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S級美少女達とカードゲームでとても親しくなった  作者: 相野仁


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8/10

第八話

「きみってたしか高校で見かけたよね?」


 近くのテーブルに座りながら向き合ったとき、光先輩に話しかけられる。

 

「えっ、気づいてたんですね」


 俺は影が薄いってよく言われるのに。

 驚きを隠せない。


「うん、けっこう観察力があると言われるかな?」


 光先輩ははにかむように笑う。


 普段はイケメンオーラを放ってる美少年って感じだけど、こういう表情はとても女性らしい。


 あんな短い時間で、陰キャ空気ぼっちの俺に気づくなんてすごい人だ。


「僕に敬語ってことは一年?」


 光先輩は訊いて来る。

 ということはこの人は二年なのかな?


「ええ。ただ接客中は基本敬語です」


 推測しながら答える。


「そっか。えらいね」


「いやあ、仕事なので」


 きれいな先輩に優しく褒められるのは、何か照れくさい。


 高校生にしてはいい時給に設定してもらっているので、きちんと働きたいと思っているだけなのに。


「僕は二年の常磐光《ときわひかる》。きみは?」


「一年の白山台蓮(はくさんだいれん)です」


 光先輩に名乗られた上で訊かれたこともあり、フルネームで答えた。


「そっか。蓮くんって呼んでもいい?」


 と光先輩に訊かれる。


「? どうぞ」


 いきなり下の名前で? と思ったけど、すでに美咲先輩に呼ばれていた。


 俺だって苗字を知らなかったから心の中では光先輩って呼んでるし、案外そんなものなのかもしれない。


「ではデッキをシャッフルしましょう」


 と言って俺は目の前で自分の分をシャッフルして見せる。


「そこはトランプと同じなんだね」


 光先輩も慣れた様子でシャッフルした。


「慣れたら相手の分をやるんですけどね」


 まず最初に一回だし、と説明する。


「なるほど」


 光先輩はうなずく。

 素直でつき合いやすい感じだ。


「よろしくお願いします」


 俺が一礼すると光先輩もまねした。

 

 相手が初心者なのでまずは『マギコロ』のルールの説明をしよう。


「最初のステップでお互い手札が五枚になるように引きます」


「うん」


 俺も光先輩も手札が五枚になる。


「標準ルールとエキスパートルールがありますが、今回は標準ルールでやりますね」


 俺が告げると、


「よろしく」


 と光先輩が応じた。


「山札は四十枚。お互いのライフは十五でスタートします。ライフがゼロになるか、自分のターンで山札からカードを引けなくなったら負けです」


「了解」


 説明をしていて光先輩は飲み込みが速そうだなと何となく思った。

 根拠はない。


「じゃあ最初は俺が先攻でやりますね」


 と言ってステップを説明しながらやっていく。


「大事なのはコストを作る土地を配置することです」


 と言って一枚の土地をセットする。


「必要なコストが足りない場合、カードはいっさい出せないので注意してください」


 注意事項を告げた。


「なるほど。コストの生成と管理が生命線になるってことだね」


 なんか頭よさそうな返事が出てきた……。


「あと、一ターン目の先攻は相手プレイヤーへの攻撃はできません。できたら後攻が何もしないうちに勝敗が決まるおそれがあるので」


 と言う。


 おそれがあるというか、上級者は手札が事故らないかぎり、ワンターンキルしてくるというほうが正しい気がするけど。


 光先輩はまたうなずいて、


「それじゃあゲームとして破綻するものね」


 と言った。

 理解が速いのは助かる。


 そのままカードの説明をしながら進行していく。


「先輩が引き当てたのはコントロールタイプっぽいですね」


 と言うと、


「コントロール? 相手を操るんじゃないよね。戦況をコントロールするってことかな?」


 光先輩は怪訝な顔で話す。


「だいたいそんな感じです。相手の行動を妨害し、有利になるように持っていくのを得意とします」


 と俺が言うと、


「どうやれば妨害ができるのか、全然わかってないけどね」


 光先輩は笑う。

 

「まあいきなりは無理ですよ。何度もプレイしてようやく理解していけるものなので」


 気にすることはないと言ったつもりだ。


「なるほどね。初心者にはちょっとハードルが高いかも」


 と光先輩が言うと、離れた位置から見守っていた店長がぎょっとする。

 やばい、なんかミスったか?


「いや、ゲームに対する印象の話で、蓮くんの説明はわかりやすいし、気持ちよく遊べているよ」


 俺たちの反応を察したのか、光先輩が笑顔でフォローしてくれた。


「ならいいのですが」


 すこしホッとする。

 初心者に優しく教えて沼に引っ張り込むのは、とても大切な仕事だからね。


「雑な説明ですが、妨害は土地を除外する、相手のクリーチャーのアタックを禁止する、場に出てるカードを全部排除する、と言えますね」


 なるべく簡単な説明になるように、意識して言ってみる。

 他にもあるけど、いきなりいっぱい覚えるのは大変だろう。


「なるほど、コストを生成できなくする、自分への攻撃を阻止する、相手の攻撃パターンを台無しにするってことかな」


 光先輩はうなずきながら確認してきた。


「だいたいそんな感じです」


 飲み込みが速いのは助かる。

 

「コストがないと何もできないですし、攻撃されなきゃこわくないってことですね」


 アタックを禁止するのと、相手のクリーチャーを破壊するのは、使うカードが違うだけで目的は同じだ。


「なるほどねー」


 光先輩はうなずいて、ハッとした表情になる。


「でも、それだけじゃあ勝てないよね? たしか相手のライフをゼロにする必要があるんだよね」


 と訊いてきた。


「いい疑問ですね」


 俺は流儀にのっとって褒める。


「相手の攻撃をかわしながら、自分の勝利条件を目指すのが、コントロールデッキの戦術になります」


 相手のライフを直接削るカードもあるし、山札を捨てさせてデッキアウトを狙うのもいい。


 エースクリーチャーを入れる入れないは自由だ。


「そうなんだ。いろいろあるんだね」


 光先輩はいまのところ理解が追いついているらしい。


「すみません。一気にいろいろと話しすぎました」


 これは俺が反省しなきゃいけないよね。

 

「いいよ! 教えてもらっているのは僕なんだから!」


 光先輩はさわやかな笑顔で答える。

 こういうところはイケメンなんだな。


 なんか人気あるのがちょっと理解できるかも。


「何度も練習して、要領を覚えるのが一番ですよ」


「そうだね! 実体験が一番よさそうだ」


 光先輩は納得してくれたらしい。

 というわけで何度も対戦していく。


「これで僕の二勝三敗か。蓮くんが上手って解釈でいいんだよね?」


 対戦を終えたあと、光先輩が不意に言う。


「ううう。わかりやすかったですか?」


 初心者が楽しめるようにいい勝負をしたり、負けたりするのも立派なテクニックのひとつだと俺は思っている。


 けど、バレバレなのはよくないんじゃあないかな?


「さすがに店員をやってて、教えられる知識があるんだったら、ね?」


 と光先輩は言って、クスクスと笑う。

 知識はあるけど強くないって人もいるんだけど、言い訳に聞こえそうだ。


「おそれいりました」


 言い訳はせず、接待プレイをしていたことを認める。

 

「おかげで楽しく遊べたよ。いい先輩がいると違うよね」


 光先輩はニコニコして言ってくれた。

 そう喜んでもらえると、こっちも店員冥利に尽きる。


「対戦してみた感じ、妨害系は一応そろっているので、あとはエースクリーチャーへのつなぎを考えることですね」


 と俺は告げた。

 エースクリーチャーが倒された場合は? とかいまは言わなくていいだろう。


「ああ、プレイしてみて思ったんだけど、いくらしのいでも強いクリーチャーが来なかったらじり貧になっちゃうよね」


 と光先輩は話す。

 そこがコントロールタイプの弱点と言えるんだよね。


 まあどんなデッキでも弱点は存在する。

 じゃなかったらゲームとして成立しなくなってしまうし。


「駆け引きが入って来ると、もっと面白くなるかな?」


 光先輩は興味を見せた。


「自分の読みがズバリ当たると、楽しくて仕方がないですよ」


 と正直に答える。

 できれば実力が同じくらいか、すこし格上くらいがいいんだよね。


 実力差が大きいと、手札運を祈らないと。


「そっかー。じゃあまた来させてもらうよ。今日はありがとう」


 光先輩は言ってデッキを片づける。


「こっちこそ、来てくださってありがとうございました」


 店員として礼を言わなきゃ。

 他に客もいないので、店の外まで先輩を見送った。


 そう言えば光先輩はなんで『マギコロ』をはじめようと思ったんだろう?

 ……うかつに訊けないよね。

 

 いくら何でも「そこにカードがあるから」なんて理由じゃないだろう。



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― 新着の感想 ―
土地1枚でコストいくつ分なのか説明が欲しいです。1話目で1枚でコスト3出していたから説明回を待ってた。
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