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乙女ゲーのヒロインに転生するも王子が好みではない  作者: 南蛇井


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シーン3:旅人との短い同行

街道は広くも狭くもなく、二人が並んで歩くには十分だった。

宿を出てしばらくしてから、同じ方向へ向かっていることに気づき、歩調が自然と揃った。それ以上の理由はない。


旅人は、特に名乗らなかった。

主人公も、名を告げない。


会話は途切れがちに続く。


「この道、思ったより足に来ますね」


「舗装が古いからでしょう。昨日の雨も残っています」


それは感想であり、共有であって、意味づけではない。

しばらく沈黙が挟まり、次は食事の話になる。塩気の強い保存食は飽きやすい、温かい汁物が恋しくなる。どこかの町で食べた平凡な煮込みの話が出て、そこで話題は尽きる。


過去に通った土地の名が、いくつか挙がる。

だが、それぞれの記憶は交わらない。


旅人の目的地は、別の分岐の先にある。

主人公も、その先まで同行する理由を持たない。


半日ほど歩いたところで、道は自然に分かれた。

特別な合図はなく、互いに立ち止まる。


「お気をつけて」


それは挨拶であって、別れの演出ではない。


旅人は一方の道を選び、主人公はもう一方を進む。

振り返ることもなく、名残を示す言葉も交わされない。


この出会いは、始まっていない。

深まってもいない。

終わったと定義するほどの輪郭もない。


ただ、街道の一部として、通過した。

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