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反撃の糸口

 クリスタルゴーレムの猛攻は苛烈を極めていた。リンドは翼に深い傷を負い、ブレスの威力も明らかに落ちている。プルも必死に回復魔法をかけ続けているが、消耗は隠せない。俺自身も、ゴーレムの繰り出す衝撃波や、飛散する結晶片を避け続けるだけで精一杯だった。調査隊員たちの苦悶の声が、俺の焦りを増幅させる。


(このままじゃダメだ……! 何か、何か手はないのか!?)


 圧倒的なパワーと防御力、そして自己修復能力。正面からの攻撃だけでは、この化け物を倒すことはできない。もっと根本的な……奴の弱点を突く方法。


(弱点……プルは関節部分と、本体クリスタルからのエネルギー供給が怪しいと言っていた。だが、あの硬い装甲をどうやって……)


 思考が堂々巡りしそうになった、その時だった。俺は、自分のスキル【収納∞】のことを改めて考えた。無限の収納スペース、経験値貯蓄、そして『時間停止空間』と『高速アクセス』……。


(時間停止空間……アイテムの劣化を防ぐだけじゃない。もし、この空間そのものを利用できたら? いや、もっと単純に……時間停止させた『何か』を、敵の内部に送り込むことは……?)


 閃いた。斥候との戦いで使った煙幕玉や、先ほどの爆発性鉱石。あれらは全て、スキルで『取り出し』てから使っていた。だが、もし、時間停止させたままの状態で、敵の僅かな隙間に『送り込む』ことができたら? そして、任意のタイミングで時間停止を解除したら……?


(内部からの破壊……! これなら、あの硬い装甲を無視できるかもしれない!)


 危険な賭けだ。スキルがそんな芸当に対応できるか分からないし、失敗すれば反撃を受けるリスクも高い。だが、この状況を打開するには、これしかない!


「プル、リンド! 新しい作戦がある! ゴーレムの関節、あるいは胸のコア付近! 一瞬でいい、奴の動きを止めて、そこに隙を作ってくれ!」


 俺の切羽詰まった声に、二匹は即座に反応した。消耗しきっているはずなのに、その瞳にはまだ闘志の炎が宿っている。


「キュアアアアッ!!」


 リンドが最後の力を振り絞るかのように咆哮し、傷ついた翼で無理やり飛翔! ゴーレムの頭部目掛けて渾身のブレスを叩き込み、その注意を完全に引きつける! ゴーレムは鬱陶しそうにリンドを叩き落とそうと腕を振り上げた。


「ぷるるっ!(今! 左膝の裏! ヒビが広がってる!)」


 プルの鋭い指摘が飛ぶ! リンドが作った一瞬の隙。ゴーレムの左膝裏の関節部分、そこには確かに、これまでの戦闘で生じた亀裂が走っていた。


(ここだ!)


 俺は【収納∞】に意識を集中し、時間停止空間に保管しておいた小型の爆発性鉱石を複数選択。そして、スキルの『高速アクセス』と『空間操作(自己流解釈)』のイメージを組み合わせ、狙いを定める――ゴーレムの左膝裏の亀裂の中へ!


「――送り込めッ!」


 スキルを発動! 手応えは……あった! 確かに、時間停止状態の鉱石が、ゴーレムの内部、亀裂の奥へと『転送』された感覚がある!


 次の瞬間、俺は内部に送り込んだ鉱石の時間停止を解除するイメージを描いた!


 ――ゴォンッ!


 鈍い、内側から響くような破壊音! クリスタルゴーレムの巨体が、大きくよろめいた! 左膝から下が不自然な方向に曲がり、紫色の結晶片が内部から飛び散る!


「グ……ゴオオオオォォォ!?」


 ゴーレムが初めて、明確な苦痛の叫び声を上げた! 内部からの破壊は、さすがの自己修復能力でもすぐには対応できないらしい。動きが著しく鈍り、体表の結晶の輝きも不安定に明滅し始めた。


(やった……! 効いたぞ!)


 反撃の糸口が見えた! ゴーレムは弱体化し、苦痛に身を捩っている。今が最大のチャンスだ!


「プル、リンド! 追撃するぞ! 狙うは胸のコア、あるいは背中のエネルギー供給管だ!」


 俺は消耗しきった仲間たちを鼓舞する。プルもリンドも、俺の作戦成功とゴーレムの弱体化を見て、再び力を奮い立たせたようだった。


「今だ! 一気に決めるぞ!」


 俺は剣を構え直し、弱ったゴーレムへと向かって駆け出した。プルは回復と援護の準備を整え、リンドは最後の力を振り絞って、再び空へと舞い上がる!

 鉱山の深淵で繰り広げられてきた死闘は、ついに最終局面を迎えようとしていた!

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