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アナザーサイド

本編第1章ep.13後に何があったのかのサイドストーリーです。

(あの男め、どこで見つけたか知らんが随分面倒な噛ませ犬を送ってくる)


倒れて動かなくなった黒翼らしき青年に剣を向けつつ、リークは性格悪の兄に心中で悪態をついた。


(それとも、何か別の目的があるのか?)

ふと横へ視線を移し、静かに建石造りの遺跡を見る。

(いや、考えても無駄か)


ゆっくり頭を振り、緩みかけた剣を持つ手を再び握る。

しかし追っ手に止めを刺そうと、武器を振るった瞬間を見計らったかのように、目の前に突如大きな火柱が上がった。


「!」

下がったリークと倒れた青年の間に、残像を引く素早さで何者かが立ち塞がる。さらに、殺気を乗せて飛んできた数本の鋼の槍を空間破砕で打ち砕いた。


『フレシット!』

反射的に紡いだ錐の術が、火柱の向こうへと飛ぶ。


小さな金属音。


「あ痛って!

ちくしょう、今のは絶対外れねーと思ったんだけどなぁ」


煙の向こうの人物が、気だるげな声をあげた。


現れた声の主は、紺の髪にやや目じりの下がった紫眼の青年。肩に錐がかすったのか、その部分が裂けていた。

暗色で統一された服装や様子で、さっき倒した雇われ者の仲間だと容易に想像出来る。

だがーー


「あれを避けもしない奴ってあんたが初めてだよ。

しかも反撃までして来るなんて化け物じみてるなぁ。

降参、降参!」


リークは、自分に悟らせずに火の術を発動させ、避け難いタイミングで槍を飛ばして来た殺気の主が、目の前のへらへらした青年であることに眉をひそめた。


言葉通り諦めたのか、両手を頭の横に上げている。殺気はおろか闘気すらない。

あまりの緊張感のなさに少々混乱した。

思わず疑問が口をついて出る。


「貴様は誰だ?その黒いのと同じ、あの男に雇われた追っ手か?」


「お、話してくれるの?」

相手の反応に、ラグは内心でガッツポーズをする。


(止めを刺そうとする前に何か考えてたのは、見間違いじゃなかったみてーだな)


ラグがこの場所にたどり着いたのは、ついさっき、宵闇が倒れた丁度その時。

山の茂みに残された荒れた跡と、獣の死骸を追い掛ければ場所を探すのはさほど苦でもなく、肩と足から血の滴を撒きながら倒れた友人が、即死でなかったのは幸運だった。


真っ直線に仕掛けても良かったが、それでは宵闇の二の舞になることは解っている。


術を静かに組み立てながら隙を伺うラグの目に、白銀髪の青年の何か躊躇うかのごとき仕草が映ったのだ。

(それを突かない手は無ぇよな)


とは言っても、依然白銀髪の青年に隙はない。翡翠の眼も険しいままだ。


殺気と言うほどではないものの、眼は雄弁すぎるぐらいに『不審な真似をすれば殺す』と語っていた。


多分腕の先を相手から見えない場所に動かしただけで、命に関わるような一撃が来るだろう。


(さぁて、どーやって生き残るか。

オレはともかく、宵闇は仕事が失敗になるとあの王佐が何かやりかねねーし・・あんま時間かけてもらんねーし)


思考はこちらの無言に業を煮やした、相手の言葉で中断された。


「さっさと質問に答えろ。貴様も私の命を狙って来たのか?」

「あんたの命?」

「そこの黒いのが言っていた。アスベルが私を消せと言ったそうだ」


察したラグの顔が険しくなる。



「あの野郎、よりによってこいつに、そんな依頼しやがったのか・・」


圧し殺すように呟いた言葉に、今度は逆に翡翠の眼が僅かに見開かれる。


「お前は違うと言うのか。そこの雇われ者は、お前の仲間なのだろう?」

「それは当たり。

でもあのアスベルとか言う王佐の犬ってのは大ハズレだ。冗談じゃねえ。

宵闇だって、本来は護衛業専門なんだよ!」


唾でも吐きそうなほど嫌悪を顕にする紺髪の青年に、リークは本当なのだろうと思った。

同時に「ならばなぜ」と言う言葉も喉の奥に戻す。

単に線使いを助けに来たのだと理解できた。


それを証明するかのように相手は無防備に背を向け、星の回復術を唱え始める。


『ヒリーアル』

淡い光の直後、チッ!と舌打ちが聞こえた。

それはそうだろう。自分が裂いた肩の傷は、治癒効果の低い星術で塞げるほど小さくはない。


(だが、どうする?)


リークの中に葛藤が生まれた。

敵で無い者への殺生は、自分の意識にも、騎士の道理にも反する。

しかし黒髪の方が下手にこの状況で回復すれば、最悪2対1で戦う事になる。


勝てないとは思わないが、そう楽にはいかないと想像できた。姿を消した道化のこともあった。


(やはり、こいつらが動けぬ今の内に始末するべきか?

それは本当に正しいのか?)


リークの迷いを見抜いたように、紺髪の青年が少し振り向き、さっきより幾分か真剣な声で意外な事を言った。


「あんたさ、見てくれからして王族だろ?名前、リークだったりする?」

「そうだ」

「あー、やっぱりか。

もいっこ聞くけど、月の治癒術使えたりするか?」


リークは顔をしかめた。

「私に、そいつを治せと言うつもりか?

治す義理などない」

「それはそーなんだがなぁ」


ラグはついっと目線を上に上げる。

(思った通りだな。オレって悪運強ええ)


リークの顔は、拒否の言葉と裏腹に迷いが見え隠れしていた。


わざと背を向けて宵闇に治癒術を使っても、彼は斬りかかって来なかった。

その前、降参して姿を晒した時も攻撃は来ず、話しかけてきた。


襲い来る者に容赦はないが、非武装の者には武器を振るわない。そういう事なのだろう。

以前街で情報屋から聞いた幻将の噂通り、わりと真っ当な人物だ。

(宵闇・・いや親父さんの同類発見、だな)



なら、ラグの中で手は決まっていた。

「何も無償でなんて言わねえさ。

金じゃないがギブアンドテイクだ」


つまり、取引。


「あんたはアスベルってタチの悪ぃのと対立して追っ手を寄越されてる。

オレはあの野郎のフザケた依頼のせいで、ダチが大怪我してる。

嫌がらせの1つぐらいやんねーと腹の虫が治まらない」

ぴっ!と片手の人差し指を立てて宵闇を指す。


「?」

「で、だ。

こいつの治癒に協力してくれるなら、あんたがこいつにやった事は、オレの中でチャラだ。

こいつが眼ぇ覚ました後でまだあんたを攻撃する気なら、責任持って説得する。


別の傭兵とかが襲って来るようなら、あんたの代わりにオレが潰してもいい。

結構役に立つぜ?」


「気持ちが悪いぐらい条件が良すぎるな。傷の癒えた黒いのとお前とで私に武器を向けない保証がない」


疑いの表情で反論してくる青年に「まあまあ」と片手を上下に振り、話を続ける。


「完全に治せって言うつもりはないさ。とりあえず傷開かない程度に塞いでくれりゃいい。それならいいだろ?

「条件良すぎ」ってなら、オレらでどうしようもない奴・・アスベル本人とか金髪のガキが出て来たら、逃げるのに手を貸してくれ」

「・・・・」


リークはしばし考える。

もっとも、返事そのものはすでに決まっている。

乗せられるのは釈然としないが、目の前で反応を待つ青毛の言葉は、それなりの説得力があった。

仮に隙を突くための嘘でも、そうなれば斬ればいい。


それとは別に、気になっていた黒線使いの、破砕を弱めると言う異常な防御が思考を回っていた。


(あいつを生かせば、色々と分かることもあるかもしれんな)


真っ直ぐに紺髪の青年を見据えて口を開いた。


「わかった。その取引に乗ろう。

だが、私はあの遺跡に用がある。治してほしければ、そいつを引き摺ってついて来い」


遺跡に向かって歩き始めた後ろから「ラジャー」とふざけた声が聞こえた。


※後日のリークとラグの会話


リーク「あの時万一、私が取引を断ってお前に剣を向けたら、どうする気だったのだ?」


ラグ「それは無い。

断れねーようにしといたから」


リーク「何だと?」


ラグ「最初仕掛けた時の火柱出す術、あれ『フレア』って火砲術のアレンジでさ。

ちょっと離れた場所からでも設置場所動かせる地雷みたいなモンなんだ」


リーク「おい、まさか」

ラグ「オレは性格悪くて負けず嫌いなの。

あんたが敵になって、どの道助かる望み薄いなら、大量に仕掛けた地雷を起動させて、もろともドカン!

「そーなりたくなきゃ取引しろ」って脅してたね」

リーク「・・・」


宵闇「何話してんだ?2人とも」


リーク「宵闇、今さらだが(ラグを指差し)私は、お前とこいつが友人でいられるのが信じがたい」


ラグ「失礼な王子様だな」


宵闇「?初対面の頃は仲悪かったけど、仲良くなってみたら結構良い奴だぜ、ラグは」


リーク「・・・良い奴?私には理解できんな」


ラグ「ひっでー(笑)」


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