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S級美少女達とカードゲームでとても親しくなった  作者: 相野仁


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第五話

「勝負の分かれ目はやっぱり【マジックハザード】かしら?」


 美咲先輩が言ったのでうなずいて、


「ええ。もしあれをキャンセルされていたら、俺の負けでした」


 と答える。

 美咲先輩の攻撃が通っていれば、俺のライフはゼロになっていたからね。


「はぁ~、ほんとうに蓮くんはカウンターが上手いわね」

 

 美咲先輩は「ほんとうに」の部分に力を入れながら話す。

 俺が美咲先輩に勝つときは、だいたいカウンターがきれいに決まったとき。


 逆にカウンターがキャンセルされたり、スカされた場合は俺の負け。

 

「こういう勝負が多くなるんですよ」


 と俺は赤松に説明する。


 美咲先輩が負けた悔しさで前かがみになっているせいか、ふたつの巨峰さんが強調される形だ。


 とても目に毒である。


 目の前に座っている俺は、一応は健全な男子高校生に分類されるということを、ぜひ思い出してほしい。


 ここで俺が言ったら、セクハラになりそうなので言えないんだが。

 

「はえー! 見ていて面白かった! ワクワクドキドキした! サイコー!」


 赤松は興奮した様子で言いながら、俺の肩をポンポン優しく叩く。


「それはありがとうございます」


 俺はプロではないけど、プレイを面白いと言ってもらえるのはやっぱりうれしい。


「見ていたんだけど、白山台くんがやっていたのは、低コストクリーチャーを並べながら、妨害に対してはカウンターで対処していく感じなの?」


 赤松の言葉はずばり俺の戦術のコンセプトそのものだ。


「そうですよ。分類するなら攪乱的アグロでしょうか」


 うなずいて俺は答える。


「蓮くんのは何か違う気がするけどね」


 美咲先輩が苦笑いしながら言った。


「相手を撹乱しながら攻撃的に戦っていくので、攪乱的アグロでいいと思うんですけどね」


 ちょっと納得できないので、美咲さんに反論をしつつ、肩をすくめる。


「ふふふ」


 美咲さんは楽しそうに笑う。

 ぷるんぷるん揺れてるものから目をそらし、赤松を見た。


「勉強になる~! それに見ているだけでも楽しい!」


 退屈していたらどうしようと思ったけど、杞憂だったらしい。

 赤松は楽しそうにニッコニッコしている。


「ならいいんですが」

 

 と言いながらホッとした。


「そっかー。低コストの妨害系はそんな風に使うんだー」


 赤松はぶつぶつと言う。

 

「だって噛み合わないと意味がないので」


 妨害するだけだと、アグロ系の強みである高速展開が死にかねない。

 まあ、通常アグロよりもどうしても展開速度は落ちるけどね。


「そっかー。あーっ、やばっ! そろそろ帰らなきゃっ!」


 赤松はスマホの時刻を確認してあせった様子で立ち上がる。

 ぽよんと視界の隅で揺れたけど、見なかったことにしよう。


「今日はありがと! 楽しかったよ! それに参考にもなった!」


 赤松はまず俺に、それから美咲先輩に礼を言った。


「どういたしまして。よかったらまた遊びに来てね」


 美咲先輩は微笑みながらもさらっと営業トーク。

 これは上手い。

 

「うん! また来るよ! 絶対!」


 赤松はウキウキとした表情で、力いっぱい言い切る。

 この分だとまた明日来たりしそうだ。


「外まで見送ってあげたら?」


 と美咲先輩に言われたので、立ち上がってドアを開ける。


「ありがとー!」


 赤松はうれしそうに言いながら外に出た。

 そしてふり返って、ちょいちょいと俺に手招きをする。

  

 怪訝に思って外に出ると、赤松は


「ねーねー、白山台くんさー、よかったらわたしに『マギコロ』を教えてくれない?」


 と言った。


「??」


 彼女はいったい何を言い出すのだろう。


「えっと、ルールを知っていて、デッキも持っているんだから、あとは対戦して練習していくだけだと思いますよ?」


 店の外だけど、制服を着ているので接客モードで話す。

 カードゲームは相手があるものだから、人間相手に場数を踏んでいくしかない。


「その対戦相手に困って、この店に来たんだよねえ」


 と赤松に言われる。

 ちょっと表情をくもらせて、ウルフカットにした髪を指でいじった。


「あっ」


 察しろよって副音声で続きそう。

 これは俺が悪いね。


「俺でよければいいんですが、どこでやりますか?」


 ウチの店でやるつもりなら、わざわざ店の外でこうやって頼んでこないだろう。


「そのことなんだけど、白山台くんってバイトいつ休みなの?」


 赤松の問いにまたたきをして、


「ちょうど明日は休みのシフトですね」


 と答える。


 バイトの学生は三連勤、四連勤はあまりさせたくないという、店長の方針らしいのだ。


「わー!? マジで!? じゃあ明日、頼んでもいい!?」


 赤松の目を輝かせ、前のめりに頼んでくる。

 きれいな顔が近くなるし、デカメロンが目の前でぷるんと揺れた。


「う、うん」


 ぐいぐい来る勢いに押され、思わず承諾してしまう。

 いい匂いもした。

  

「じゃあさ、メッセージアプリで連絡先交換しようよ!」

 

 と言いながら赤松はスマホを取り出す。


「え、うん」


 親とバイト先を除けば、赤松が登録者第一号だ。


「じゃあね! ありがとう!」


 赤松は礼を言いながら手を振り、早歩きで立ち去る。

 あわただしいな。


 まあ、彼女は友達が多いみたいだし、いろいろとつき合いでもあるのだろう。

 友達がいない俺には想像もつかないけど。


 店内に戻るとニコニコしながら美咲先輩が迎えてくれる。


「何だか仲良さそうだねー」


 と言われて目が点になった。


「えっ? そう見えましたか?」


「見えたよー」


 俺は疑問を口にしたが、あっさりと美咲先輩に肯定される。


「それは赤松が陰キャに優しくて、誰とでもすぐに仲良くなれるタイプだからでは?」


 と俺は答えた。

 すくなくとも俺の力じゃない。


「たしかにあの子はいい子そうね」


 と美咲先輩はうなずく。

 そうだろうな。


 赤松は俺みたいなぼっちの陰キャにも、普通に接してくれるいい奴だ。

 同じクラスにいてくれて、ほんのちょっとだけ気が楽になる。


「おーい、二人とも仕事に戻ってくれー」


 と店長に声をかけられてしまった。


「すみません!」


「戻ります」


 俺と美咲先輩はあわてて仕事に戻る。

 美咲先輩がシフトに入ってる日はけっこう忙しいのだ。

 

 待ってましたとばかりに、美咲先輩にさっそく話しかける男性客がいる。

 デレデレと鼻の下が伸びているのが、俺にでも理解できた。


 美咲先輩は美人だもんなー。

 正直、やる仕事間違えているのでは? なんてね。


 カードゲーマー仲間だと知らなかったときはちょっと思ったよ。

 美咲先輩は慣れているからか、余裕の態度であしらっている。


「店員の兄ちゃんちょっといい?」


 対して俺に話しかけて来るのは小学男子。

 まだ異性に目覚めてないタイプの子たちだ。


 女子を意識しはじめた子なら、基本的に美咲先輩に話しかけるのでとてもわかりすい。


「どうした?」


「デッキのことで相談に乗ってもらいたいんだけど」


 これはよくある質問である。


「いいよ。まあ、参考にしながら自分だけのデッキを組み上げるんだね」


 と俺は答えた。

 何でそのデッキになるのか、どうすればデッキが回っていくのか。


 自分の頭で理解して、実践できる子のほうが強くなる。


「もちろん! 俺のデッキが世界一だって言えるようになるぜ!」


 ワンパクそうな子は白い歯を見せた。


「その意気だ、少年」


 と俺は応じる。

 そんな簡単なことじゃないなんて、これくらいの年齢の子に言いたくない。


「とりあえずこの兄ちゃんには勝てるようにならないとな」


 隣にいたメガネをかけた子が言った。


「わかってんよ!」


 ワンパクそうな少年は即答する。


「蓮くんはかなり強いよー」


 そこへ対応が終わったらしい美咲先輩がやってきて告げた。


「そうなんだ」


「じゃあまだ勝てなくていいかも」


 少年たちは顔を見合わせて話す。

 何か急に弱気になったな?


 まさか美咲先輩が美人だから大人しくなったってわけじゃないだろうに。

 

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