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シーン3:王子との関係性の再確認(非恋愛)
公式行事の場は整然としていた。
定められた順序で人が並び、挨拶は形式に従って交わされる。王子と悪役令嬢もまた、その流れの中で向かい合った。かつては「婚約候補」という文脈で語られていた距離に、変わらず立っている。
しかし、そこに私的な感情はない。
緊張もなく、期待もない。言葉は整い、沈黙は不自然にならない。比較されるべきヒロインも、この場には存在しない。
側近や周囲は、その静けさに気づく。
関係性は壊れていないが、深まってもいない。視線が絡むことも、意味を含んだ間が生まれることもない。
この距離を深める理由はない。
同時に、断つ理由も存在しない。
結果として、婚約の可能性は検討されなくなる。破棄の宣言も、拒絶の場面も起きない。ただ、話題に上らなくなるだけだ。名簿の注記は更新されず、議題から静かに外される。
行事は予定通り進行し、挨拶は形式通りに終わる。
二人の関係性は、何も失わず、何も得ないまま、恋愛という文脈から自然に切り離されていった。




