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シーン2:事務手続きとしての別れ
学園事務局は、いつも通りの静けさに包まれていた。
書棚に並ぶ帳簿の背表紙も、窓際の机に積まれた書類の束も、昨日と何一つ変わらない。
主人公は、提出用の書類を差し出す。
事務担当者は受け取り、内容に目を落とす。
視線は淡々と、必要な項目だけをなぞっていく。
成績条件――満たしている。
規律違反――記録なし。
保護者手続き――問題なし。
確認は短く、機械的で、過不足がない。
担当者は一度だけ小さく頷き、口を開く。
「問題ありません」
それで終わりだった。
理由は問われない。
今後の予定を探られることもない。
思いとどまるよう促されることも、特別な配慮を示されることもない。
この学園において、彼女は最後まで、規則に従った一生徒であり続けた。
だからこそ、別れもまた、規則の範囲で完結する。
担当者は書類に処理印を押し、次の案件に手を伸ばす。
視線はすでに別の名前を追っている。
主人公は一礼し、事務局を後にする。
扉が閉じても、内側の空気は揺れない。
彼女の学園生活は、
一件の事務処理として、滞りなく完了した。




