは異界の論理か……人類の理解を拒絶する封印された魔術式、即ち『六芒星の繭』。


そして最後の一つは、それらの人智を超えた存在に呼応し、死の淵から指先を動かそうとしている、少年リクトの微かな生還の兆し。


「……秋吉。今の数値上昇は、外部からの干渉か。それとも、彼自身の意志か」


千姫の声は、凍りつくほどに冷徹だった。彼女の「異質の精神核」は、この「奇跡」を無条件に喜ぶことを許さない。リクトの生還が、同時に「六芒星の繭」という制御不能な力の発露であるならば、それは帰国後の日本において、新たな災厄の火種となる。


だが、その冷徹な問いの裏側で、彼女の指先がわずかに震えていたのを、誰が責められようか。


「……分かりません、千姫さん。ですが、NCUの神経整合率が上がったのは事実です。……リクト君は、あの中(深淵)で、何かと出会ったのかもしれません」


秋吉の言葉は、科学者としての敗北宣言であり、同時に、一人の戦友としての希望の吐露でもあった。


「……フン、上等だ。彼が戻ってくるというのなら、その場所が地獄の底であろうと、日本国という名の檻の中であろうと、俺たちが道を作るまでだ」


千姫は、機首の先……闇を切り裂くようにして現れ始めた、東の空の微かな白光を見つめた。


日本は、もうすぐそこだった。


剥がされた神話の先に待つのは、救済か、それとも新たなる絶望の幕開けか。


彼らを乗せた「空飛ぶ要塞」は、重厚なエンジン音を響かせながら、祖国の空へと降下を開始した。


[EOF]


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