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S級美少女達とカードゲームでとても親しくなった  作者: 相野仁


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第四話

 赤松と美咲先輩の感想戦がはじまった。


「わたしは総攻撃を仕掛けたいんですけど、何か上手くしのがれちゃったな~」


 赤松は残念そうに話す。


「アグロデッキは有名でシンプルな分、対策が多いのよ」


 と美咲先輩が言う。


「それ、昨日白山台くんにも言われました!」


 赤松は神妙な顔で答える。

 美咲先輩がチラッとこっちを見たので、


「言いましたが、昨日今日で対応するのは簡単じゃないですよね」


 と赤松をフォローしておく。

 

「わたしたちはお金がないものねー」


 美咲先輩も理解して微笑む。


「学生あるあるですからね」


 と言うと赤松がうんうんと何度も力強くうなずく。

 それからハッとして、


「他に何か入手方法ありますか? たとえばトレードとか」


 と問いかける。


「トレードはトラブルがつきものだから、相手は選ぶほうがいいわよ」


 美咲先輩が優しく言う。

 

「そうなんですね! やめとこ!」


 赤松はどうやらトレードを考えていたようだ。

 まあ、トレードなら基本お金はかからないからね。


「もしもトレードをやりたいなら俺か美咲先輩、あとは店長が無難ですね」


 俺たちは信用が懸かってるので、うかつなことはできない。


「あっ、そうか!」


 赤松はチラッと俺を見る。

 どうしたんだろう?


 と思ったけど、そのまま感想戦は続く。


「【速攻】はともかく、【透過】や【奇襲】ってどう対応すればいいんですか? ブロックできないんじゃあ、ライフが削られるのでは?」


 赤松は首をかしげる。

 

「うーん、わたしならライフを回復する、もしくはアタックをキャンセルできるカードを入れるかな?」


 と美咲先輩が言う。

 

「ライフがゼロにならないかぎり負けじゃないし、キャンセラーは入れておきたいですからね」


 俺が合いの手を入れる。

 どんな強いクリーチャーだって、アタック出来なきゃ意味がないからね。


「なるほど! その手があるんだ!」


 赤松はうなずきながらこっちを見た。


「白山台くんならどうするの?」


 問われた以上は答えるのがマナーだろう。


「俺だったら、アタックへのカウンター効果を持つフラッシュカードを入れるかもですね。山札から出せるタイプならとくにいいです」


 手札から出すなら妨害されやすいけど、山札から出す場合は妨害するのはかなり面倒なのだ。


 まあ、対策はあるんだけど、考え出すとキリがない。


「あー、カウンターがこわくて、追撃できなくなるやつ」


 美咲先輩がいやそうに顔をしかめる。


「なるほど! 相手を妨害するか、妨害するカードをさらに妨害するのが大事なんだね!」


 赤松はふむふむとうなずく。


「レア的に攻撃キャンセル系のカードのほうが入手しやすいですよ」


「そうなんだ!」


 俺の言葉に赤松は目を輝かせる。


「何なら一パックくらい買っていく?」


 美咲先輩がいたずらっぽい表情ですすめた。


「一パック八枚入りで、税込み八百八十円になります」


 俺も便乗して営業トークする。


「わー、バイトしなきゃ!」


 赤松は目を丸くして言った。


 「買えない」とか「高い」とは言わないあたり、彼女も立派なカードゲーマーだと思う。


 すくなくとも俺には好ましい。


「そう言えばふたりはどっちが強いの?」


 赤松の何気ない問いに俺と美咲先輩は顔を見合わせる。


「通算成績だと、蓮くんには負け越してるわね」


 美咲先輩は楽しそうに言う。

 この人も対戦好きだしね。


「だいたい俺の六勝四敗くらいですよね」


 と相槌を打つ。

 細かい部分は覚えてないけど、肌感覚としてはそんなものだ。


「ほえー、白山台くんって強いんだ!」


 赤松の瞳に尊敬が宿っていて、何だかくすぐったい。


 身近な誰かに褒められたり、こんな風にリスペクトの経験の目で見られた経験なんてないからだ。


 そりゃ美咲先輩は優しいけどね。


「じゃあさ、じゃあさ、ちょっとふたりで対戦してみて! 美咲さんのデッキをどうやって攻略するのか、参考にしたい!」


 と赤松が言い出す。


「えっ?」


 それはさすがにちょっとまずいんじゃないだろうか。

 俺たち店員は客の対戦相手になったり、希望されたら審判をやったりする。


 けど、これはライン越えじゃない?


「うーん、店員同士の対戦って勤務時間外じゃないと」


 美咲先輩も困り顔で言う。


「別にかまわないぞ。一戦だけなら」


 ところがそこで店長が口を出してくる。


「店長!?」


「いいんですか!?」


 俺と美咲先輩は驚きの声をあげて店長を見た。


「せっかくのご新規さんには常連になってもらいたいし、お手本を見るのもまた楽しいだろう」


 と店長は語る。


「まあ、店長がオッケーなら」

 

 と俺と美咲先輩は承知した。

 だって店長はオーナー兼任で、ここの最高責任者だし。


「お手本かあ……じゃあアグロデッキを持ってきますね。あと手札事故ったらごめんなさい」


 と俺は先に謝っておく。


「手札事故は仕方がない」


 美咲先輩、赤松に加えて店長まで声が重なった。

 

「えーっと?」

 

 美咲先輩が赤松に困った視線を向ける。


「あっ、赤松結愛です! よろしく! 美咲さんでいいですか!?」


「ええ、よろしくね、結愛ちゃん」


 なんて声が聞こえて来た。

 俺がデッキを手に戻ってきたら、すでにきゃっきゃと仲良く話がはずんでいる。


 陽キャ女子同士のコミュ力ってハンパなくすごい。

 何でそんな簡単に、知らなかった人との距離を適切に縮められるんだろう?


「戻りましたー」


 顔のいい女性ペアの仲よし空間に入るのは気後れしてしまうが、一応声をかける。


「おかえり!」


「おかえりなさい」


 ふたりとも優しく入れてくれた。


「結愛ちゃんは審判できる?」


 美咲先輩が問いかけると、赤松は首を横に振って、


「ルールは覚えてますけど、カードを覚えきれなくて」


 と申し訳なさそうに言う。


「まあ、いったい何枚出てるんだってあきれるくらいの量がありますからね」


 仕方がないと俺はフォローを入れる。


「ありがとう! 白山台くんって優しいね!」


 赤松はうれしそうに礼を言ってきた。

 そうなのかな?


 首をかしげると、美咲先輩はくすくすと笑って、


「蓮くんは優しくてフォロー上手よ」


 と言ってくれた。


「優しいのはむしろ美咲先輩の気がしますけど」


「あら、ありがとー」


 俺が首をかしげながら言うと、美咲先輩は微笑む。


「ふたりって仲いいんだね!」


 赤松がニコニコしながら言う。


「実は知り合ってまだ一週間くらいだけどね」


 俺は笑いながら答え、赤松と席を交代する。


「えっ? そうなんだ!」


 赤松は立ち上がりながら驚く。

 目の前でデカい果実がユサユサ揺れたけど、そっと視線をずらす。


「椅子を借りますね」


 と赤松は断りを入れて椅子を持って来る。 


「じゃあよろしくお願いします」


 俺と美咲先輩はテーブルで向かい合って一礼。

 制服でも隠しきれてない富士山が目の前で揺れた。


 美咲先輩のほうがデカいような?

 横で見守る赤松もまた立派な山をふたつ持っている。


 この状況に、果たして俺は集中できるんだろうか。

 不安に思いながら、美咲さんとデッキを交換してお互いのカードを切る。

 

 そしてはじまった。


「わたしのターン! コストを3払って【神速の偵察兵ルラ】を召喚」


 美咲先輩は【速攻】持ちを出してくる。

 ただ、このクリーチャーは【透過】までは持ってない。


 どう動くかな?


「さらにフラッシュカード! コスト2を払い【月に群雲】を発動するわ」


 と美咲先輩は宣言をする。


「一ターン限定で、特定種族に【透過】能力を付与するカードですよ」


 俺が赤松に説明した。

 このカードがコスト2なのは、正直デザインミスだと思う。


「さて、美咲先輩がフラッシュカードを使ったので、俺はカウンターでフラッシュカードを出します」


 と俺は告げる。


「うっ……」


 美咲先輩が一気にひるむ。


「コスト2を払ってフラッシュカード【マジックハザード】を発動」


 と俺は言う。


「【マジックハザード】!? ここで!?」


 美咲先輩は愕然とした。


「フラッシュカードの対象となったクリーチャーは、このターンアタックできません」


 カード効果の説明を赤松に見せながら説明する。


「おおー! 相手のアタックを禁止するカードなんだ!」


 赤松は納得したと声をあげた。

 

「まあ、フラッシュカードの対象になってないクリーチャーには適用されないんですが、美咲先輩の場に出てるクリーチャーはみんな同族で、【月に群雲】の対象ですからね」


 と俺は言う。


「クリーチャーを同族で揃えているときの弱点を突かれたわね」

 

 美咲先輩は苦笑する。

 

「さて、押し切らせてもらいます」


 と俺は告げた。


「受け止めてあげる」


 美咲先輩は優しく微笑みながら答える。


 そして。


「ふー、ギリギリで勝った」


「負けました。激戦になったわね」


 俺と美咲先輩は疲労感を抱きながら、健闘をたたえ合う。

 何とか勝ったけど、俺のライフは残り1である。


「感想戦、やる?」


 美咲先輩は俺じゃなくて赤松に訊く。

 

「聞きたい!」


 赤松は即答する。

 

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