シーン6 章のまとめ(機能確定)
章の終わりに至って、状況は整理される。
だが、それは結論という形では提示されない。
機能が、静かに確定するだけである。
主人公は、これまでと同じ態度を維持している。
特別な工夫も、演出もない。
礼儀を欠かさない。
理知的に振る舞う。
感情的反応を、意識的に表に出さない。
それは禁欲でも自己抑制でもなく、
ただ「余計なことをしない」という一貫した選択にすぎない。
王子と世界は、その振る舞いを正しく処理する。
問題は発生していない。
規範からの逸脱もない。
介入する理由は見当たらない。
評価は、簡潔で、冷静だ。
「問題なし」
「現状維持」
「経過観察の必要も低い」
それ以上の言葉は付け加えられない。
賞賛も、失望も、ここでは発生しない。
結果として、物語的状況だけが、奇妙な形で残る。
誰も失敗していない。
判断はすべて正しい。
対応も、制度も、感情も、破綻していない。
それでも、何も進展していない。
衝突がない。
誤解がない。
修復も不要である以上、次の局面が呼び出されない。
ここに生まれているのは、失策による停滞ではない。
むしろ、完全な成功の連続がもたらした停止である。
正しい態度が、正しく評価され、
正しく放置された結果、
物語だけが、前進の理由を失っている。
この時点で、章は閉じられる。
破綻はない。
事件もない。
ただ、成功し続けることで動かなくなった世界が、
静かに固定されたまま、そこにある。




