シーン2:評価会議への移行
会議室は静かだった。
断罪の場に使われるはずだった緊張は持ち込まれず、机の上には帳簿と報告書だけが並べられている。教師、貴族、官僚がそれぞれの立場で席に着き、制度として必要な確認を淡々と進めていた。
断罪が存在しない以上、次に処理すべき項目を探す必要がある。
制度は空白を嫌うが、感情でそれを埋めることはしない。
参照されるのは数値と実績だった。
成績の推移。
課外活動の成果。
対人調整能力。
王国実務への適性。
順に読み上げられ、照合され、書き込まれていく。その流れの中で、悪役令嬢の名前が挙がる。声色は変わらない。特別扱いもされない。
「問題のある生徒ではない」
その確認が先に行われ、次いで、少し間を置いて言葉が選ばれる。
「扱いにくいほど、優秀ですね」
誰も彼女を褒め称えなかった。拍手も、称賛の言葉もない。だが同時に、誰も否定できない。記録は揃い、成果は可視化され、反論の余地がない。
評価は感情を伴わず、淡々と積み上がっていく。
それは好意でも救済でもなく、政治的・実務的価値としての処理だった。会議室の空気は終始変わらず、ただ一つ、断罪という項目だけが議題から完全に外されていた。




