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無限収納と驚愕のドワーフ

 ドワーダルの冒険者ギルドにDランクとして登録された俺は、早速、最初の仕事を探すべく依頼ボードの前に立っていた。多種多様な依頼が並ぶ中、俺の目を引いたのは一枚の古びた羊皮紙だった。


『緊急依頼:鉄鉱石の大量運搬』

『依頼主:ドワーダル鉱夫ギルド』

『内容:西第三鉱山より、ドワーダル市内倉庫へ鉄鉱石を運搬。可能な限り大量に。期限三日以内』

『報酬:運搬量に応じて変動(最低保証金あり)』

『ランク:D(ただし運搬量によりCランク相当報酬可)』


(鉱石運搬……これなら【収納∞】が最大限に活かせるな)


 他の冒険者なら、荷車や人手を雇って何度も往復しなければならないだろう。だが、俺なら一人で、しかも短時間で大量に運べるはずだ。報酬も悪くない。俺はこの依頼に決めた。


 受付へ行き、依頼書を提出する。受付嬢は依頼内容を確認し、少し驚いた顔で俺を見た。

「えっと……レントさん、こちらの依頼でよろしいですか? かなりの量の運搬になりますが、運搬手段はお持ちで?」

「ええ、問題ありません」

「そ、そうですか……。では、こちらにサインを」


 俺がサインをしていると、近くで他の冒険者たちのひそひそ話が聞こえてきた。

「おい見ろよ、あの新入り、鉱石運搬の依頼受けたぜ?」

「一人でか? 正気かよ。あの量はパーティー組んでもキツイぞ」

「何か特別なスキルでも持ってんのかねぇ? ま、どうせすぐに音を上げて戻ってくるさ」


 嘲笑するような視線を感じたが、俺は気にせず手続きを終え、ギルドを後にした。


 翌日、俺はプルを連れて(リンドは厩舎で待機)、西第三鉱山へと向かった。活気のある鉱山で、多くのドワーフや人間の鉱夫たちが忙しそうに働いている。俺は現場監督らしき、髭面のいかついドワーフにギルドの依頼書を見せた。


「おう、ギルドからの依頼だな。……ん? あんた一人か? この量の鉱石を運ぶのに?」

 監督は山積みになった鉄鉱石の丘を指差し、訝しげな顔で俺を見た。その量は、荷車数十台分はありそうだ。


「はい、一人で大丈夫です」

「ふん、威勢のいい若造じゃな……。まあ、運べるだけ運んでくれりゃあ文句は言わん。ただし、期限はきっちり守ってもらうぞ」


 監督は半信半疑といった様子だったが、仕事は仕事と割り切っているようだ。周囲の鉱夫たちも、「無理だろ」「すぐに泣きついてくるさ」と遠巻きに囁き合っている。


(さて、見せてもらおうか、俺のスキルの真価を)


 俺は鉱石の山の前に立ち、集中して【収納∞】スキルを発動させた。

「――収納開始」


 俺がそう呟くと、足元の鉄鉱石が、まるで水が砂に吸い込まれるように、次々とその場から消失していく!


「「「なっ……!?」」」


 その異常な光景に、周囲で見守っていた鉱夫たちが一斉に息を呑んだ。

「き、消えた!?」

「ど、どうなっとるんじゃ! 魔法か!?」

「いや、空間系のスキル……? じゃが、あんな量の鉱石を一体どこへ……!?」


 彼らの驚愕をよそに、俺は次々と鉱石を収納していく。スキルを進化させたおかげで、アクセス速度も上がっており、作業は驚くほどスムーズに進んだ。山積みだった鉄鉱石の丘は、見る見るうちに小さくなっていく。時間停止空間も活用し、鉱石の品質劣化を防ぐ配慮も忘れない。


 ものの数十分もしないうちに、荷車数十台分はあったはずの鉄鉱石は、跡形もなく消え去っていた。残されたのは、唖然として口をあんぐり開けたままの鉱夫たちと、腰を抜かして座り込んでいる現場監督のドワーフだけだった。


「……お、おい、若いの……。今のは、一体……?」

 監督が震える声で尋ねてくる。

「企業秘密、というやつですよ。さて、依頼の品は確かに受け取りました。ドワーダルまでお届けします」


 俺は平然と答え、唖然とする彼らを後に、鉱山を去った。背中に突き刺さる、畏敬とも恐怖ともつかない視線を感じながら。


 ドワーダルへ戻り、指定された鉱夫ギルドの倉庫へ向かう。倉庫番のドワーフに依頼書を見せ、収納した鉄鉱石を取り出し始めると、今度は倉庫番が目を剥いて驚愕することになった。倉庫に入りきらないほどの鉄鉱石が、次から次へと出現するのだから。


「ひ、ひぃぃ! ば、化け物かあんたは!?」

「依頼の品ですよ。ご確認ください」


 倉庫番は何度も量を確認し、依頼主である鉱夫ギルドの幹部も飛んできて、その規格外の仕事ぶりに腰を抜かしていた。


 ギルドに依頼完了の報告に行くと、すでに噂は広まっていたようだった。受付嬢は目を輝かせ、周囲の冒険者たちは、以前の嘲笑から一転、驚きと尊敬(あるいは嫉妬)の眼差しで俺を見ていた。

「まさか、本当に一人であの量を……」

「空間系のスキル持ちか? それにしてもレベルが違うぞ……」

「あの『竜使いの新人』、とんでもない奴だったんだな……」


 俺は依頼の成功報酬――予想を遥かに上回る額の金貨――を受け取り、ずっしりとした袋の重みを確かめた。


「ふう、まずは順調な滑り出しだな。次はどうするか……」


 ギルドの喧騒の中、俺は次のステップに思いを馳せる。注目を集める存在となった今、新たな依頼や情報が舞い込んでくるかもしれない。あるいは、例の鉱山の異変に本格的に関わっていくか……。

 鉱山都市ドワーダルでの俺の物語は、まだ始まったばかりだ。

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