絶望の淵、決断の刻
カクヨムに比べて、なろうの更新めっちゃ遅れててごめんなさい。
忘れないようにします…。
禍々しく脈打つ巨大な紫色のクリスタル。その根元に囚われ、苦悶の表情を浮かべる調査隊員たち。そして、クリスタルを守護するように立ちはだかる、全身を結晶の鎧で覆った異形のゴーレム。広大な地下空洞に満ちる瘴気と絶望的な光景を前に、俺は息を呑んだ。
(これが、この鉱山の異変の元凶……そして、あのゴーレムを倒さなければ、隊員たちを救うことも、このクリスタルをどうにかすることもできない……)
状況は最悪だ。クリスタルゴーレム(仮称)から放たれる威圧感は、これまで戦ってきたどの魔物とも比較にならない。リンドですら、わずかに警戒するように喉を鳴らしている。
「ぷるる……(すごく、嫌な感じがする……)」
「キュル……(強敵だ、主よ)」
プルとリンドも、目の前の脅威を正確に感じ取っているようだ。
撤退か? いや、ここで逃げれば、隊員たちは確実に見殺しになる。それに、このクリスタルを放置すれば、いずれドワーダルの街自体にも被害が及ぶかもしれない。騎士団のこともある。ここで足踏みしている余裕はなかった。
(やるしかない……!)
俺は覚悟を決めた。全てを同時に解決するのは難しいだろう。ならば、優先順位をつける。
「プル、リンド、作戦を伝える」
俺は小声で二匹に指示を出す。
「リンド、お前があのゴーレムの注意を引きつけてくれ。持ち前のパワーとブレスで、できるだけ時間を稼ぐんだ。可能なら、あの本体のクリスタルにも攻撃を仕掛けてみてくれ」
「キュルル!(承知した!)」
「プル、お前は索敵に集中。ゴーレムの弱点、動きの癖、それからあのクリスタルからエネルギー供給があるのかどうか、探ってくれ。俺とリンドの回復も頼む。余裕があれば援護攻撃も」
「ぷるっ!(わかった!)」
「俺は全体を指揮しつつ、リンドの援護と、隙を見て隊員たちへの接触を試みる。危険だが、やるしかない」
俺の決意に、二匹は力強く頷き返した。
「よし……行くぞ!」
俺たちが動くのとほぼ同時に、クリスタルゴーレムもまた、侵入者である俺たちを認識したようだった。その結晶の目が禍々しい紫色の光を放ち、巨体が地響きを立てて動き出す!
「キュアアアアッ!!」
先陣を切ったのはリンドだ! 咆哮と共にゴーレムへ突進し、その巨大な前脚に鋭い爪を叩きつける! ガキンッ!と硬い音が響くが、ゴーレムの結晶の鎧はびくともしない。
「グルォォォ!」
ゴーレムは意に介さず、その巨大な腕を振り下ろす! リンドは咄嗟に低空飛行で回避するが、腕が叩きつけられた地面は砕け散り、凄まじい破壊力を見せつけた。
「リンド、ブレス!」
「キュオオオオ!」
俺の指示で、リンドが距離を取り、口から灼熱の炎(もはや熱波ではない、完全な炎だ!)をゴーレムに浴びせる! ゴウッ!と音を立てて炎がゴーレムを包むが、数秒後、炎が消えると、ゴーレムの結晶の鎧は少し赤熱したものの、目立った損傷はないように見えた。
(硬すぎる……! それに、炎にも耐性があるのか?)
「プル、何か分かるか!?」
「ぷるぷる!(動きは少し鈍い! 関節部分の結晶が薄いかも! あと、背中側から本体のクリスタルに繋がってる管みたいなのがある!)」
プルの索敵情報が矢継ぎ早に頭に響く。動きが鈍い、関節が弱点、そして本体からのエネルギー供給!
「リンド、関節を狙え! 俺も援護する!」
俺は剣を構え、ゴーレムの側面へと回り込む。リンドも俺の意図を察し、再び突撃してゴーレムの注意を引きつける。俺はその隙に、ゴーレムの膝裏――結晶が比較的薄く見える関節部分――目掛けて、渾身の力を込めて剣を突き立てた!
ガキンッ! ……ピシッ。
硬い感触と共に、わずかにヒビが入る音がした!
「効いてるぞ!」
しかし、ゴーレムも黙ってはいない。俺の攻撃に気づき、振り向きざまに薙ぎ払うような拳を繰り出してきた! 俺は咄嗟に後方へ飛び退いて回避する。
その間にも、俺は戦闘の合間を縫って、囚われた調査隊員の様子を窺っていた。彼らは依然としてクリスタルに束縛され、苦悶の声を漏らしている。クリスタルから放たれる瘴気が濃く、近づくだけでも危険そうだ。それに、ゴーレムが常に隊員たちとクリスタルの間に立ちはだかるように動いている。救出は容易ではない。
戦闘は熾烈を極めた。リンドのブレスと突進、俺の剣撃、プルのウォーターカッターと回復。俺たちは連携を駆使してゴーレムにダメージを与えようとするが、ゴーレムの圧倒的なパワーと防御力、そして自己修復能力(おそらくクリスタルからのエネルギー供給によるものだろう)の前に、決定打を与えられずにいた。
リンドの翼や鱗には、ゴーレムの攻撃による傷が増え始めていた。プルの回復も追いつかなくなってきている。俺自身も、回避と攻撃を繰り返す中で、体力がどんどん削られていくのを感じていた。
(くそっ、硬すぎる……! このままじゃジリ貧だ。何か、打開策は……!)
焦りが募る。このままでは、隊員たちを救うどころか、俺たちがここで全滅してしまう。
俺は必死に思考を巡らせた。スキルの応用、地形の利用、仲間の新たな力……何か、この絶望的な状況を打ち破るための、新たな一手はないものか――!




