シーン7:章の終端 ― ヒロインである必要の消失
彼女が学園を去ったことは、すでに処理済みの事実として存在している。
卒業か、退学か。
制度上の区分は記録に残るが、語りとしては重要ではない。
確定しているのは、ただ一つ。
主人公は、学園にいない。
だが、それは物語的な結末ではない。
拍手も、余韻も、象徴的な沈黙も伴わない。
世界は、彼女の不在を問題として扱わない。
欠員補充が行われるわけでもない。
空白を説明する必要も生じない。
祝福がないのは、成功ではないからだ。
断罪がないのは、失敗ではないからだ。
彼女は、
「選ばれなかった」のでも、
「選ばなかった」のでもない。
選択肢として想定されていた条件から、
静かに外れただけである。
ヒロインであるために必要だったもの――
恋に落ちること。
対立を生むこと。
誰かの行動を変えること。
それらが、最後まで起動しなかった。
だから、彼女は役割を果たさなかったのではない。
役割そのものが、成立しなかった。
世界はそれを修正しない。
再挑戦も、代替配置も行わない。
条件が満たされなかった事実を、
事実として受け入れるだけだ。
この章の終わりで確定するのは、次の一点である。
主人公がヒロインである必要は、完全に消失した。
そして世界は、その状態を自然なものとして処理した。
物語は続いている。
だが、彼女を中心に回る理由は、どこにも残っていない。
それで十分だと、
世界はすでに理解している。




