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終章:拾いに行く恋 シーン1 状態確認(否定形による輪郭化)
主人公は、誰とも結ばれていない。
明確な恋愛関係は成立していない。
約束も、誓約も、再会を示す言葉も残されていない。
だが、それらは欠落として数え上げられない。
失われたものではなく、初めから置かれていなかった配置として、静かにそこにある。
「できなかった」という悔恨は生じない。
「逃した」という想定も成立しない。
彼女の前後に、比較される別の結末が存在しないからだ。
ただ、成立していない状態が続いている。
過去形ではなく、現在形のまま。
それは空白ではなく、余白に近い。
何かを待つための沈黙でもない。
選ばれなかった可能性が、恨みとして残ることもない。
関係は定義されていない。
だが、否定もされていない。
その未成立は、停止ではなく継続であり、
物語的な終わりではなく、
現実としての平衡状態として、淡く保たれている。




