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S級美少女達とカードゲームでとても親しくなった  作者: 相野仁


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第三話

 次の日、上履きに履き替えていると、ばったり赤松と出会う。


「おっ、おはよー!」


「はよー!」


 赤松はひとりじゃなくて、ギャル風の友達といっしょだった。 

 見るからに一軍女子って感じ。


 どちらも明るくあいさつをしてくる。


「おはよう」


 思わずきょどってしまったが、無視するわけにもいかず、何とかあいさつを返す。

 

「知り合い?」


 ギャル風の友達が赤松に問いかける。


「同じクラスの子!」


「なるほど! よろ!」


 赤松の答えを聞いたその子は、俺に笑顔で言ってきた。


「よ、よろ?」


 なんて返せばいいのかわかんない。

 とっさに言葉が上手く出て来なかった。


「あはは! 緊張しなくてもいいよ! いえーい!」


 と言ってその子は手を出してきたので、反射的に手を合わせる。

 なんで俺はいきなり朝から名前も知らない女子とハイタッチしているんだ?


「じゃあわたしも! いえーい!」


 赤松も便乗してきたので、とりあえず乗っかる。


「じゃあねー!」


 結局、ギャル風女子は名乗ることもなく、赤松とふたりで先に行ってしまった。

 いったい何だったんだろう?


 陽キャのノリは陰キャの俺には難しい。

 離れた位置から見ていたはずの連中も、誰も俺には話しかけて来なかった。


 陰キャにしてみれば、彼らの態度のほうが普通だったりする。


 クラスの中では赤松は一軍女子とつるんでいた。

 ときどき一軍男子が絡みに行く。


 俺と赤松の間で接点は何もない。

 そのほうがいいのだろうな、と思う。


 俺のところに来てカードゲームの話をするくらいなら、たぶんバイト先に誰か友達と来たんだろうし。


 オタクらしき奴は俺以外にもいるけど、彼らはアニメ、漫画、ソシャゲといったものの愛好家。


 俺のようなカードゲームオタクはひとりもいない。


 『マギコロ』の競技人口自体はかなりいると聞くが、身の回りで考えると本当にそうか? とちょっと疑問に思ったりする。


 それでもバイト先に行けばいいので、まあ大した悩みでもない。



 学校から帰宅して服を着替えて、バイト先『アンブラクルム』へと向かう。


 高校からは正反対の方向だし、とくに立地がいいわけでもなく、目立つ外見でもない。


 おそらく店の存在を知っていなければ、高校の連中は誰も来ないだろう。

 現に赤松だって知っていて来たわけだし。


「お? 蓮くん、ちはー」


 と言って手を振ってにこやかにあいさつしてきたのはひとりの女性。

 バイトの先輩である藤部谷美咲さんだ。


 美しい黒髪を背中まで伸ばしている文学少女っぽい美人さんで、この人目当ての男性客はおそらくけっこういると思う。


 今日だって昨日はいなかった若い男性客が、すでに何人も入っているし。


「こんにちは、美咲先輩」


 とあいさつを返す。

 最初は美人の年上の女性ということで緊張しまくったが、さすがに慣れた。

 

「昨日来てくれたご新規さんが、蓮くんの知り合いだったんだって? 店長から聞いたよー」


 と美咲先輩に言われる。


「ああ、同じクラスの女の子でしたね」


 隠すことでも、隠せることでもないから普通に答えた。

 

「へー! どんな子!?」


 なぜか目を輝かせてこっちへやってくる。

 食いつくポイント、どこにあったんだろう?


「うーんと。いわゆる一軍女子ってやつですね。クラスの女子たちのトップポジションにいるような子」


 と俺は説明する。

 容姿を褒めるのはなんか恥ずかしいけど、これなら単なる事実だ。


 今日だって女子集団の中心にいたし、一軍男子たちも取り巻き状態だった。


「へー! そういう子がカードゲームをやってるなんて珍しいね!」


 美咲先輩もびっくりしている。

 やっぱりそうなんだよな。


 実はカードゲーマー女子って、陰キャはすくない。

 美咲先輩だってモテまくり系美人だし。


 だけど、一軍トップ女子はさすがにレアだ。


 美咲先輩は勝手に一軍としてカウントされてるだけで、グループのリーダーをやるタイプじゃない……という自己申告である。


「そうなんですよね。対戦相手に恵まれてない雰囲気はありましたしね」


 と俺は話す。


「恵まれているなら、店を新規開拓する可能性は低いね。とくに女子の場合」


 美咲先輩も同意見らしい。

 

「おーい、ふたりとも。そろそろ仕事をしてくれ」


 店長がおだやかな声で指示を飛ばしてくる。

 その表情は苦笑い。


 ついでにお客さんたちも苦笑い。

 これは俺たちが悪いので謝って、仕事を開始といこう。


 

「美咲先輩の力か、今日は男性客が多いですね」


 俺は小声でカウンター付近の美咲先輩に話しかける。


「男性って単純だよね」


 自分の魅力をある程度自覚しているらしい美咲先輩は笑う。

 こういう何気ない表情もバズリそうなくらい決まるので、美人はすごい。

 

「否定はできませんね」


 俺だってここをバイト先に決めた理由のひとつが、美咲先輩の存在だったりするし。


 美人でしかも富士山級の持ち主が職場の同僚って、ひかえめにいってかなりうれしい。


 そこで入り口のベルが鳴って、また赤松が入って来る。

 昨日と同様、ラフな格好だ。


「いらっしゃいませー」


 俺たちはさっそくあいさつをする。

 赤松は俺を見てホッとして、次に美咲先輩を見て目を丸くした。


「女性の店員さん、いるんじゃん!?」


 知らなかったらしく声に出している。


「あれ? いるってわりと有名だと思いますが?」


 俺は首をかしげた。


 活動エリアがこの辺のカードゲーマーたちには、「美人女子大生店員がいる店」として認知されているはず。


「それ、たぶん男性客なんじゃない?」


 美咲先輩が笑いを堪えながら指摘してくる。

 ああ、たしかに盛り上がっているとしたら男性客か。


「でも、女性ゲーマーとしても、女性店員の存在はプラスだと思いますが」


 と俺は疑問をぶつける。

 この店の女性客が増えたのは、美咲先輩が入ってからだって店長が言ってたし。


「わたしは女性ゲーマーの知り合い、ひとりもいないから」


 赤松が気まずそうに言う。

 

「そ、そうでしたか。ごめんなさい」


 何か悪いことをした気がして謝る。

 どう見ても友達がいっぱいいる赤松だったから、うっかりしていた。


「じゃあわたしと仲良くなりましょう」


 美咲先輩が微笑みながら前に出る。


「え! ありがとうございます!」


 赤松はにこやかに応じた。


「せっかくだし対戦する?」


「やります」


 美咲先輩の申し出に赤松は即答する。


「じゃあ、蓮くんは審判をお願いね」


 と美咲先輩がこっちに振ってきた。


「えっ、いいですけど」


 驚いたものの、店員の手に余裕があるなら、審判をやるのもこの店の方針だ。

 昨日は美咲先輩がいなかったのでセルフジャッジだったけど。


「お願いします」


 赤松と美咲先輩がひとつのテーブルで向かい合って一礼。

 クラス一番のS級美少女と、それに全然負けてない美女との対戦。

 

 写真に撮ってネットにアップしたらバズリそうだな。

 そう思うくらい、美しい光景だ。


 序盤は静かに、そしてすぐに激しくなる。


 赤松が低コストクリーチャーを展開して攻める戦術だからだ。


「シンプルだけにハマると手に負えないわね」


 と言いながらも美咲先輩は余裕の微笑む。


「フラッシュカード! 【崩れた洞窟】! このターン、あなたが攻撃できるのは一回だけになる」


「くっ……」


 美咲先輩が出したカードは、物量攻撃対策だな。

 赤松の攻撃が止まってしまう。


 まあ、カードは安くないし、持っていても手札に来るとはかぎらないし。


「わたしのターン! 【神速の射手フォルテ】を召喚。奇襲!」


 おっと美咲先輩がレアカードを出してきたぞ。


「奇襲?」


 赤松は知らないみたいで困惑し、俺のほうを見て来る。


「【奇襲】は【速攻】と【透過】の複合能力ですね。召喚したターンに攻撃でき、なおかつブロックできません」


「うげっ」


 俺が審判として効果を説明すると、赤松のきれいな顔が曇った。

 美少女はそんな声も可愛いんだなと勝手に感心する。


「一部のレアカードだけが持つレア能力だから、知らなくても仕方ないですね」


 と俺は一応フォローした。


「さらに【神速の射手フォルテ】のアタックが成功したので、手札からカードを出すわ」


 と美咲先輩が言う。

 ああ、たぶんアレだろうな。


「フラッシュカード、【クイックドロー】。プレイヤーへのダイレクトアタックが決まったとき、もう一度アタックできます」


 やっぱり【クイックドロー】のカードか。

 【神速のフォルテ】のパワーは四。


 そして標準ルールだと【クイックドロー】は三枚入れられる。

 これがきれいに決まると、相手プレイヤーのライフを一気に削れるんだよな。


 さすがにあと二枚も手札に持ってるとは思わないけどさ。


「ひえっ」


 それを察したらしく、赤松の表情が虚無になった。

 うん、美咲先輩のデッキって、えげつないからね。

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