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めざめ

 意識に反して眠りにつくような、妙な感覚がニヒルを襲ったかと思えば、次の場面でニヒルは倒れた筈の場所で立っていた。


 まだ夢半分の変な感覚が、頭を混乱させているが体が完治している事だけは理解が出来る。


「これが、ゼ=アウルクの力なのか」


 凄いとしか言いようがない。麻痺も骨も火傷も裂傷も、目さえも完璧に治癒しているし、目の前で屍とかした累々は魔王・ゼ=アウルクの力強さを物語っていた。


 恐怖や嫌悪はなくとも、この場に於いてニヒルは彼女に憧憬の眼差しを向けざるを得ない。自分も、彼女のような力があれば。そんな事を過ぎってしまうのは仕方がない事だった。


 忌み嫌われ恐れられた魔王が、自身の体の中に居る。普通なら正気で居られるはずがない現状で、冷静に辺りを見渡せているのは、彼女が既に過去の者。


 で、あるのと同時に、孤独ではないという救いがあるからだろうか。


「さて、どうやって上層階に……と言うか、此処は何層目なんだろうか?」


 十階層まで踏破したと言っていたが、それは、このダンジョンが十階層までしかない事を言っていたのか。一番最悪なのは、あくまで十階層しか降りておらず、その下にも階層はあり、ニヒルが十階層以降に落ちてしまっている事。


 地下迷宮(ダンジョン)は、階層が下にいくに連れて、魔獣達の強さが増すと言われている。とてもじゃないが、今の実力で生き延びれる保証は無い。あるいは。


『何層目──っと言うのは、凡そではあるが予測は出来なくもないぞ』


 体の奥から声がして、ニヒルは咄嗟に耳を覆った。


「え? 何事? この声は、ゼ=アウルクだよね?」

『そうじゃ。うぬと朕は、血の盟約によって結ばれたのじゃよ。意思疎通ぐらいは、簡単にできる』

「そ、そうなのか」


 ニヒルは、ほっと肩をなでおろした。


「と言うか、それならゼ=アウルク」

「アウルクでよい」

「あ、ああ。じゃあアウルクで。君が俺の体を使って上層階に行った方が確実なんじゃ」


 ニヒルは、足場の悪いゴツゴツした道をゆっくり進みながら言う。


「残念ながら、それは出来ぬ。──と、言うか暫く、朕は矢面に出れぬ」

「そう……なのか」


 ゼ=アウルクとバトンタッチ出来たら、余裕かもしれない。だなんて、考えていたがどうやら無理らしい。ニヒルは、周りの音や気配に注意しながら口を開く。


「理由とかは、聞いても大丈夫??」

『構わぬよ。理由は一つ、今のうぬでは、朕の力に体が追いつかぬ』

「どういう事??」

『朕が使う魔法は、暗黒魔法と言う、死者の魂を力とするもの』

「聞いた事がないな……」


 色々な教材は、許される範囲で読んできたが【暗黒魔法】だなんてものは聞いた事がないし、読んだこともない。


『魂とは、個の概念の塊。つまり、取り込めば精神に多大な影響を及ぼす』

「でも、なんて事もないよ? 体も動くし体調不良もないし」

『それは、ただ単にあの程度(・・・・)で済んだからじゃ。力を使えば使うだけ、顕著となるものじゃよ』

「そうなのか。あまり、イメージができないけれど。アウルクが言うならそうなんだろうな」

『うぬ。なにより、今は自身の力を鍛え上げた方が良い。他力よりも自力を本願とせい。さすれば、そのうちこの力も、扱えるようになるじゃろうて』


 ニヒルは上手く言いくるめられてるような気がしたが、ゼ=アウルクの発言が的を射ている為に、言い返す事が出来ずにいた。


「わかったよ。話してくれてありがとう。で、さっきの話に戻るけど、此処は何階層ぐらいなの?」

「出現する魔獣から考察するに、此処は十七階層じゃ」

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