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シーン6:章の終端 ― 停滞の確定
翌日も、王子は同じように振る舞った。
礼儀は崩れない。
判断は適切だ。
王子として求められる振る舞いを、過不足なく遂行する。
世界も、それを否定しない。
咎める理由がない以上、修正も入らない。賞賛されるほどの逸脱もなく、批判を呼ぶ瑕疵もない。結果として、日常は滑らかに継続される。
彼は変わらない。
だが、それは意思による選択ではなかった。
選択が発生しなかった。
変わるか、変わらないかを問われる場面が、与えられなかった。
王子は、静的な中心としてそこに在り続ける。
物語を牽引する力は持たない。誰かの行動を引き出す触媒にもならない。
それでも、排除される理由はない。
正しく機能している存在は、世界から取り除かれないからだ。
彼の周囲で、物語は起動しない。
だが、世界は崩れもしない。
この章は、王子という存在が
動かない軸として確定したところで、静かに終わる。




